突然始まる、異世界転移 終
……夜になったが、誰も来なかった。
結局俺はどうなるのだろうか。
飯は届けられてない。飢えて死ねということか?
それよりもMPがまた30まで戻ったみたいだ。
考えてみたが、奴らと話してみても解決できるとは思えない。
ここまでされて話したくもない。
腹は減っているが、足が痛む。まずは足を直すべきだな。
(骨折の治るものをくれ!)
俺の手にガラス瓶に入った緑色の液体が現れた。
…………これは、飲むのか?
足に、塗ればいいのだろうか。
匂ってみたが、ひどい草の香りがする。
……飲めなくはなさそうだ。
「ぐっ……臭ぇ!」
口に入れると大量の草を口に入れられたような、草しか感じ取れない味が広がる。
いや、それに加えて土臭い。……何で俺は味わってるんだこんなものを。
「おっ……おお?」
足が……光っている。
治った。足が動く!
痛みもない!
やべぇ! これ、金稼げるんじゃね?
この力があれば、医者になれるんじゃねぇのか!?
いやまて、その前にこのクソ村から抜け出そう。
腹は減っているが、MPの左がまた0になっているのでおあずけだ。
夜になって辺りは暗い。
逃げるにはもってこいだ。
俺が骨折しているから油断しているのか、元々、俺みたいな不審者がこないから警備が薄いのか、見張りみたいな奴もいないし、扉もない。
部屋から外に出る。
久しぶりに外の空気を吸ったな。空気がうまいと感じたことがなかったが、こういう環境だと感じるものなんだな。
「右か……左か」
もう俺がどっちから来たのかはわからない。
他の村がどっちにあるのかもわからない。
まあ、適当に進むか。
ありがたいことに村は小さい。直ぐに村から出れるだろう。
星の明かりをたよりに辺りを見ても、納屋みたいな小さい建物を含めて家は20もないだろう。
腰をかがめて足音を立てないように家の近くを移動する。
2~3分ほど進むと村の端まで来ることができた。
あまりにも小さな村だ。
火が揺らめくようなオレンジ色の光がこちらから確認できない家の裏側からこちらへ歩いてきているのが見えた。
見回りか。
この村はクソだった。
早く抜け出そう。
足早に俺は村を後にした。