カータへの誘い
ブワァフ、ザズァアァァ!
「相変わらず草が鬱陶しいのじゃ」
「くくくっ、本当に復活しておったかソイビーよ」
「懐かしいのじゃ」
「早速だが頼みを聞いてくれぬか?」
「いきなり過ぎるのじゃ、まぁ、昔馴染みの頼みゆえ聞かんでもないが、その下に敷いておる化物の事かの?」
「くくくっ、流石は唯一竜ソイビーよのぉ話が早い」
草原の民エリアに降り立ったイーズは昔話もなく早速頼まれごとを聞いていた。
そして、その頼まれごとがアーモン達の今後に大きく関わる事となっていくのであった。
蜂の巣ダンジョン討伐から数日後……
「何で妾が戻るまで倒すのを待ってくれんかったのじゃ? はむっ」
「俺が倒した訳じゃない、知らん……」
ヴァルトゼがキューキュービーにトドメを刺した直後にイーズは天井を突き破って現れた。
最奥のボス討伐直後の気が抜けた瞬間に更なる大ボスでも現れたのかと一瞬慌てたが山の民達が天女でも見つけたかのように拝み始めたので俺たちは失笑するしかなかった。
「それでイーズさん草原の民エリアに、もう一度行くんですか?」
「行ってもムダなのじゃ、はむっ」
「イーズ殿でも抑えれぬと?」
「憑眼を試してみたのじゃ、はむっ」
魔王の下に何かが封印されている。
その封印が解けそうなのだと……
イーズは魔王に呼ばれて憑眼で魔王に憑依し、その何かを再度抑え込もうとしたがダメだったと言う話だった。
それは、まあ、良い……
「てか、何で毎日来てんだよ! マテオ」
「だって戦闘将と話せるなんて貴重な機会なんですよ」
「某のせいで迷惑を掛けておるのか?」
「いえ、ヘレフォーさんのせいじゃないんです」
「そうじゃ、ヘレフォーは悪くない。美味いモノを持って来るのじゃ」
戦闘将ヘレフォーはイーズと話したいらしく毎日、訪ねてくるのだ。
最初は相手にしなかったイーズだがヘレフォーが手土産に美味しい物を持って来るのが解ってからは勝手にスランバー集落の俺達の宿へとヘレフォーを招き入れてしまうようになった。
「その魔王さんの下に居るモノはヘレフォーさん達でも倒せないのですか?」
「正直よく分からんのです。遥か昔より封印されし邪の者ゆえ……」
「そうじゃ、ダーリンが倒せば良いのじゃ」
「なっ!」
イーズが抑えれないモノを俺が倒せる訳がない……
いや、それじゃダメだ……
それはカシューの救出にも同じ事が言える。
イドリーやエラトス、フラマウを含めたテーベの小箱と鳥籠でも解決出来ない事をキューキュービー討伐の最後に役立たずだった俺が動いて何が出来ると言うのだ……
(蜂の巣ダンジョン攻略が終わったらカシュー救出に出発すると、みんなに告げるはずだったけど……やっぱり今は早いと今回の討伐で思い知らされたな)
「倒せるかどうかは置いといて行ってみませんか? 草原の民エリア、僕の故郷カータへ」
「あらあら、アルパカさんの故郷なのね」
「メルカさん、そうなんですが、そうじゃないっす。リャマです」
蜂の巣ダンジョン攻略が終わったハルティスに居ても強くなれる訳でもない。
かと言って、そのカータへ行ったからと言って強くなれる訳でもないだろう。
迷っていると……
「ヘレフォーさんは帰るんですか?」
ラッカがヘレフォーへ尋ねた。
「そもそも某が参ったのはイーズ殿へマオウ様の伝言を伝えるのが目的、そろそろ戻らねばなりますまい」
「ヘレフォーのオッチャン! 着いて行ったら戦闘を教えて貰えたりするかな? 僕もっと強くなりたいぜ」
「私もピスタと同じ」
「それでしたら某よりもマオウ様に会われるのが一番ですな」
草原の民は騎馬民族で好戦的。
戦闘に特化した民族と言うからには特化する理由があるのだろう。
そうだ強くなれる秘密があるのかも知れない。
ただ……魔王に会うとなると俺達は悪の手下にされてしまったりしないのだろうか?
いやいや、ヘレフォーさんを見ている限り悪い人には見えないし草原の民全般にも言える事だが好戦的であっても妙な言いがかりを付けたりする程度の低い人間は見た事がないから大丈夫だろう。
「お、俺も行きたい」
「決まりだ! 行きましょう僕の故郷カータへ」
何だかマテオの思惑通りに話が進んだのは気に入らないが今は何か動かないと落ち込んでしまう。
「……ペカン……カータでも……千里眼届く?」
「多分、大丈夫よー、です」
「あらあら、ではハリラタへ戻るココンとカイに言っておくわね」
こうして俺達は草原の民エリアであるカータへと旅立つ事となった。
またしてもマテオと一緒に旅立つ事となったのが吉と出るか凶と出るか……




