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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
砂漠の魔眼修道院編
13/206

恐眼

「よう、クソ僧に、なったらしいじゃねぇかアーモン」


「クソ僧じゃねえ、窟僧(くつそう)だ。しかも俺がなった訳じゃねぇ」


 面倒なヤツに出くわしてしまった。


「ククク、この純血ヒューマンにして貴族であるティムガット様の前では同じ様なものだ」


「そうだ、(ひざまづ)け、クソ僧」


 ティムガットは貴族出身の珍しい魔眼修道士だ。

 魔眼帯を外す日を脱帯(だったい)と呼ぶが、その日が来れば貴族に戻れるという異例の措置を約束された修道士でシスターや神父も腫れ物にでも触れる様な扱いをしてる。


「その貴族の迎えが来ない様だが、どうした? 脱帯したんだろ?」


 相手をしない方が良いんだが、どうにも頭にくるので、ついつい煽ってしまう。

 こんな風に言い返せるのが俺と一部のシスターだけなのでヤツも会う度に何かと因縁をつけて来るのだ。


「アーモン止めようよ。今日は……」


 マルテルに言われて思い出す。


(そうだ今日は日が悪い、よりによって今日は……)






「酒は無理ですよ! 流石に」


「大丈夫だ、神父だって隠れて飲んでるヤツがいるんだ」


 ポイティンガーの僧窟へ通い始めてから半年近く経っていた。


 ポーションや解毒薬、時にはパンなど、俺は、すっかり使いっ走りの様にされていた。


 俺が大人しくポイティンガーの使い走りをしているのは、彼が教えてくれる戦い方は貴重な経験だからだ。

 身のこなし方から目線の配り方、武器の扱い方まで、ありとあらゆる事を教えてくれたので、その対価と思えば嫌な気もしなかった。

 

 しかし今回の酒ってのはハードルが高い、慎重さが必要だ。

 ポイティンガーの知り合いらしい神父から受け止った酒瓶を水瓶に仕込んだのは良いが

 水汲みの時に見つからない様にする為、マルテルを連れて来たところだった。






「行くぞマルテル」


「待て、貴族である俺を混血シャッフルの分際で侮辱しておいて、そのまま行けると思うなぁ」


(はぁ面倒だ、ちょっと相手して逃げるか)


 ヒューマンの種族スキルクイックを発動。


 ティムガットと取り巻きの間を一瞬で通り抜け足を引っ掛け転ばせてやった。

 あまり使いたくは、ない手だ。

 が、これで悔しがるティムガットの顔を想像しながら逃げるのが最高に笑える……ハズだった


  後から聞いた話では、この時にニヤリと笑うティムガットの瞳が朱と橙で濁るように渦巻いていたと。


「うあぁぁあぁ止めてパンをカビさせないでぇ」


「マルテルっ」


「ぁああぁあぁぁ」


 マルテルの様子が一変した。

 正気を失い何かを恐れて暴れ出していた。

 押さえようとした、その時、俺の目の前に突然巨大なダブルスコーピオが現れた!

 すぐさま飛び退き距離を取ったが、その目に映ったのは目を疑う光景だった。


 ラッカがダブルスコーピオの毒針に体の中央を貫かれてぐったりしていた。

 思わず叫びそうになった時、ふわっと酒の匂いがした。


(貫かれたラッカが見える? 魔眼帯を着けてるのに見える訳がない)


 酒の匂いのせいで正気に戻れた様だった。

 そう思った途端にダブルスコーピオも貫かれたラッカも霧散(むさん)し消えていった。


恐慌(きょうこう)を起こす魔眼か、ふざけやがって」


「何故だ! 何故恐慌しないのだぁぁ」


 魔眼の効かなかった俺を見てティムガット自身が恐慌状態だ。

 笑えねぇ。

 さっき見た貫かれたラッカの光景を思い出すと止まれなかった……


 神父とシスター達に止められるまで殴り続けていた。

 無言で殴る俺は見ていて、少し恐ろしかったとシスター達と一緒に止めてくれたエラトスさんが言っていた……







読んでくださって有り難うごさいます。

大変励みになっています。

ここまで毎日更新して来ましたが、ここからは不定期になります。

2~3日に一度は更新したいと思っております。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] えー、皇族がミックスなのに、ミックス差別があるなんて、なんて矛盾した思想…反皇族思想の持ち主かな?
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