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ガレ場の戦闘

 そこには口を黒い布で隠した山の民が行列をなしていた。

 大穴を覗く先頭の数名は山の民では、ないように見える。

 そして、その中に……なぜかカシューがいた。


「カシュー!」


 思わずあげた大声に、こちらの存在を気づかれてしまった。


「攻撃態勢準備!」


 俺の失態を責めることもせず、すぐさま旅団へ指示を出したのはイノウタだった。

 皆が魔法や武器を準備した、その時に俺はもう走り始めていた。


「待つんですアーモン!」


 制止するイノウタやイシドールの声も耳には入ってなかった。

 居るはずのないカシュー。

 俺の声が聞こえなかったのか反応のないカシュー、いや聞こえたはずだ……

 これは絶対にカシューの意志なんかじゃない。

 ハルティスに残ったラッカ達に何かあったんだ、そうとしか考えられなかった。




 大穴を覗く先頭集団も、こちらに気がつき即座に攻撃魔法を放って来た。


 ヴゥヴァン!


「……全て……防ぐ」


「あらあら、当たったら回復させるわ」


「他のヤツは僕が倒すからカシューの所へ行ってくれだぜ」


「ありがとうクコ! メルカ! ピスタ!」


 俺が走り始めてすぐに彼女らは追走してくれていた。

 そしてなぜか……


「クコさんの後ろに着いて行きますね」


 マテオも着いて来ていた。




 大穴を覗く先頭集団からの指示が出されたようで山の民達が、こちらへと攻めて来た。

 黒い布で口周りを隠し全身が黒ずくめの出で立ちは忍者のようでもある。

 ただし陣羽織のような防寒着や獣の皮の耳当て付き帽子を被っているので熊撃ちのマタギ的な雰囲気もある。

 薄着で倒れていたストラボも本来なら同じ装束を纏っていたのだろう。


「決して殺してはならぬぞ」


 俺がウロボロスを剣形態で構えたところで……

 いつの間にか追いついていたイシドールと数人の丘の民が強く言って来た。


「分かってます」


 だが両手に鉈のような独特の形の短剣を持った山の民を相手に加減しつつ戦うなんて可能なのだろうか?


 ズザァ!


「くそ、滑る」


 小さな石や岩でガレ場となっている悪い足場に加え斜面なので慣れない俺達は足元が滑り何度も転けそうになっていた。


 シュッ!


 それに引き換え山の民は、まるで平地かのような素早い動きだ。

 これは、まずいかも知れない。

 こちらは足元が滑る、相手は山に慣れ素早いし人数も多い。

 1対1がやっとだ。

 連携されれば対応出来るだろうか?

 だが……


 パシュッ!


 初手を交わし腹へと掌底を喰らわせる。

 足場の悪さを物ともしない動きには目を見張るものはあるが攻撃自体は単調で避けれなくはなかった。


「……ピスタ……代わる」


「助かるぜクコ」


 ピスタの攻撃は加減なんぞは出来ない慟哭銃とスカルホーンハンマーだ。

 体術に秀でた川の民であるクコが担当するのは正解だろう。

 俺も川の民エリアで磨いた体術がなければ厳しかっただろう。

 とは言えこの人数相手に加減した体術だけでは埒があかない。




「どうした! お前達!」


 足止めされているうちに旅団が追いつき元山長であるストラボが山の民へ向けて叫んでいる。


「おっちゃん、どうしたんだぜ?」


「様子が、おかしいのだ! こんな戦い方は山の民では、なかろうよ」


「確かに、山の民は統率のとれた集団行動が得意と聞いています」


 クコが戦闘に加わった事で自分の身は自分で守るしかなくなったマテオだが意外にも話に加わる余裕があるようだ。

 そのマテオの説明では山の民は単独戦闘よりも集団での連係攻撃を得意とするのだそうだ。


「それに目が死んでおろうよ」


 ストラボの言う通り山の民達の瞳孔は開き感情すらないかの様な表情に見える。

 とは言え顔の半分を黒い布で覆っているのだ、よく分からなかった。


「睡魔の揺りかごシエスタリア」


 丘の民の放つ睡眠系の魔法で行動不能になる者もいるが耐性の強い者には効いていないようだ。


「やだぁ、任せて!」


 デスリエ王女の従者である花の民達が吹き矢を放つと、しばらくして山の民達は次々と行動不能に陥った。

 これならカシューの所まで行ける!

 そう思った、その時……




「あらあら、何か飛んでくるわ」


 大穴の先頭集団から何かが飛び立ち、こちらへ向かって来ている。


「3人いますね」


 3人は3人だが妙な状況だった。

 それぞれが片翼の獣人……

 右片翼と左片翼の獣人が2人で協力して飛び別の人を抱えて運んでいるのだ。

 問題は、その人だ。


 トンッ!


 降り立ったのは老人だった。

 アフロ頭の……

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