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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
たなびく旗に想う編
132/206

スモークシルク事件

「今回は俺達じゃないっす」


 蜂の巣ダンジョンで再びランタンラミーが斬られた。

 すぐさま疑われたのは前回ランタンラミーを斬った『赤き熱風』だ。


「だよな、今やお前らは活性抑制の優等生だからな」


 冬の間はダンジョンの活性を抑える程度の討伐で春になってから最奥を落とす。

 この決定には、落とし穴がある。

 さほど稼げないのだ。

 同じ部屋も復活を繰り返せばドロップアイテムの質が落ちていくばかり……

 活性を抑制しようにも入窟する冒険者は減少するばかりだった。

 だからといって、ほっておけば魔物の数は増え続け手がつけられなくなる。


「自分達は命を救われたので、このダンジョンが落ちるまでは精一杯尽くす所存(しょぞん)です」


 減少する冒険者の中で彼ら『赤き熱風』は奮闘し実力もぐんぐん付けて低層から中層専門ながら今や活性抑制に無くてはならない存在となっていた。





「ヴァルトゼさん分かりましたよ旅団帰りの連中でした」


 マテオは犯人の情報を(つか)んで来た。

 ヴァルトゼの装備を勝手に使ったのがバレてから信頼を取り戻そうと必死だ。

 今回ランタンラミーを斬ったのは旅団でピスタからスモークシルクを(もら)った人達が犯人だったのだ。


「で、斬ったは良いが対処しきれずに放置して逃げていたと?」


「はい、流石に気が(とが)めてたみたいで相談に来たんですよ」


「待て、マテオ! ではお前の知り合いと言う事か?」


「えー! そうですけど自分は関係ないっすよ」


 マテオが絡むとトラブルが起こる。

 トラブルポーターマテオ健在である。




「と、言う訳なんで手伝って下さい」


「何が、と、言う訳なんだよ!」


「だって元はピスタさんがスモークシルクを配ったのが原因ですよ」


 確かにピスタがスモークシルクを安易にばら()いたのはまずかった。

 だが寒そうにしていた旅団同行者に良かれと思ってした事だ。

 そんな言われ方をされる必要はない。


「ま、どの道行くつもりだったけどな」


「本当ですか!」


「だけどな、ピスタのせいだってのは取り消せ!」


「は、はい! すみませんでした」


 強くなれ。

 その為に何をするか?

 今は蜂の巣ダンジョンで経験を積むくらいしか思い浮かばない。

 誘われなくても毎日の様に通ってるのだから。


「アーモンに(かば)われるとか何かピスタずるいわ」


「ホールマウンテンでは、もっと(かば)われだぜ」


「なんじゃと! (わらわ)も庇われたいのじゃ」


「お前のドラゴンブレスから(かば)ったんだよ!」


 あの時、旅団に着いて行かなければカシューを守れたのかも知れない。

 でも守れなかった場合はイーズ、つまりホーリードラゴン復活のブレスで誰かが犠牲になっていた可能性がある。

 ふとしたきっかけで何度も考えこんでしまう俺の気を紛らわそうとしてラッカもピスタもワザとふざけたやり取りをしてるのだろう。

 ただイーズは別だが……

 結果的に思いこんだりする暇もない程に毎日が賑やかに過ぎていっている。




 そして討伐当日。


「えーっと、何これ?」


 日々、減り続けていた入窟者を懸念して今回のトラップ階層攻略にはギルドから特別褒賞が出る事にはなっていた。

 ただ、僅かばかりの褒賞だったのでそんな事で冒険者が増えるのかと思われたが、いらぬ心配だった。


「うむ、皆スモークシルクが欲しいのだろうな」


 あまりにも多くの冒険者が集まっていた。


「じゃ、俺ら帰って良いすか?」


「アーモンとペカンがおらねばトドメを刺す役が居なくなるではないか!」


 今回の討伐隊長に任命されているヴァルトゼは気合いが入りまくっている。

 本当は前回スモークシルクに巻かれて最後まで戦えなかったヴァルトゼではなくファンデラに隊長の話が行ったらしいのだがファンデラが辞退したためにヴァルトゼが任命されたってのはヴァルトゼには内緒らしい。




「おーいアーモン、悪りいが俺らは今回抜けるわ」


「えぇ、プトレマさん、そりゃないっすよ」


 常にリスクとリターンを天秤で計るのが『灰色の天秤』のポリシー。

 今回はリターンが薄過ぎるし前回の討伐パーティである自分達は目立つ、それが嫌なんだ。

 それがプトレマ達の言い分だ。


「それにさ上級パーティが、こんだけいりゃ討伐失敗はないさね」


 女剣士のミュラーが言うには俺達も、いなくても多分大丈夫だろう、数で押し切れるレベルが集まってるのだとの話だった。


「ま、でもアレだ『白銀のスランバー』がいるから一緒に行ってみたいってのもあって、大勢集まってんだと思うぞ、お前さんらまで帰ると減っちゃうかもな」


「そんなぁ」







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