1-2 突然始まる、異世界の旅
……どこまで行っても草原だ。
よく見るとあちこちにさっきの半透明のやつがいて、休める場所がない。
動きの遅い生物だが、野宿できる気がしない。
どこか人の住むところに行く以外にないのかもしれないな。
体力はある方だと思っていたが、さすがに疲れが見えてきたとき道が見えた。
道といってもかろうじて草を刈った程度の道で舗装もされていない。
だが、どこかには通じているはずだ。
片方はさっきいた村に続いていそうなので、逆側へ進んでいく。
途中で何度か道が別れていたが、適当に右へ行ったら次は左、左へ行ったら次は右、と進んできたが、人の気配は全くない。
どこにも人が住んでないんじゃないかと思い始めた時、一台の馬車が後ろから音を立てながら近づいてきた。
馬車、なんだろうか。馬ではない。
六本足の犬のような虎柄の生き物だ。
外国はすげぇ。
邪魔にならないように道から外れて避けてやる。
すると、変な犬を操縦していたおっさんがこっちを見ながらゆっくりと馬車を止めた。
おっさんの手には古傷が多い。殴りあいになったらちょっとキツそうなおっさんだな。勝てないかもしれん。
「珍しいな。歩きかい? 兄さん」
「あ? そうだよ。なんか用か? おっさん」
俺の面倒臭そうな態度に少し驚いたのか黒いマスクに驚いたのか、俺の顔を見て驚いた表情をしたが、直ぐに元の顔に戻った。
「いや別に用というほどの事ではないが、目的地が近いのなら乗っていかな――」
「マジで!? 乗る乗る! どこに乗ればいい? この中か?」
「お、おいおい、現金なやつだな」
「現金? 金はねぇぞ?」
「いや、そういう意味じゃないんだが……」
馬車の中には商品みたいなのがぎっしり詰まっていて乗れないのでおっさんの隣に座った。
馬車はガタガタ揺れて座り心地が悪い。
おっさんはかぶっていた平べったい帽子をかぶり直している。
それにしても、この馬車はどこに向かっているんだろうか。
「どこ行くんだ?」
「私はカンツペーラーの都市に行くところだよ。途中でいくつか村によって商売するがね。兄さんは?」
「俺か? 別にどこという場所はねぇんだけどよ」
「目的地はないのかい? 商人じゃないのは見てわかる。冒険者には見えないし、奇抜な服装をしているから魔法研究者かい?」
「あ? 魔法だ? なに言ってんのかわからんけど、俺の服装は日本では普通……ズボンはいてないぞ俺!!」
うおおおお!
トランクス一丁でおっさんと普通に話してた!
まあ、別に恥ずかしいということはないが、完全に忘れてたわ。
おっさんの服装もあの村の人間と同じような、何かの動物の皮を服にしたものだ。
ただ、あの村の人間が着ていた服よりもデザインがあって良いものを着ているのがわかる。
俺よりもおっさんの皮の服のほうが変だと思うがな。