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ラッカの理由

 ラッカは決心した。

 アーモンと離れてる間に魔法の腕を上達させると!


 アーモンの魔力を見ていた。

 素っ気ない素振りで言っていたが魔力が揺らぎまくっていた。

 もちろん……


「私も揺らぎまくってたんだろうけど……」


(でもアーモンが揺らぎなしで言ってたら立ち直れなかったわ)


 無理して言っている。

 それが分かった。


「残ってくれて助かりました、ラッカ」


「いえ、私もダンジョンで鍛えたい気持ちもあったんですよ」


 イドリーの気持ちも理解出来る。

 残るイドリー、カシュー、ペカンを心配してアーモンが無理をしたのか?

 それは分からない、別の何かかも知れない。

 それは何でも良かった。




『離れてれいても心は1つだぞ』




 その言葉はラッカに響いた。

 アーモンが思うよりずっと……




 椰子の葉が揺れる南国。

 暖かい海沿いの街でラッカは産まれた。

 人々はフランクで付き合いやすく陽気な雰囲気の街。

 そんな街なのに……



(私は1人だった……)



 いや母も父も愛してくれていた。

 それは嘘じゃない……でも怖がっていた。


(私を怖がっているのが魔力の揺らぎで分かった)


 魔眼のコントロールが出来なくて見なくて良い時に限って魔力視が発動した。

 たぶん生まれつき魔力視だった。

 最初の頃は愛される魔力の波動に包まれていた。

 それが変化し始めたのは母に抱かれて街へ出るようになってからだ。


 スリや盗賊と、すれ違うと禍々しい魔力が見えて泣き出した。

 そんな事が何度も続くと最初は役に立つと街の人々から持て囃されたが軽い嫌悪感を抱く街人や隣人にすら泣くようになると……


「この子のせいで近所の人が避け始めてるの……」


「ラッカの前では言うんじゃないぞ」


 それでも愛する娘の前では普通に接する。

 親としては当然の態度だ。

 でも娘には見えてしまっていた。


(自分を母さんも父さんも怖がってる)


 幼過ぎる少女には大き過ぎる衝撃だった。




 今でも思い出す。

 椰子の木の並んだ海岸を散歩する街の人々の放つ幸せで温かい魔力の波動。

 そこを自分を連れた母が歩くと見事に塗り変わっていく魔力の波動……

 恐れと緊張のピリピリした波動。

 そして、それを感じ取って揺れる母の魔力と無理した笑顔の違和感。




「しゃばくの……しゅどうい、行く」


 わずか6才の少女が下した決断。




 街で何度も耳にした言葉。


「あたいが親なら預けるね砂漠の修道院に」


「俺が親でも預けるね魔眼修道院へ」


 砂漠にある巨大なラマーニ修道院。

 通称『魔眼修道院』には村や家族から捨てられたり預けられたりした魔眼の子が多く暮らす。

 その場所に自分から行く事にした、たった1人の少女。

 それが魔眼『魔力視』を持つ少女ラッカである。


 ただ街を離れる最後の日に母と父が涙ながらに言ってくれたのが……




「離れていても心は1つだぞラッカ」




 だったのだ。

 親が自分を愛してる事は本当は分かってる。

 それでも仕方ない事がある。

 6才の少女が知るには早過ぎる事実だった。

 それでも、それがあったから今、分かる事がある。


「本当は離れたくないけど仕方ない時に使う言葉よ」


「んぁ?」


「何の言葉よー? です」


「ううん、何でもないのペカン」


 そう言って笑うラッカであった。










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