1-10 突然始まる、異世界の旅
道はしばらく進むと森の中へと続いていた。
森に入る前にMPが戻っていたのでズボンだけ手に入れた。
自分に合わなかったらどうしようかとヒヤヒヤしたが、なんの問題もないズボンだ。
MPを確認すると左の数値が15になっている。
ズボンはMPを15ほど使ったらしい。
作るものによってMPの減りがかなりかわるらしいな。
森の中は空気が一気にジメっとしている。
木の葉によって明かりはあまり入ってこないが、ペンライトを使うほどではない。
「夜は何も見えなくなりそうだな」
夜になる前に森を出られればいいが、多分無理だろうな。
俺は進む前に近くの木をよく見た。
一本一本の幹は手が回らないほど太いが、小枝が沢山あって結構登りやすそうだ。
とりあえず、眠る場所は登ればなんとかなりそうだな。
本当に寝れるかどうかは別として、眠れそうな場所を確保した俺は道を進み始める。
やっぱり動物の声は聞こえない。
木の影からポーンが出てくるぐらいなものだ。
動物を見つけて捕まえられたら良い金になりそうだが、そううまくはいかないな。
道はどんどんと森の中へと進んでいった。
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1~2時間ほど経っただろうか、代わり映えのしない風景に疲れを感じてきた。
回復したMPを使っておにぎりを作った。
コンビニのシャケおにぎりだ。
MPは5しか減っていない。全部使ったら6個も食えるじゃないか。
おにぎりを食い終わったところで近くから物音がした。
ポーンはその移動方法から音は立たない。
「まさか……動物か!」
音がしたほうへ振り向くと、男がいた。
虫が飛びそうなほど薄汚れた格好をした20後半ぐらいの男が一人。
灰色のかなり汚れた皮の服を着た、腕や足の筋肉が盛り上がったヤバめのやつだ。
手には何かの石がくくりつけた棒を持ってる。
「なんだよ、なんか用か?」
「ああ、用があるんだ……よ!」
後ろから声が聞こえたと思った瞬間に、頭に衝撃が走り地面に倒れた。
「よし、運ぶぞ」
「なんか持ってればいいんだが」
「服を脱がせ……なんだこいつの服。皮じゃないぜ」
「なんでもいいよ」
遠退く意識の中でやつらの話し声が少しだけ聞こえた。