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旅団

「わたくしとカシューは残りましょう」


「あらあら、私はアーモンに着いて行こうかしら」


 砂漠の修道院を出て以来イドリーと離れるのは初めてになる。

 メルカと一緒に行動するのは久しぶりだ。


「……知らない場所……たくさん……行きたい」


「怖いよー、行きたくない、です」


「私は怖いのは苦手なんだけど……アーモンが行くんなら」


「ラッカ来なくてもいいぜ、アーモンには僕が付いてるぜ」


「もう、行くわよ!」


 とメンバーが決まりかけたところでイドリーがラッカに思いがけない提案をした。


「行きたくないのならラッカ残ってもらえませんか?」


 イドリーは残ったメンバーで蜂の巣ダンジョンの低層に入れば生活費が稼げると考えた。

 イドリー、ペカン、カシューでは厳しいだろう。

 ラッカがいればペカンが回復に専念出来るし防御魔法専門にエルフを1人くらいなら雇えるだろう。


「えっと、アーモンどうしよう?」


(ラッカと離れるのか……正直嫌だな、でも、ここは男らしくするべきかなぁ)




「どんなに離れていても心は1つだぞラッカ」




(これで良かったのだろうか? どこかで聞いたような事しか言えなかった。やっぱ一緒に来いって言えば良かったかなぁ……ラッカいないとか違和感がハンパない)


 ただ、いつも一緒にいて頼ってしまう癖がついてる自分も嫌だった。

 一度離れて成長した自分を見せてやりたい気持ちもあるのだ。



「そうよね! 分かったわ」


(あれ? 何かスイッチ入った感じねラッカさん)


 何スイッチが入ったのかは不明のままだがメンバーが決定した。

 デスリエ王女の古道旅に同行するのは……



 谷の民エリアで米を食べたい俺アーモン。

 テーベの小箱として俺から目を離したくないメルカ。

 エルフとドワーフのハーフ地域で魔道具を見たいピスタ。

 いろんな場所に行きたいクコ。


 メルカ以外は自分の利益の為に行きたいだけのメンバーである。






 デスリエ王女側の旅団と合流した翌日の朝。

 出発から呪われてるとしか思えない事態が勃発した。


「何で、お前が居るんだよ!」


「春までは暇なのでポーターとして雇われたんですよ」


「……呪われ……てる」


 トラブルポーターマテオだ。


「何か問題が? あら、アルパカ?」


「リャマです」


 イノウタが寄って来たので、このリャマのくせにアルパカ顔してるとこから胡散臭いポーターがいかに問題を起こして来たか、これまでのトラブル事例を伝えたが……


「大丈夫ですよ、他にも大勢いますから」


 と流された。

 確かに従者である花の民にハルティスで雇われたと思われる魔法士にポーターなど大人数だった。

 呪われた古道と聞いていたので敬遠されるかと思ったが意外に集まったものだ。




「まさか古道に入る許可が出るなんてな」


「ああ、まったくだハルティスに残ってて正解だったぜ」



 谷の民と思われる男達が話しているのを盗み聞きするに古道には入れるのは貴重な機会なのが分かった。

 そして普段は立入禁止になってる理由もだ……



「じゃあ、貴重な金属に出会える可能性もあるぜ」


「……持ち出し……禁止」


「それに呪われてる可能性があるって言ってたじゃん」



 呪われた古道で入手出来るアイテムは高確率で呪われているのだそうだ。

 そうしたアイテムが街中に流通しトラブルが起こらない為に立入禁止、持ち出し禁止になっているのだと……






「では、皆さん出発します。古道のアイテムを絶対に持ち帰らないで下さい。見つけた場合は今回の報酬支払い無しとなります」


 イノウタの説明が終わると、まずは入口のエルフとドワーフのハーフ地域を目指す事となった。

 ハルティスの端にある、その地域は街の外側の細道を通ってたどり着く怪しげな場所だった。

 細道の両縁は壁で囲われており、もし前後で挟まれれば逃げ場がないだろう。



「いかにも訪れる者を監視する為って感じの道だぜ」


「あらあら、そうね」


「……何か……隠し事」



 そこでピスタが解析眼を発動していた。

 赤い瞳が熱を帯びたかのように輝いている。



「何か見えた?」


「やっぱ監視されてるし隣に同じような道があるぜ」


「場合によっては挟み撃ちにする為の道だろうな」


 もし攻撃があった時には即座に魔眼を発動する事。

 クコは防御魔法の準備を俺とピスタは攻撃の準備、メルカは回復魔法の準備をしておこうと話し合った。

 今まではイドリーが先導してくれていたが今回は、いないのだメルカは仕切るタイプじゃないので俺が仕切っていかなければいけない。


(たぶんピスタの方が向いてるんだろうけど同年代の少女に頼ってるようじゃ、何がラッカに成長を見せたいだ? となってしまうよな)






「デスリエ王女は、あの虚舟(うつろぶね)に乗ってるのかな?」


「どうだろな母ちゃんが大人しく乗ってるとは思えないぜ」


「さすがピスタだ、よく分かってるじゃないか?」


 振り向くと、そこにはニヤニヤしたデスリエ王女がいた。

 この年齢不詳で上目遣いの感じは谷の民モードだろう。


「あらあら、デスったらバレても知らないわよ」


「デス?」


 ハリラタにいる間にも同じようにメルカ達のところへデスリエ王女は来たりしていたそうだ。

 若い花の民なんかはデスリエ王女に会った事がない者も多い。

 そうした者と肩書き抜きに知り合う為、知ってる者は王女と呼ばず『デス』と呼ぶのが暗黙の了解になっているとの事だった。


(クモ王女の次はデスって怖い名前ばかりだな王女は……せっかく美人なのに)


 と、そんな事を考えていると……


「やだぁ、アーモン、う・れ・し・い」


(しまったー! この人の魔眼の事を忘れていたぁ、何かしら心を読む的な能力だったはず)


「アーモンさすがに母ちゃんはダメだぜ、僕も困っちゃうぜ」


「あらあら、アーモンったら」


 虚舟に誰が乗ってるのかとか、話を誤魔化して何とかなった。

 今は花の民の誰かしらを乗せてあるそうだ。

 いつもの事なので皆、心得てると言ってるが困ってるだけでは、ないだろうか?

 それにしても……


「あらあら、警戒の為ねデス」


「そうだメルカ、だが、どの民で対処しようとしてるかは分からんだろう?」


「あらあら、また賭事にしようとしてるんでしょ?」


 俺達と離れてハリラタに残ってる間にメルカは王女と友達のような関係になったようだ。

 かつては花の民モードとしか仲良くなかったはずだが今は谷の民モードの王女とも仲良く話してる。



 結局、監視されているものの何事もなくエルフとドワーフのハーフ地域に到着した。















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