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血色の世界  作者:
8/44

7話 料理

「セレメの家に泊まりに行くぞー!」


「「おー!」」


 ロキの言葉にレイダとメーナが声をあげる。

 少し前から準備して皆の保護者に許可を貰い、今日に至った。

 明日は学び舎は休みだから丁度いい。

 学び舎は週に一度休みの日があるからな。

 明日は朝から皆で鍛錬だ。

 楽しみだな。


 学び舎から直接皆で俺の家に向かう。

 荷物も学び舎に持ってきていたらしいから問題ないだろう。

 今日は皆が来ると知っていたから、アキが食材を買い込んでくれているし今日はご馳走かな。




「セレメ。どこまで行くきなのよ?」


 レイダが怪訝そうにしながら聞いてきた。

 村の外れに家があるから長いこと歩く。

 いつもは走っているからこんなに長い道だとは感じなかったけど。


「ちょっとした林があってその中にあるぞ」


「あんた毎日この長い距離から学び舎に通っていたのね。感心するわ」


「鍛錬にはいい道だろ?」


「……セレメって鍛錬が大好きよね。なんでそんなに頑張れるのよ」


 レイダが自分で持ってきた木剣を撫でていう。

 レイダも十分頑張れてると思うぞ。

 俺は目標が馬鹿げているから馬鹿みたいに頑張ってるだけだ。

 それに師にも恵まれていた。

 俺の強さはアキとコリアスのおかげと言える。

 二人がいなかったとしても俺は黒い血のために悪夢を倒すけど。


「ちょっと聞いてる? あんたの異常に頑張るわけは何よ?」


「目標があるからだ」


「目標? アキさんが亡くなる前に勝つとか?」


「もう何度か勝っているぞ」


「はっ!?」


「でももっと圧倒するくらじゃないとダメだ」


「何と戦う気よ……」


「言うわけねぇだろ。馬鹿にされるさ」


「余計知りたくなるわ!」


 しつこく聞きたがっていたがメーナがレイダを宥めてくれた。

 メーナは話すのが苦手だが、この四人で鍛錬をよくした所為か俺たちとは普通に話せている。

 それでも自信がないのか自分を卑下することが多々あるけど、人に気が使えるし魔法も俺より上手いし弓も使えるようになって来ている。

 強くなっているからもっと自信を持つべきだよな。




 林に入って少し歩くと木で出来た家が見えてくる。

 結界の中にある林だから魔物はいない。

 安心安全だ。


「お帰り、セレメ」


 干していた洗濯物を取り込んでいるアキがそういう。


「ただいま。アキ」


「皆を案内しなさい。お茶とか出して歓迎もしようか」


「あいよ」


 家の中に入り皆の荷物を俺の部屋に置かせた。

 小さな家だから客間がないんだ。

 こんな離れたところに人なんて滅多に呼ばないし。

 それでも俺の家に泊まりにきた三人はアキという有名人の家見たさだ。

 本人たちが言っていた。


 リビングの椅子に皆を座らせ、俺はお茶と菓子の準備をする。

 昨日アキと一緒に作ったクッキーと、この林に生えていたチェリーを皿に乗せてテーブルの中心に置き、麦のような形に紫の花が沢山ついた植物でハーブティーを作ってそれをカップに注ぎ配った。


「さあ召し上がれ」


 椅子に座ったところでいうが皆は俺を見つめるばかりで動かない。

 あれ? どうしたんだ?

 まさかクッキーもチェリーも嫌いとか?

 ハーブティーも苦手なのか?

 俺は珍しく慌ててしまう。

 勿論表には出していないし出せないけども。

 感情を表に出すのは苦手なんだ。

 落ち着いくために俺はお茶を飲む。

 ついでにクッキーとチェリーも食べる。

 よし。落ち着いた。


「お前らいらんの? 全部食っちまうぞ」


 俺の言葉にやっと皆がのろのろと食べ始める。

 一体さっきのは何だったんだ?


「セレメの動きが十年主婦やっている人のそれだった」


 ロキがぼそりとクッキーを食べながら呟く。

 ロキ、それ惜しいぞ。


「正確には九年だ。アキの言うところによると俺は二歳から家事を始めたらしい」


「あんたそんなところでも頑張ってたのね……」


 パクパクと口にチェリーを放り込みながらレイダが呆れたように言った。

 お前チェリー食べ過ぎだろ。

 証拠にリスみたいに頬が膨らんでいる。

 またチェリーを口に放り込みやがった!

 それ何個目だ?

 種も食べているのか?

 皆の分も残せよ?


「せ、セレメくんは得意料理とかあったりする? というか料理とかするの?」


 お茶を飲んで笑顔になったメーナが質問に俺は頷くことで肯定を表す。


「得意な料理はスープ系だな。特に夕飯を作るときはスープがいい」


 ゆっくり食事をするためにパンを突っ込むことが出来る。

 誰かと夕飯を食うならやっばりゆっくりがいいからな。


「メーナは料理とかすんの?」


 少し気になり聞いて見たら、メーナは頬に片手を当てて照れたように笑う。


「料理はたまにお父さんの手伝いでするの。一人ではまだ出来ないけど……。で、でもパンを作るのが好きだよ! 焼く前のふにふにする感じが良くて」


「へぇ。パンは買ったことしかないからどう作るかわかんねぇわ」


「よ、良ければ今度一緒に作る? 一人じゃ作れないからお父さんと一緒になるけど……」


「じゃあ今度よろしく。空いている時間を教えてくれればいつでも行くから」


「わ、わかった! お父さんに予定聞いてみる!」


 鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌なメーナがお茶をがぶ飲みした。

 ちょっ、まだ熱いだろ!

 案の定メーナは熱さに飛び上がった。

 手でパタパタと風を起こし舌を冷ましている。

 泣きそうになってるな。

 水をコップに注いで渡しておこう。



「……レイダ。君って料理出来る?」


「……出来ないわ。ロキ。あんたは?」


「僕も出来ない」


「まだ私たち十一歳よ? セレメたちが可笑しいのよ」


「メーナは女の子だしそう言うの習うのは普通だろ。セレメが可笑しいんだ。いろいろ」


「そうね。それ賛成だけど、私、女の子なのに習ってないわ」


 ロキとレイダが小声で話し合っている。

 と言っても同じテーブルを囲っているので丸聞こえだ。

 俺が可笑しいのは自分でも重々承知している。

 でも料理出来るか出来ないかは別だろ?

 ……いや、そうでもないのか。

 きっとコイツらの親は救出班とかじゃねぇんだ。

 親が家を開けるなんて滅多にないんじゃないか?

 ……聞いてみるか。


「お前らの親って家を開けることあんの?」


「は? ないわよ」


 レイダがコイツ何言ってんだって顔してる。

 ロキは学び舎でクラスのリーダーみたいなことをしている所為で頭が回るのか直ぐわかったようだ。


「アキさんがいないときセレメは一人でここにいるのか」


「そう。一時期族長の家にいたこともあったけど鍛錬とかしたかったし結局ここで留守番だな」


「その所為で料理とか出来るってわけだ」


 納得したようにロキとレイダが頷いてくれた。

 族長の家では座学ばっかで大変だった。

 それも魔族の勉強だし。

 魔族が嫌いとかじゃないんだけど、魔族の国で働く気はないからつまんねぇんだよ。

 全く憶えられないし。


「お前らの親って何してんの? 俺ばっかじゃなくてお前らのことも聞かせやがれ」


 あのときの族長宅で時間を無駄にした苛立ちを忘れたくて皆に質問した。


「私のところは大工よ。家を作ったり柵を作ったりするわ。この木剣だって母さん作なのよ!」


 自慢そうにずっと背負っている木剣を見せてくるレイダ。

 逞しい母親だな。

 大工って力が必要そうだ。

 やったことはないからよくわからないけど、家を作るって考えただけでも難しいだろ。

 しかもあの脳筋っぽいレイダを育てながら。

 すげぇ大変そう。

 そんなことを考えているとレイダに睨まれた。

 心でも読まれたんだろうか。


「僕の家は父さんと母さんがいるんだ。父さんは畑で野菜作ってて母さんは服とか編んで売っている。あと二人の血の繋がった茶色の血の子供がまだ三歳だけどいるね」


 黒い血の人間は結婚とかあまり意識しないから珍しい。

 といっても結婚したくないわけじゃない。

 保護した黒い血の子供を育てる必要があるため、相手を見つけて子孫を残そうとかあんまり考えないんだ。

 でも恋愛とかは普通にするらしいな。

 アキはそういうの全然興味ないし、俺も黒い血と人間の関係改善の方が大切だから全く考えてないけど。


「わ、私のお父さんは鍛冶屋さんをしているの。救出班とか潜入班のために武器と防具を作ったりしてる。頼まれればお鍋とかも作れるって言ってたよ!」


 メーナが自慢そうに胸を張って言った。

 そりゃ凄い。

 もしかしたらアキやコリアスの武器とかもメーナの父親が作ったりしているのかもしれない。


 そのあともそれぞれ沢山質問をしている。

 鍛錬ばっかりでちゃんと話すことはあんまりしてないから会話が尽きない。

 何よりも楽しいな。

 たまには人と話すのもいいかもしれない。




「皆、楽しそうだな」


 アキが洗濯物を取り込んで畳み終わったようで帰ってきた。

 質問しあっていたので流れでアキにも質問している皆。


「アキさんはなんで救出班に入ったんですか?」


 ロキが目をキラキラさせながら聞く。


「義親の影響が強いな。私の義親も救出班だった。不慮の事故で亡くなったけど立派な人だったさ」


「セレメを育てることになった経緯は?」


 今度はレイダの質問だ。


「丁度義親が死んだころに助けた子がセレメだったんだ。族長の計らいで寂しさを紛らわすために助けた子を一時的に預かることになってな。預かるだけで育てるつもりはなかったんだが思った以上に可愛くて手放せなくなり今に至る」


 なんともアキらしい理由だ。

 いつものアキはかっこいいけど、可愛いものをみるアキは可愛くなる。

 可愛いものが大好きなんだ。

 赤ん坊は皆可愛いからな。

 俺はかっこいいって言われたいけど。




 しばらく会話を楽しんだあとアキと二人で夕飯の支度をする。


「あっ! セレメまたパンを丸ごとスープに入れたな!」


「手が滑ったんだよ」


「嘘だ! 今スープを装った皿全部にパンが入っているじゃないか!」


「食べづらくなるだけなんだからいいじゃん」


「はあ。もう入れてしまったから仕方ないが……」


 アキが深いため息を吐き諦めてくれる。

 スープを作った時点でこれは決まっていたことなんだ。

 他の料理も食べづらいけど美味しいをモットーに作った。

 アキの作った料理は普通だけど。


「これ何?」


 ロキがそういって唖然としていた。

 見ればわかるだろう。

 巨大ミートボールだ。

 普通のミートボール五個分で作った。

 五個くらいなら食べれるだろうしそれをまとめても問題あるまい。

 ただ一口じゃないから食べづらいってだけ。

 完璧じゃないか!


「こ、こっちのはどうなってるの?」


 メーナが困惑しながらじっとあるものを見ている。

 そこにはサラダがあった。

 勿論ただのサラダではない。

 ニンジンで馬を作ったりキュウリとミニトマトでラビットを作ったりと様々だ。

 可愛らしいそれらの繋ぎ目には木で作った針がある。

 アキはツマヨウジって呼んでいた。

 それを取りながら食べなければならないんだ。

 面倒くさいだろう。

 でも食べたくなるように様々な種類のマヨネーズを用意している。

 こっちも完璧だ。


「ちょっと変わってるけど美味しそうね!」


 レイダは単純に喜んでくれてた。

 普通じゃないから目でも楽しめているだろう。

 アキは苦笑いしていたけど楽しそうだ。

 皆の反応が嬉しくなり俺も笑う。


「……あんた笑えたのね。初めて見たわ」


 レイダが余計なことをいう。

 そういうのは心の中だけで思えよ!

 恥ずかしくなって俺は笑み引っ込めそっぽを向いた。


「このヘンテコな料理はセレメ作だ。セレメの謎のこだわりの詰まった美味い料理だぞ」


 アキが皆に言っている。

 多分、自分が作ったと思われたくなかったんだろう。


「セレメくんの料理っていつもこんな感じなのですか?」


 メーナがスープに丸々入ってるパンを見て聞いている。


「朝や昼は普通の料理なんだが夜だけ変なんだよな。無駄に手が込んでいるし……。セレメ、何故なんだ?」


 皆でいる時間を長くしたいからとか言えるわけないだろう。

 夕飯が遅れれば寝る時間も遅れる。

 遅れれば長く起きていられるからその分皆とのんびり出来る。


「やっぱり素晴らしく完璧な料理たちだ」


「わからないからな? どう素晴らしく、どう完璧なんだ?」


 勿論アキが任務で疲れていたりするなら普通の料理を作るけどそうでなく俺が夕飯の料理を作るならやっぱりこうでなくちゃいけない!


「言う気ないな? 別にいいけれど。鍛錬尽くめのセレメがこういうお茶目なことをしてくれないと、根を詰め過ぎていそうで怖いから私としては安心出来る。心に余裕がある証だ」


 アキの言葉が予想外で少し驚いた。

 根を詰め過ぎているように見えるのか?

 楽しいからやっているのにな。

 目的もあるけどその過程で嫌になってしまったらお終いだし楽しめているうちは問題ないと思うんだけど。


「それより冷めない内に食べようか」


 アキが言い、皆でお祈りしてから食べ始めた。

次話は5月25日投稿予定です。

次話予告、ロキがセレメに話かけた理由が判明。

セレメ)地味にショックだ……。

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