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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
たなびく旗に想う編
135/206

キューキュービー

「では、ペカン頼む」


「頑張るよー、です」


 最奥のボス部屋前でペカンの青い瞳が輝き千里眼が発動した。

 装飾紐で額から後ろへ結ばれた翡翠色のサラサラ髪……

 ただでさえ可愛いのだが魔眼が発動している時のペカンは本当に美少女過ぎる。


「……アーモン……見過ぎ」


「ボス部屋の前で余裕ねアーモン」


「さすがアーモンだけど許せないぜ」


「あらあら、モテモテねアーモン」


 クコ、ラッカ、ピスタそれぞれに嫌味を言われメルカに、からかわれるとカシューが居ない事が心に刺さる。

 やはり一刻も早く迎えに行くしかない。

 ただ、今は置いておこう。

 ボス部屋だ、気を引き締めて行く!





「大きい女の人が壁に埋まって眠ってるよー、蜂っぽいです」


「やっぱり人型さね」


「ああ予想通りQビーだな」


 ピスタの千里眼に見えたのは人型の蜂だった。

 ミュラーとプトレマは予想していたようで女王蜂タイプのボスらしくQビー、つまりクイーンビーとの見立てだ。


「敵はQビーだ! 飛行時には特に注意せよ」


「やーだ、お尻の針に気をつけーて」


 ヴァルトゼとココンの説明では強敵ではあるが過去にも討伐経験があり、この人数と力量なら油断しなければ討伐失敗は、ないだろうとの事だった。



(それならイーズが居なくても大丈夫かな……)


 蜂の巣ダンジョン入窟直前でイーズは魔王に会いに行って来ると言った。

 すぐ戻って来るから先にやっててくれと……

 まるで飲み会に遅れて来るかのような言いっぷりだ。

 問題は、その後だ、ダンジョン前の開けた広場で黒湯気をモウモウと纏ったかと思ったらホーリードラゴンへ姿を変えて飛んでいってしまった。

 みんな目が点になっていた。

 イーズの正体を知らなかったゲボク軍の中には泣き崩れる者までいた始末だ。

 喜んでいたのは山の民達だけである。




 天井近くまで続く扉は重厚そうだったが数人の獣人によって、あっさりと開かれた。

 開くと同時に甘い香りがムワッと漂い扉側から奥へと燭台が次々に灯っていく。


「いい香りだぁ」


 吸い寄せられるように足を踏み入れた魔法士らしきヒューマンが一瞬で消えた!


「大丈夫か!」


「あ、足元が魔蜜だ」


 消えたと思われた魔法士は足元の魔蜜に腰近くまでハマっていたのだった。


「油断するな! 深層にも同じ床の部屋があったはずたぞ!」


 ファンデラの檄が飛ぶ。

 床は良く見るとハニカム構造になっていて六角形の歩道のような部分が繋がって中央に魔蜜が溜まっており歩ける部分も充分にあった。

 ただ……


「敵と戦いながら足元を時々見ないといけないのか?」


「……油断すると……嵌る」


 もし落ちても、ただの魔蜜だってのが、せめてもの救いだが動き辛いのは間違いないだろう。






「来るぞ!」


 足元を注意しつつ討伐隊が、あらかた入ったところでボスであるクイーンビーが動き始めた。


「グァゲゴゥギィア」


 ゆっくり目を開いたクイーンビーは我々を見回し聞き取れない言葉で何かを吐き捨てるように言った。

 口の中は真っ黒だ。

 そして、ゆっくりと壁の中から出始めた。


「魔法士は詠唱始めて下さい」


「剣士は同士討ちにならない様に距離を取って下さい」


「先制攻撃は剣士からです」


 マテオが箇条書きの様に次々と指示を出す。

 ヴァルトゼかファンデラの策をマテオが代行して叫んでいるだろうか?

 ヴァルトゼは横で頷いているだけに見えるが……


「行きましょう、始め!」


 草原の民達、剣士が一斉にクイーンビーへと斬りかかる。

 その時、クイーンビーは強引に横回転しながら壁を抜け出たのだ。

 そして抜け出た姿に我々は驚愕した。


「何だアレ?」


「見た事ないぞ」


「いち、にい、さん、し……」


 壁から抜け出たクイーンビーの尻は九つもあったのだ!


「九尾だ! いやクイーンキュービー、Q9ビーだ!」


「よく分からないけど、ヤバイぜ」


 ヴァジュッ、ヴァジュッ、ヴァジュッ!


 こちらへ向けられたキューキュービーの尻から一斉に針が撃ち出された。


「……リバーシールド」


 ヴゥヴァン!


「うがぁあ!」


 予期せぬ複数一斉射撃により対応が遅れた者がダメージを負った。

 俺達『白銀のスランバー』はクコの防御魔法により直撃を免れ無事だったがヒーラーや壁役が倒れてしまったパーティ達は焦りが見える。


「分け隔てなく癒やしたまえヒールレイン」


 メルカの広範囲回復魔法が放たれた。

 助けられた者は驚きと戸惑いが見られた。

 いくら討伐隊が組まれたとは言え面識のない者まで守ったり回復させるような物好きは、そうそういないのが今回のような大所帯である。


「あらあら、ペカンの回復魔法は自パーティ中心で頼むわね」


「了解よー、です」


 いくら回復魔法士が2人いるとはいえ余裕なんてないと思っていたがゲボク軍と山の民達の中にも数名の回復魔法士がいるのが分かりメルカは最後方から全体の支援に廻る事を選んだようだ。



「新種のクイーンビーですが落ち着いて行動!」


「攻撃魔法準備、剣士は下がって!」


「スイッチ、放て!」


 マテオの箇条書きのような指示により。

 複数の攻撃魔法が一斉に放たれた。


 ヴゥヴァン!


「なっ!」


 キューキュービーの前面にハニカム状の防御方陣が展開された。


「両端の針が発光したぜ」


「九つの針それぞれに役割があるのか!」


 防御された魔法攻撃の爆煙が落ち着いたかと思われた、その時!

 キューキュービーの中央から2番目の針の周りに青色の光輪が輝いたと同時に……


 ヴュシュルルゥ!


 氷結攻撃が放たれたのだ。


「うがぁ!」


 床のハニカム通路から足を滑らせ魔蜜に片足を突っ込んだゲボクさんがダメージを負った。


「ゲボクさんヒーリングよー、です」


「やっぱりだ、それぞれの針で攻撃属性が違うぞ!」


 ただ、氷結攻撃が直撃した床の魔蜜が凍って歩きやすくなっている事に気がついた。

 ここでマテオから指示が出た。


「三方に分かれて! 右側面、正面、左側面! 同士討ちにならない角度!」


 敵の防御時に光輪発光したのが両端の針だった事から同時に三方向を攻めれば防げないのではないか?

 マテオの指示の直後に、その指示の意味を理解した。


「同時魔法攻撃の準備」


「剣士は詠唱時間を稼いで!」


 敵は待たない。

 この指示が飛ぶ間も別の針から赤色の光輪発光後、火炎攻撃、黄色の光輪発光後、雷撃攻撃と次々に繰り出されている。

 こちらの防御魔法が、いつまで保つかが勝負の分かれ目か?


「詠唱準備完了〜!」


「放て!」


 ヴゥゥゥヴァシュ!






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