1-6 突然始まる、異世界の旅
「良く回るコマだな。いくつか売ってくれんか?」
いくつも作るのにどれだけ時間がかかると思ってんだよ!
「いやだよ面倒くさい。だいたいMPがないからもう作れんしな」
「むむむ、そうか、残念だ。もし気がかわったら言ってくれ」
俺は止まって座席を転がったコマを差し出す。
「なんだ?」
「やるよ。これぐらい。その代わり、飯はよ」
「ああ、飯か。まだ少し早いが、食うか。もうすぐ村に着くからそこで食おうと思ってたんだがな」
いいから早くよこせ!
馬車を止めたおっさんは大事そうに俺から受け取ったコマを白い布につつんで荷馬車の中の一つの箱の中にしまいこんだ。
マジで早くしろよこのやろう。
「よし、こいつだ。知ってるかもしれないが、こいつは結構値段が高い。味わって食えよ」
「なんだこれ」
くそ硬ぇ何かの肉を干したものだな。
それとさわってわかるほど硬いパン。何かの木の実が入っている。
そして、独特な臭いがする冷めきった汁が出てきた。
「ほれ、食え」
「……お、おう」
結構、キツイ。
歯は悪くないから肉もパンも食えなくはない。
だが、肉は塩味がすごいし、やっぱり硬い。硬すぎる。
塩味がキツイから汁を飲むが、これもどうだろうか。
土っぽい。泥水を飲んでいるかのよう……ってこれ村でも出てきたあれか!!
そう思うとだんだんマズく感じてきた。
具はないからノドをうるおすか、何かと一緒じゃないとキツイ。
パンは予想通り硬い。パッサパサだ。
一口で口の中の水分を全部取られるので仕方がなくまた例の泥水だ。
全部食い終わる頃には噛みすぎてアゴが痛くなっていた。
「旨かったろ?」
……俺は何て言えば良いんだ?
これが日本でクソどもに言われたなら「不味いわボケ!」と言えるんだが、このおっさんの自分の飯がうまいのを信じて疑わない顔を見ていると、そんなことを言える気がしない。
はぁ……仕方がない。
「ああ、うまかった、と思う」
「そうだろうそうだろう! 本当に高いんだからな! 特に肉がな」
あの硬い肉がねぇ。
塩味しか無かったけどな。白飯には合うかもしれない。
せっかくの飯タイムだったが、あまり腹はふくれないし味は微妙だしでさんざんだった。
もうすぐ村に着くみたいだし、そこでうまいものがあればいいんだがな。