謎の協力体制
(プトレマさん達が正解だった〜)
確かに上級者が揃っている。
前半のトラップであるハードロックもヘビーメタルも、あっさりクリアだ。
ただ……
「ゴホッ、ゴホッ」
「むやみやたらに魔法撃つの何とかなんないかな?」
「防御魔法で防ぐ以外にも対処法があるなんて面白いぜ」
春になっていないので草原の民はいない。
今回集まったのは上級者でも丘の民が中心だ。
魔法民族である彼らエルフは、事あるごとに魔法をブッ放す。
今回もヴァルトゼが踏んで発動したハードロックやヘビーメタルに対して土属性の魔法で岩をぶつけて物理的に対処したり、水属性の水圧魔法を使って力ずくで止めるなど個人個人バラバラの対処をしてる。
面白がってるのはピスタだけだ。
「もう水魔法のせいで、びしょ濡れだわ」
「……土……だらけ」
ラッカやクコは既にダンジョンに何日も潜っていたかのような有り様である。
ただ前回よりも進行速度は速い。
それは確かだが何か雑……
そしてヘドバンツリーの大挙に雑さが仇となった。
「いくぜスカルホーンハン……」
「あらあら、危ないわ」
近距離系攻撃魔法の人達が飛び出したのだ。
逆に遠距離系魔法の人達は奥のヘドバンツリーへ好き勝手に撃ち込み始めたから煙で視界が奪われて取りこぼしたヘドバンツリーが次々と襲って来たのだ。
「……リバーシールド」
「雷の鞭ライトニングウィップ」
ダメージを負いながらも何とか全滅させたが……
「はぁはぁ、何か前回より大変だったな」
「前回が、あっさり過ぎたんですよ、これが普通です」
マテオによると即席かつ大所帯の討伐ともなると毎回こんなもんだと言う事だった。
でも、ヴァルトゼが、きちんと仕切ればもう少し何とかなる気がするのだが本人は満足そうに笑ってやがる。
「さすが丘の民の精鋭だ、頼もしいな」
(単細胞のこいつはリーダータイプではないな……)
そしてボス部屋なのだが……
もうね乱発。
キャンドルマリオネットのスモークシルクが切れてダメージを負うとか関係なし。
ドンドン魔法撃ち込んでダメージ負ったら後ろへ下がってヒール貰う。
数の力でゴリ押し……
「スモーク・ブリッジ・スパイダーが何度もキャンドルマリオネットを産み落とすから無駄だぜ」
何を言っても誰にも聞こえてない。
「ヴァルトゼが先に説明しないからだぞマテオ言って来いよ」
「それは勘弁して下さい。今は……」
すっかりヴァルトゼに頭が上がらなくなったマテオは役立たずだ。
「ファンデラさん! スモーク・ブリッジ・スパイダーを倒さないと終わりませんよね?」
さすがラッカである。
ヴァルトゼが役に立たないとみてファンデラに問いかけている。
「その為にアーモンとペカンを呼んであるのだろう?」
「うっ、確かにそうですよね。でも、またアレを見るのは嫌だなぁ私……」
ファンデラなら何とかするかと思われたが、ダメだった。
この2人はココンとカイが居なければダメなのか?
いや待て、ココンとカイも細かい事が出来るタイプじゃないぞ!
(よく、あの4人でパーティとして纏まってるな……ん? もしかしてマテオが重要な役目を果たしてるとか? いやいやいや……)
そんな事より、とにかく俺とペカンでボスであるスモーク・ブリッジ・スパイダーにトドメを射さなければ終わらないのだ。
「ラッカよアレとはなんじゃ?」
前回の討伐時には、いなかったイーズがラッカにアレの事を聞いている。
聞かなくても今すぐ目の前でアレをするつもりだ、でなければ終わらないのだから。
俺はウロボロスに魔力と祈りを込めてアロー形態へと変化させる。
砂を撒き散らしながら中空で、うねった二匹のウロボロスが絡み合い銀色の美しい矢が登場した。
「ペカンやるぞ!」
「はいよー、やるです」
前回同様にウロボロスアローを弓につがえたペカンを後ろから抱くようにし共に矢をつがえる。
しっかり狙いを付けて、いざ放つ!
と思った、その時!
ヴァシュン!
「へ?」
黒湯気を纏ったような何かが白い何を散らしながら一直線にスモーク・ブリッジ・スパイダーへ向かって飛んで行った。
そして突き刺さった、いや突き抜けた……
「ラッカや、これで良いかの? これこれダーリン早よう離れるのじゃ」
「え、え? 私は良いけど……イーズ何したの今!」
「この身体ではブレスは使えんのでの、その代わりに槍を使こうたのじゃ」
スモーク・ブリッジ・スパイダーを仕留めたのはイーズの放った槍だった。
ホーリードラゴン形態の時の鱗のような黒、赤、紫の光沢を放ちイーズのチカラの一部だと言う黒湯気を纏ったような硬質で上質そうな槍だ。
そして飛んで行く時に見えた白い何かは、ホーリードラゴンの翼の羽が散ったものだと分かった。
「……」
「うおぉぉぉおぉぉ!」
あまりの、呆気なさに沈黙が流れていたが状況が掴めた瞬間に大歓声が起きた。
紫髪のツインテールでビキニアーマーの美人がホーリードラゴンの化身だとは誰も知る由もなく、羨望の眼差しである。
「ほれほれダーリン離れるのじゃ」
「えぇっと、そうよ! そうよ!」
ラッカとイーズ謎の協力体制である。




