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温厚な人

「連れて帰らなくて良かったのかの? ダーリン寂しそうなのじゃ」


「そうだな寂しいけどシュメーがいるなら大丈夫だろ」


 モヘンジョは死んだ……

 俺では、なくシュメーが葬ったのでカシューとの約束を果たせたと言えるかは分からないがカシューへの危険は去った。

 後はシュメーに任せよう。





「すまない、モヘンジョが死んでも隷属が解けないとは思わなかった」


「いや、シュメーが謝る事じゃない。それに……」


 自分の事で人が死んだ。

 自分を(さら)った相手と言えどカシューがどう思うだろう。

 今の隷属状態が持続するなら普通の姫様としての人生が残るだけだ。

 モヘンジョ亡き今、もう今後は隷属され無理に過去視を使わされる事もないのだから。

 それはつまり俺達の元へ戻る必要もないって事になる。


「でも今後は任せてくれ余が守る」


 そう皇帝自らが言ったのだ。

 安心して良いだろう、それに……


「アーモンの瞳についても手出し無用と通達しておいたから、もう逃げなくて良いはずだ」


 とも言ってくれた。

 バビロニーチに住むなら家も手配するとまで……


「ありがとう。でも仲間が待ってるんだカシューの無事も伝えたいから今は戻るよ」


「では、いつかまた!」


 そうお互いに言って別れた。

 最後にカシューに会っていかないのか? とシュメーに言われたが……

 俺の事を、知らないカシュー……そして、その方が今は幸せなカシュー……だったら会わない方が良い。

 もし、はずみで過去視でも発動しようものなら混乱して苦しむのはカシューだ。

 何も言わずに去ろう、そう決めてバビロニを後にした。




 大広間の一件から俺に気付いたエラトスが接触しようと動いていたのは分かっていたが今は会いたくなかった。

 シュメーから聞いた鳥籠についての報告……

 その内容に対して心の整理が付かない。




「見えたのじゃ、ハリラタなのじゃ! 腹が減ったのじゃ」


「何だよ、本当にひとっ飛び出来るじゃん」


 結局帰りは泊まりもなく1日でハリラタまで戻った。


「ダーリンと2人っきりでお泊まりしたかったのじゃ」


 と、しょうもない事を言ってるが早くみんなに会いたがってる俺の事を気遣ってくれたのが分かったから良しとしよう。

 ただ、かなり本気で飛んだらしく速すぎて怖かった……


「ただいま!」


「あらあら、おかえり」


「おかえりよー、です」


「……おかえり……アーモン」


「おかえり心配したんだから」


「ああ、大丈夫だったよ。今から話すから……」


「腹ペコなのじゃ、ペカンよ何か食わせてたもぉ」


 賑やかなスランバーコール集落へ戻って来た。

 もう逃げる必要もない。

 強くなる必要もないんだ。

 みんなに事の顛末(てんまつ)を話し、カシューは戻らない事を告げた。


「寂しいけど、それがカシューの為なら仕方ないわね」


「そもそも姫様ってのは城にいるのが普通だぜ」


「ピスタだって似たような立場だろ」


「ドワーフ姫よー、です」


「ハハハ」


 良かった。

 連れて帰らなかった事を責められたらどうしようかと思っていたが安心した。

 ……が、一名程、納得しない者がいた。


「あらあら、エラトスと話すべきだったわ」


「ごめん、でも話したくなかったんだ……」


 確かに皇帝の権力は絶大。

 だけど『テーベの小箱』がアーモンを出生と同時に魔眼修道院へ隠したほどの事態が通達1つで収まるかしら?

 エラトスと相談すべきだったとメルカは珍しく俺に厳しく言った。

 温厚なメルカを怒らせてしまったのは反省すべきだが気持ちの整理は、そう簡単には着かない。

 エラトスへの気持ち……騙されていたような感覚……でも単純に騙されたというのも少し違うような複雑な感覚、もう少し感覚がはっきりしてから話したい。

 それが今の素直な俺の気持ちだ。

 そして、もう一人怒らせてしまった温厚な人がいて翌日その怒ってる人が訪ねて来た。


「アーモン! 約束したのに何で急にいなくなるんですか! もう戦闘将が帰っちゃったじゃないですか!」


 マテオである。


 そして結局マテオの故郷である草原の民エリア、カータへ行く事になるのであるが1つ大きな問題が起きた……



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