雪面鳥
「ゴメン! てっきり」
「あらあら、嫌われたのかと思いました」
「んぁ、探したなの」
スランバーコール。
眠りながら歩く女幽霊の声と勘違いしてたのはカシューとメルカが質の悪い首巻き越しに話していた声だった。
背が盛り上がっていたのと、双頭だったのは、おんぶしてたから。
角に見えたのはメルカの兎耳、普段は垂れているロップイヤーだった。
「あらあら、寒いと立つ事があるんですよ」
髪を振り乱していたのはカシューが手前で転んだから。
だから、おんぶしたのだと……
「昨日の夕方にハルティスへ着いて、夜に一度来た?」
「んぁ、そうなの」
「どの家か分からなかったから昼間に、もう一度来た?」
「あらあら、そうね」
冬越しの準備で街へ買い物に行っている間に来たのだろう。
そしてシャシャシャ婆さんに家を聞いたから確実に居るだろう夜に再訪したら入れてくれなかったのだと……
「解析眼で見たら完全にカシューとメルカだったぜ、ラッカも魔力視なら分かったぜ?」
「ゴ、ゴメン怖くて見てなかったの」
マテオの情報さえなければ、こんな勘違いしなかったのに。
やっぱりマテオが絡むとトラブルが起きる。
ポーターはポーターでもマテオが運んで来るのはトラブルだ。
『トラブルポーターのマテオ』奴の二つ名は決まりだ。
「そうでしたか蜂の巣ダンジョンとトラップ階層の話はハリラタまで届いてましたか」
「ココンとカイが戻ってますから、それでデスリエ様が心配だろうから行ってみようと言って下さったんです」
「んぁ、レイースも心配なの」
「レイース兄どうしたんだぜ?」
本当なら、そろそろハルティスの知り合い宅を経由してハリラタへ戻る予定だったそうだ。
それが戻って来ない。
山の民と何かあった可能性が高いのだと言う事だった。
「まあ、でもレイース兄なら大丈夫と思うぜ、頭が良いからな」
そこで今夜は遅いので明日また食事でもしながら話そうとなった。
シャシャシャ集落改めスランバーコール集落で久々に再開したメルカとカシューと食事会。
初めて会うクコとペカンとの顔合わせも兼ねている。
こうして、きちんと食事会なんてのは初めてかも知れない。
「わあ、美味しそう」
「メルカ達がハリラタから持って来てくれた香草でペカンがローストしてくれたんだぜ」
「慣れてるよー、毎年作るです」
「………さすが……長命」
「なによー、クコ食べさせないよーです」
「……ごめん……許して」
草原の民から買った今年の初物だと言う雪面鳥のローストが今夜のメインだ。
無事にクコもペカンに許してもらえたので、みんなで取り分けた。
「旨い!」
「これは美味ですね」
自由に民族が出入りするハルティスには周辺の食材が色々と集まるので美味しい料理が多いのだが、その中でもトップクラスの美味しさだった。
草原の民の定番保存食、干し面鳥にしても悪くない味らしい。
さて、わいわいと盛り上がりつつ離れていた間の出来事を話したりした。
いい機会なのでクコとペカンにもラパや砂漠の旅の話などを聞いてもらった。
「んぁ、蜂の巣ダンジョン行ってみたいなの」
「あらあら、魔蜜はないのよ、カシュー」
ハニービーの魔蜜が大好きなカシューをメルカが諫めるが、そんな事じゃないらしい。
身につけた薬草の知識を試してみたいのだ。
それにココンとカイの報告で貴重な薬草が見つかっているのだそうな。
「さすが花の民ですね、我々は貴重な薬草なんて気付きもしませんでしたから」
それなら明日、ハンターズネストまで行ってみようとなった。
前回のトリック階層で心配し過ぎを指摘されたイドリーが考え直して以来、中層の入口ハンターズネストまでが現在の俺達の主となる狩場なのだ。




