1-3 突然始まる、異世界の旅
「そうだ、おっさん。俺は日本に帰りたいんだが、どこへいけばいい?」
おっさんに聞いてしまえば早い。
この骨折すら治すことのできる力で金をもうけるんだ。クックック!
「は? ニホン? すまないな。ちょっと聞きとれなかった。もう一度言ってくれ」
「日本だよ、日本。知ってるだろ? 俺、どうやらそこからここまで来たみたいなんだけどよ」
「ニホン? どこかの村か集落かい?」
「あ? ちげぇよ。国だよ国」
おっさんは考え込んでしまった。
なんだ、日本って結構有名だと思ってたんだが、そんなに知られてねぇのか。
「わかった! 兄さん、あんたジャガル集合国から来たんだろ」
「いや違うけど」
「……そうか。これでも結構色々な土地や国へは足を運んでいるんだけどね」
まあ、日本にはいつか帰れるだろ。
それより俺は気になる事をひとつ思い出した。
さっきから半透明のやつが目にうつるのだ。
「とりあえず日本のことはいいや。それよりもおっさん」
「なんだ?」
「この半透明のやつ。なんなんだ一体。俺の服を溶かしやがったんだぞ?」
時々横を通りすぎる半透明のやつを指差した。
おっさんは不思議そうな顔をしながら俺をみる。
「知らないはずはないだろう? こいつはポーンというスライムの一番弱いやつだよ」
「あ? ポーン? スライム?」
「本当に知らないのか? 記憶喪失か何かか?」
「俺の国にはこんなもんいなかったからよ」
記憶喪失か。記憶喪失といえば記憶喪失なのかも知れない気がしてきた。大体、突然裏路地から森の中にいたんだ。
それも、外国の。
記憶喪失かもな。
「魔物がいない国があるのか? 兄さん、かなり珍しい国から来たようだな」
「魔物? 魔物ってなんだ?」
「おいおい、魔物も知らないのか。転移魔法かなにかで国から飛ばされたのか?」
「魔法なんてあるわけねぇだろ」
「……」
おっさんがいきなり馬車を止めた。
馬車からおっさんが降りる。
「こっちにきてくれ」
「あ? なんだ?」
仕方なく俺も馬車を降りた。
半透明の……ポーンとやらにおっさんか向かっていく。
「見てろよ」
おっさんが右手をポーンに向かって突き出すとうなりはじめた。
数秒経ったとき、突然大声をあげやがって体が硬直する。
「ファイアーボール!!」
おっさんの右手、いや右腕全体が赤色に光ったかと思うと、真っ赤なスイカぐらいの火の玉がポーンへ向かって飛んでいった。
「うお! すげぇ! なんだそりゃ!」
火の玉がぶつかったポーンはその中身が地面に垂れ流れ、動かなくなった。
動かなくなったポーンにおっさんが近づいていく。
「兄さん、もっとこっちにきてくれ」
「あ、ああ」
ポーンに服を溶かされた手間、あまり近づきたくはなかったが、何かあるのだろう。
ポーンはしばらく小さな煙をあげていたが、液体やら内臓みたいなのが中心に集まっていくのが見えた。
うわ、キメェ!
「ほら、これが魔石だよ」
ポーンが集まった後、クルミぐらいの小さい緑色の石ができた。
「……本当に見たことないのか」
「あ? だからそういってんじゃねぇか」
「そうだな。あまり、嘘をつくタイプには見えないしな」
おっさんと一緒に馬車へ戻った。
しかし、すごいものを見れた気がする。
びっくり人間か、手品の類いだろうか。
昔、テレビで口から火を吐くやつが出てたことがあるが、あれに近いのかもしれんな。
ポーンも魔石とかいうやつができたら跡形もなく消え去るんだから気持ちが悪い生き物だ。