表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/206

草人間と阿修羅大樹

 その日の野営地は葉の落ちた大樹がある広場だった。

 双葉の下草が茂り雰囲気も良い。


「今夜は壁画がないから安心ですね」


「どうだろな、何かしらは起きると思ってた方が良いと思うぞ」


 すっかりマテオは俺達、『白銀のスランバー』専属ポーターのようになってしまった。

 とは言え荷物は何も預けてないのだが……

 意外だったのは、このマテオ、料理の腕が中々良い事だった。


「マテオ、この木の実でいいんだぜ?」


「そうです、そうです」


「あらあら、干面鳥を水で戻しましたよ」


「ありがとうメルカさん、じゃ、この調味料振ってもらえますか?」


「……焚き火……点いた」


 旅団の食事は谷の民を中心とした料理担当班が一手に引き受けて作るのだが特別許可で同行してる俺達が毎回いただくのも気が引ける。

 かと言って料理が得意なメンツも、いないので困っていたところだった。

 面倒で厄介な獣人だが正直助かった。


「こりゃ美味いぜ!」


「本当だ! 美味い」


「でしょ! これは草原の民がダンジョンで作ってるのを教えてもらったんすよ」


 焚き火を囲んでの食事は楽しい。

 前の世界でも秋祭りや正月飾りを焼く祭りの時には大勢で炎を囲んで餅を焼いたり、ぜんざいを煮たりしたものだが同じように楽しかった。




「……でね、ファンデラさんがカイさんとココンさんを間違えて……」


「ハハハ」


 情報通だけあってマテオは話上手だ。

 俺達の焚き火が笑い声で溢れてるのでマテオを敬遠してた人達も少しずつ寄って来始めた。


「入っても良いかい? 酒を持って来たからよ」


「私も良いですか? ハルティスの焼き菓子があるんですよ」


「あらあら、どうぞハリラタの魔蜜飴がありますよ」


 美味しい物と楽しそうな雰囲気は正義だ。

 気がつけば昨日の喧嘩の事をネタに盛り上がるほどにマテオは受け入れられていた。




 ズボッ


 ズボッ


 深夜に、その音は鳴り始めた。


「……アーモン……変な音」


「ん? どうしたクコ」


「アーモンさん、起きて下さい、やっぱり始まりました」


 すぐそばで1人用の天幕を張っていたマテオも起こしに来たので出てみると……





「……可愛い……草人間?」


「何ともなぁ、変な光景だ」


 大樹の下草。

 双葉の草の下に子供のような体があった。

 その子供? 草の生き物は(てのひら)サイズの体で頭の上には双葉が生えている。


「コロポックとも違うぜ」


 その草人間だか双葉の妖精だかは一生懸命に隣の草を抜いていた。

 そして抜かれた草人間は、また隣の草人間を抜く。


「あらあら、どんどん増えていくわね」


 ある程度、増えると草人間は共食いを始めた。

 丸飲みなので血が出たりする訳でもないのでエグさはないが……

 丸飲みする度に大きくなってゆく。


「……可愛く……なくなった」


 とうとう俺達と同じくらいの大きさになった。

 同じ大きさにになってみると無表情の彼らは薄気味悪い生き物に見えた。

 そして、足元では抜く増える食べる大きくなるが繰り返されていき……


「これ逃げた方が良いんじゃないか?」


「大き過ぎますね」


 この会話を合図に起き出していた周りの人々も一斉に逃げ始めた。

 昨夜と同じ展開だ。

 昨夜と違ったのはパニックにならず自然と二列に並び来た道を戻った事だろう。


(昨日デスリエ王女が指示した避難方法が、もう定着してる!)





 草人間の巨大化が落ち着く頃、つまり隣の大樹と同じくらいなった頃には全員の避難が終わっていた。


「……一人……三つ葉……いた」


(大変な時でも、こんな事に気づき口に出すクコは、やはり大物なのではないだろうか……)


 カシャ! カシャカシャカシャ!


 今度は葉の落ちた大樹の方が動き始めた。


「こりゃ枝人間だぜ」


「これは阿修羅だ」


「そのアシラって何ですか?」


「あらあら、アーモンのいつものヤツね」


 巨大草人間と阿修羅大樹は向き合うと殴り合いを始めた。

 殴るたびに体の表面が削れて舞い散る。

 粉のようになって舞い散る。

 そして積もる……



「うおっ! アーモンちょっと耳貸してくれだぜ」


「なっ!」


 昨日の粉はミスリルだったが、今夜の粉はアダマンタイトだと教えてくれた。

 昨日は即座に口走ってしまったピスタだが今日は混乱を避けるため耳打ちをしてくれた。


「えー、皆さん本日も何らかのレアアイテムかと思われますが決して持ち帰らぬようにお願いします」


 昨日と同じアナウンスをイノウタが行った。





 その時、阿修羅大樹が突き出したパンチで削られた草人間の大きめな欠片(かけら)が我々のそばまで飛んで来た!


「うわっ!」


「危ない!」


 先頭近くにいた人々が反射的に身を守る形で手を前に出した。

 すると、猛スピードで湯気が吹き出して……


 ヴァシュ、ヴァシュン!


 何体もの湯気ヘラジカと湯気司祭が顕現(けんげん)し欠片とぶつかった!

 大きさもバラバラ動きもバラバラだが飛んで来た欠片から自分達を守る動作だった事は間違いない様子であった。


「俺達も出せるのかな?」


「出せるが止めておきなさい」


 年配エルフのイシドールだった。

 それこそが呪いの根源なのだと……

 そう言うとイシドールは昨日と同じように大きな湯気の掌で湯気ヘラジカと湯気司祭を潰していった。

 もろに欠片が当たり霧散したヘラジカ以外を……



「……双葉が……千切れた」


「あらあら、腕が少なくなったわね」


 巨大草人間は頭の双葉が千切れ飛んだ時に……

 阿修羅大樹は腕が千切れ飛んで残り一本になった時に……

 全身が粉となって散っていった。


「先ほどヘラジカと司祭を顕現させた者は、こちらへ集まるように願います」


「えーこれは、呪われないための検査なので守って下さい」


 先頭で湯気ヘラジカと湯気司祭を顕現させた数名の者は集まったが、その中の1人が理由を説明しろとイノウタとイシドールに文句を言っている。

 イシドールと配下の男達が何とか(なだ)めているが説明するつもりはない様子だ。


 呪いの根源……


 その意味を説明しない。

 谷の民エリアまでは、もう一晩野営する必要があるが最後まで説明せずに済むのだろうか?














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ