1-11 突然始まる、異世界の旅
「う……うう」
頭の鈍い痛みに目を覚ます。
この感じは経験がある。俺は頭を打って気を失ったようだ。
頭を手で押さえようとして手首で手を縛られている事に気付いた。
慌てて立ち上がろうとして、さらに足も足首で縛られている。
これではシャクトリムシみたいな動きしかできない。
「一体……何が……」
何があっただろうか。
俺はおっさんと別れて村を出て…………そうか!
小汚ぇ男に声をかけたら、後ろからガツンとやられたんだったなクソ!
いきなり襲いかかってくるとか頭がおかしいとしか言いようがない。
しかし、ここはどこだ?
ここで初めて辺りを見渡す。
牢だ。
薄暗い部屋の中は、松明の光一本の明かりしかないからだろう。
出入口だろう場所は木で作られた格子になっている。
どこかの洞窟に入れられているんだろうな。地面も壁も岩っぽい。
見張りはいねぇな。
まずは手の拘束をどうにかしなくては。
MPは30まで回復している。
俺はクリエイターの力を使ってカッターを手に作った。
これで、手の拘束はなんとかなる。
手首を切らないように注意しながら、拘束していたものを切断した。
丈夫な茎みたいな植物で縛られていただけなので簡単に切断できたな。
足の拘束もさっさと切る。
さて、どうやって出るべきか。
MPは15になっているのでカッターは15ほど使うらしい。
あと15のMPを使ってここから脱出するか。
「あの……」
「うお! びっくりした、人がいたのか」
一緒の牢に人がいたことにびっくりした。隅っこにいるわ暗いわで見落としたようだ。
暗い場所にいるので姿は見えない。
「言葉は通じますか?」
「おう通じてるぞ」
「……やっぱりダメですか」
ん?
あ、俺マスクを取り上げられたのか。
っていうか全裸じゃねぇか俺!
チッ! パンツまで取ることないだろ!
耳に入っていたイヤホンには気づかなかったようだな、バカめ。
まあ、言葉は通じないが、ここに捕らわれてるってことは敵ではないだろう。
とにかく今は脱出することを考えよう。
出入口だろう扉部分は鍵じゃなくてセンが向こう側でしてあるだけだ。
時間をかければカッターでも切断できそうだな。
一緒にいるやつは無視して俺は時間のかかる作業に取りかかった。