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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
蜂の巣ダンジョン編
102/206

まるでゲーム実況………

「あらあら、パーティ名はあるのかしら?」


「そう、それよメルカ! そろそろあっても良いって思ってたの」


 メルカの何気ない一言にラッカが過剰反応してるように感じる。

 確かにギルドへ登録しているのだからパーティネームはあっても良いだろう。

 これが無いから変な二つ名が付いた可能性だってあるかも知れない。


「ハルティスは色を頭に付けるのが多いよー、です」


「ココンとカイのところは翡翠だな」


「……プトレマ……灰色」


「あの困った奴らは赤き、だったぜ」


 候補に挙がったのは、カシューと俺の瞳から金色、これは見つけてくれって言ってるようなもんだから却下。

 砂漠から逃げて来たから砂色、これもバレそうなので却下。


「わたくしは何でも良いですが決まる前に着きましたね」


「んぁ、頑張るなの!」


 とりあえずパーティネームは保留となった。





 まずは定番のマフラーウルフだ。


 クウゥン、クウゥン……


「んぁ、可愛いなの」


 グルルゥガァ!


「雷の鞭ライトニングウィップ」


「あらあら、ラッカさすがね」


「カシュー可愛いからって油断しちゃダメよ」


 自分で言いながら初日の自分を思い出しているだろうラッカさん顔が真っ赤である。


「カシュー過去視を使ってみるんだぜ」


 小声でピスタが呟いた。


「んぁ、ラッカも同じなの!」


「あっ、見たのね、あの日の私を! もうピスタ」


「ハハハだって、あの日のラッカ可愛いかったぜ」


 その後は方位壺でベタベタになったカシューに今度はラッカが呟いてピスタのベタベタを過去視でカシューが見ると言う、お決まりの展開になった。


「ラッカひどいぜ」


「フフっ、あの日のピスタ可愛いかったからよ」


(いや、可愛いと言うよりエロかっただろ! 言わないけど)


「カシューには敵わないぜ」


 ピスタが呟いたところで閃いたのだ。


「イドリー! ちょっと相談があるんだけど……」






「ハンターズネストにヴァルトゼとファンデラが居てくれて良かった」


「ココンとカイが戻ってくる春まで蜂の巣ダンジョンの活性状況を維持しないといけないからな」


「戦力不足のパーティに加勢しているんだ」


 俺の想定ではヴァルトゼ達は必要ないのだが心配性ホットドッグのイドリーが納得しないので宿場に居てくれて良かった。


「では、トラップ階層以外では初めての中層以上深層未満に挑みます。翡翠の2人は出来るだけ見てるだけにして下さい」


「分かったが何が始まるんだ?」


「まあまあ、見てのお楽しみ」


「じゃ、カシューお願い!」


「んぁ、やるなの!」


 カシューの金眼が輝いて過去視が発動。

 俺も金環を発動しゴールドリングを輝かせる。

 いつものように巻き戻しが始まりピタッと止まると無声映画のような光景が始まった。


 草原の民と思われるアタッカー2人に丘の民の魔法支援が3人、中堅クラスのパーティにしては珍しくポーターを連れている計6人が部屋へと入ったところだ。


 部屋の中央、その天井に何やら張り付いたものがあり、パーティの入室とともに、その張り付いたものは蠢き始めた。


 やがて真ん中からパックリと割れ中から人の大きさほどの蝶が現れた。

 天井に張り付いていたのは(さなぎ)だったのだ

 妖艶な裸の女性に蝶の羽が付いている……ただ裸の色が緑と茶色の(まだら)だ。

 目だけは蝶のそれと同じなので裸でもエロくもなく気持ち悪く怖い印象……


 即座に武器を構えるアタッカー2人、詠唱を始める魔法士3人、ポーターは荷物から何かを探している様子だ。


 人型蝶は片側の羽だけをパーティへ向け動かした。

 すぐさま防御魔法が展開される。

 羽から大量の火の粉が舞うが防御魔法で防ぎきったようだ。

 ……が、その隙に反対側の羽を動かし赤い粉が舞っていた。


 防御魔法が解除したと同時に苦しみだすアタッカー2人、目潰し的な何かが撒かれていたようだ。

 背後へと回り込んだ魔法士が攻撃魔法を放つと同時に羽が動かされ黄緑色の粉が噴射した。

 その粉が掛かった魔法士の装備が溶解(ようかい)していく。

 目潰しから回復した魔法士のヒールと解毒魔法が連続で発動されるも人型蝶は反転し、もう片方の羽を動かすと黄色の粉が舞った。

 粉を浴びた魔法士が麻痺状態となる。


 かろうじて粉から逃れたアタッカーと溶解から回復したアタッカーが挟み込むように位置した、その時にポーターが何かを投げると……

 人型蝶の真下へ魔法陣が展開した。

 拘束的な何かのようだが、確か凄く高価だったはずだ。


 その隙にアタッカーが羽を切り落としトドメをさした。

 そこで過去視が終了した。





「……何これ……凄い」


「凄いよー、びっくりです」


 クコとペカンは過去視を初めて体験するので驚いていた。


「こ、これはゲーム実況だ」


(声はないけど……)


「あらあら、何でしょう、そのゲーじ?」


「いいのよメルカ、最近増えてんのよアーモンのこれ!」


 さてペカンのダンジョン知識によると先ほどのは四面ダストバタフライという魔物らしい。

 羽の四面それぞれが別の粉つまりダストを撒くのだが、これが厄介で個体によって別の粉になるので準備しずらく四面を把握するまで耐えてから攻略に移る必要があるとの事だ。


「でも、今この部屋の羽は四面とも見ちゃったぜ」


「ですね、ペカン、これって復活した場合も同じでしょうか?」


「そうよー、同じはずです」


 まさしくゲーム実況……

 予習してから挑めるなんて簡単過ぎて、つまらん……なんて思ってた前の世界の俺を叱ってやりたい。

 この命の危険のある世界では素晴らし過ぎる動画だ!

 いや動画ではないのだけど……


「確かに便利な能力だが封陣魔石は持って来てないぞ」


「それに、あんな高価なアイテムを使ってはドロップ品とのバランスが取れぬだろう」


 こちらも驚いているヴァルトゼとファンデラの言うことは、もっともだ。

 しかし肝心なのは四面の発動能力を把握している事実だろう。


「それなら問題ないと思うぜ、配置を分けて対処すればいいぜ」


「だな」


 イドリーはカシューと入口近くで待機しバックアップと薬草による回復役。

 ラッカとクコが麻痺面を担当。

 俺が火の粉面を担当。

 ピスタが1人で目潰し面を担当。

 メルカとペカンをフリーにして防御、回復、遠隔攻撃。

 溶解面は攻めない。

 ヴァルトゼとファンデラには不足の事態が起こる以外は動かず待機でお願いした。


「さあ、攻略サイトで予習バッチリ行くぜ」


「何だ、その攻りゃってのは」


「いいから、いいからヴァルトゼさん、行きますよ」












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