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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
たなびく旗に想う編
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皇都

 心配したのは鱗式光学迷彩によって見えなくなったイーズの上に乗ってる俺が空中に一人浮いているかのように見える可能性……


「あ、ありがとなイーズお前も色々と考えてんだな」


「ん? 何の事じゃ」


 イーズの鱗は本当に万能だ。

 鱗を浮き上がらせて俺を包むように覆って隠してくれていた。

 そして万能なのは鱗だけではなかった、ホーリードラゴンのホーリー部分(俺が勝手に呼んでるだけだが……)天使のような翼部分も光学迷彩化していた。





「あれがバビロニかな?」


「なかなか立派なのじゃ」


 堅牢(けんろう)な街だとはラマーニ修道院にいる時から聞いていたが想像を超えていた。

 中央の城を囲む城壁も立派だが街の外まで何重にも渡って防壁が張り巡らされていた。

 でも空から入れるイーズには関係ないのだけれど……


「ダーリンちとマズいのじゃ」


「どうした?」


「城周辺だけは魔力による範囲結界で囲まれておるのじゃ」


「そうか、さすがだな」


「破るのは容易いのじゃ、でものぉ」


 そうだ一瞬で侵入に気付かれてしまうだろう。


「ぎりぎりで旋回出来るか?」


「任せるのじゃ」


 カシューが居そうな場所を見つけたい。

 日暮近くに訪れたのは正解だった! 人がいる部屋には(あか)りが(とも)り始めていた。

 昼間だと目星を付けるのも難しかっただろう。

 目を凝らして灯りのある窓を見て回っていくと……


「いた! カシューだ」


「ダーリンちと声が大きいのじゃ」


 普段あれだけ天然な腹ぺこドラゴンに(さと)されるとは、これは反省しなければなるまい。

 カシューは皇女らしく仕立ての良さそうなドレスに身を包み城の中央あたりのバルコニーにいた。

 すぐ近くには衛兵の姿も見える。


(牢とかじゃなくて良かった……)


 メルカがイドリーから聞いたと言う話の通り皇女として尊重された暮らしをしている様子だ。

 でも時には意に反して過去視を使わされているはずだ。


(待ってろカシュー助け出してやるからな)





「中へ! どうにかして入る!」


「やれやれダーリン落ち着くのじゃ」


「あっ、待て! イーズどこ行くんだよ」


 範囲結界ぎりぎりを旋回していたイーズは一気に上空へと上昇した。

 高度を稼ぐ度に下がる気温に熱くなっていた頭も冷めて覚めて来た……


「す、すまん」


「良いのじゃ、ダーリンの、そう言う青さが(まぶ)しいのじゃ」


「青い……そうだな」


 どうにも熱くなってしまう。

 日本では大人だったはずの俺だがアーモンの体が熱く青くさせるのだろうか?

 そもそも『日隠とわ』の性格ってどんなだったっけ?

 いまいち(つか)めない記憶……俺は本当に転生者なんだろうか?

 そんな事を考えているうちにイーズは町外れへと降り立った。


「元の街にも戻れるしバビロニにも行ける距離なのじゃ」


 冷静になった俺はイーズと作戦を話し合い、今度こそ落ち着いてバビロニへと足を向けた。





 一番外側の防壁へは誰でも入れるらしく特に入壁検査のようなものはなかった。


「ラマーニ修道院と比べると楽々だな」


「何じゃ、そのラマーニ修道院というのは?」


「育った場所なんだけどさ、砂漠にあってな……」


 俺の、この世界での生い立ちを話しながら街の中を歩いて進んだ。

 なぜかイーズと話していると普段なら言わないような事まで話してしまう。

 転生にしても魔眼修道院の事にしても隠さなきゃって頭のどこかで思ってた。

 イーズがドラゴンだからだろうか?

 かなりの長命だからだろうか?

 いや長命ならエルフも中々だ……そんな事を頭の中で巡らせていると次の外壁へたどり着いた。


「ダーリン抱いて……なのじゃ」


「言・い・方!」


 あらかじめ決めていた事。

 人目を避けて人型のまま鱗式光学迷彩を発動。

 そのイーズを俺が抱っこは不自然なので、おんぶする。

 というか、イーズは浮遊できるので重量は感じず確保しておくだけの作業だ。

 さて準備は完了だ。



「入壁検査だ、止まれ」


 予想通り門番に止められた。

 俺達は通行に必要な手形的な物を何も持っていない。

 でも大丈夫!

 もう一人の門番が口を開くと……


「その人は大丈夫なのじゃ、入れるように言われておるのじゃ」


「そうなのか、良し入れ!」


 イーズの魔眼『憑眼』で門番の一人に憑依したのだ。

 イーズは憑依している間、本体が抜け殻になるが抜ける前の状態は維持しているので俺が、おんぶしていると言う訳である。

 岩山の上で言っていた役立たずになる対処法というのが、これだ。

 しばらく進むと憑眼を解除し本体に戻る。

 これを繰り返し、とうとう最後の城壁の前までやって来た。


「さあ最後の門番だな」


「違うのじゃ、もう範囲結界の中なのじゃ」


「あっ、そうなの?」


 念には念なのか、このゾーンも守るべきなのかは分からないが城壁の1つ外側の防壁まで範囲結界が張ってあるようで既に俺達は範囲結界の内部へと入る事が出来ていた。

 そこで、ある人を見かけた。


(エラトスさんだ……)


 ラマーニ修道院で砂掃除の常連仲間だった……いや『テーベの小箱』として俺の守護担当として修道院へ潜伏していたエラトスであった。


「イーズ直ぐに俺も隠せるか?」


「大丈夫なのじゃ」


 ほぼ日も落ちて人通りもまばらな今なら何とかなる。

 そう思うのとエラトスに見つかりたくない焦りから人目を避けずに鱗式光学迷彩で隠してもらった。


(エラトスには気付かれなかったはずだ……)


 そう思いイーズへ小声で話しかける。


「さっきのバルコニーへ飛んでくれ」


「分かったのじゃ」






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