2話 真似
14日に投稿しようかと思っていたんですがちょっと早めに投稿です
14日にも投稿します
三十分くらいたってからコリアスがすぶりをやめるようにいった。
もっとやっていたかったな。
「その感じだったら将来有望だ。でも五歳だから仕方ねぇけど自分の考えってのが足りねぇっつうか……」
コリアスが口をつぐむ。
そして何かを考えるように顎に手をあててしばらくして頭をかきむしって叫びたした。
突然どうしたの。
怖いんだけど。
「あああ! 考えんのとか性に合わねぇ! おいセレメ!」
「なに?」
「命令に忠実なのは悪くはない。だか自分で考えて行動したり、自分の気持ちの通りに動いてもいいんだ」
やっぱり大人のいうことはよくわからないな。
いやコリアスのいうことがよくわかんないのか。
おれは命令でうごいているわけじゃないのにね。
「友達くらい作れよ。仲間は大切だ」
「剣をうまくつかえるよくになったら作るよ」
「……今はそれでいい」
それからしばらくはコリアスと練習をした。
すぶりのあとはコリアスと剣をまじえる。
コリアスは剣を二本もってたから本物の剣での練習。
コリアスはおれを傷つけないように加減していた。
……悔しいな。
アキとの練習でも思うけどおれはまだまだよわい。
もっとつよくなるなるんだ。
アキが任務に行ってから四日目。
きょうも丘の上でコリアスと練習だ。
コリアスはすごい。
アキもすごいけど魔法のほうが得意っていっていた。
でもコリアスは魔法より剣をつかうほうがすきなんだって。
だからアキより剣のあつかいがうまいような気がする。
おれはコリアスをまねながら剣のあつかい方を学んだ。
「セレメ。休憩にすんぞ」
コリアスがいった。
もうすぐお昼だからごはんを食べよう。
コリアスと一緒におうちに帰る。
そして俺はキッチンでふみ台にのって、ごはんを作り始めた。
「アキはなんてこと教えてやがる。セレメは五歳だぞ。料理を作れる五歳児って……」
コリアスが昨日もいっていたことをつぶやいている。
コリアスのこういうつぶやきは無視していいってことに昨日気がついた。
料理に集中してるふりをしよう。
たぶんコリアスは心のなかで思ったことが口から出ちゃう人なんだ。
ごはんを食べ終えるとまた丘の上にもどる。
それから剣の練習だ。
「そうじゃねぇ! もっと脇しめやがれ!」
「隙を作んな! そんなんじゃあ死ぬぞ!」
コリアスはアキより厳しい。
でもかっこいい。
コリアスが剣をもつとすごくつよく見える。
じっさいにすごくつよい。
だからコリアスの動きをいっしゅんたりとも見逃さないように目をこらしておぼえる。
コリアスからちゅういされたところをなおす。
むずかしい。
でもできるようにするんだ!
「今日はここまでだな。お疲れさん」
コリアスが地面にすわっていった。
おれはごろんとねころんで肩で息をしてる。
きのうよりうまくなってるかな。
オレンジ色のおそらをみながら、剣の練習をふりかえる。
うん。うまくなってる。
だいじょうぶだ。
「セレメ。どうしてそこまで強くなろうとしてんだよ?」
コリアスがおれのそばによってきて聞いてきた。
どうして……か。
そんなの決まってる。
「黒い血のみんなを守るんだ」
「本当にそれだけか? 始めはただ言われるがまま剣を学んでるかと思ったがそうじゃねぇんだろ?」
あれ。なんでばれたの?
アキにもばれなかったのに。
しばらく口をつぐんでしまう。
……別にいいか。
バカにされそうだから隠してたけど、コリアスならバカにしないと思うから話ちゃおう。
「おれは悪夢を倒すよ。黒い血のおれが悪夢を倒せば人間も魔人が仲間だってわかってくれるはず」
「……お前は勇者じゃねぇだろ。それでもやんのか?」
「うん。やる。悪夢よりつよくなる。無理でも勇者と仲良くなって一緒に悪夢を倒すんだ」
「もしアキが悪夢だったらどうする?」
「倒す」
でもアキが悪夢じゃなければいいな。
アキはおれの命を救ってくれたし、育ててくれたから倒したくない。
悪夢だったら誰であれ倒すんだけど。
「……そうか。でもそれができたら黒い血の差別も少なくなるんじゃね? 少なくとも黒い血の子供が生まれてきたら殺す、なんてことはしなくなるだろう」
「そうだね」
おれも、アキも、この村の黒い血の人たちも、産みの親やたくさんの人間に火あぶりの刑で殺されかけた。
おれはおぼえてないけど、アキが赤ん坊のおれを助け出してくれたらしい。
おれのセレメという名前もアキがつけてくれた。
おれには助けがきたけど、全ての黒い血の人に助けがくるわけじゃない。
今もどこかで黒い血の人が生まれて、殺されるているのかもしれない。
そんな人をへらしたいんだ。
それが生き残ったおれの使命だと思うから。
黒い血は、悪夢の使いなんかじゃない!
おれたちは悪夢と同じ黒い血をもっているけど、悪夢とは敵なんだ!
「もしセレメが大人になっても悪夢を倒すんだというなら、俺も手伝うぜ」
一人でやるよりは二人でやったほうが成功するのかな。
「その言葉、忘れないでね」
おれは本気なんだから協力するというなら本気でいってほしい。
だから軽い気持ちで言わないで。
真剣な眼差しでコリアスを見る。
コリアスはおれと目を合わせて、おれと同じように真剣な目をしてくれる。
「おう。忘れねぇさ。約束すんぜ」
コリアスがニッと歯を見せて笑ってくれた。
コリアスはいいやつだ。
アキの友人なだけある。
たぶん信用できる。
だからおれはもう一回忘れないでといおう。
ちょっとちがう言い方で。
「ぜってぇわすれんなよ!」
おれはコリアスの口調をマネしてそういった。
コリアスはびっくりしてたけど、少ししてからケラケラと笑い出す。
なんで笑う?
マネしただけじゃないか。
剣の練習でやったみたいに。
おれがマネしたものは、ぜんぶかっこいいものなんだよ!
「セレメ! お前もカワイイとこあんじゃねぇか!」
コリアスがおれの頭をがしがしなでてくる。
痛い! ちからかげんしてよ!
おれは半泣きになりながらも、しばらくなでられ続けた。
あとおれはかわいくない!
かっこいいにして!
アキが任務にいってから一週間ピッタリで帰ってきた。
いつもはいっていたよりはやく帰ってきたり、おそく帰ってきたりするから、ピッタリはめずらしい。
「ただいま。セレメ。いい子にしていたか?」
「うん! してた!」
本物の剣をつかったこととかは置いておいて、げんきにいってみせた。
おれはコリアスにいわれたとおりにしただけだからね。
「コリアスもありがとう。セレメの世話を任せてしまってすまないな」
きょうも朝からきてくれてたコリアスに向かってアキがいってる。
「世話になったのは俺のほうだと思うぜ。飯も作ってくれたんだからよ」
「セレメが懐いてくれたか。たまにでいいからセレメに会いに来てくれないか? コリアス」
「しょうがねぇな。暇な時は来てやんよ」
アキとコリアスの話をきいて少し不安になる。
ヒマなときにくるってコリアスは言うけどいつきてくれるのかな。
もっと剣を教えてほしい。
「コリアス。もう帰んの?」
ちょくせつ聞いてみた。
「アキが帰ってきたし帰るかな。それともセレメは俺にもっといて欲しいか?」
「剣をおしえてほしい」
「あー。セレメらしい答えだ。今日は暇だから教えてやる。剣がうまくなれば友達を作るんだろ?」
「そうだよ。剣だけじゃないけど」
剣だけじゃなくて、魔法もうまくなってからだ。
守れるようになってからともだちとか作りたい。
アキからきいた話だと、ともだちってとてもたいせつな人のことだから守らないとだめだ。
「じゃあとりあえず素振りからだ!」
「すぶりからだ!」
おれとコリアスは本物の剣をもって、丘にはしっていこうとした。
でもアキに止められる。
「コリアス、セレメ。その剣はなんだ?」
アキの低ーい声がよく聞こえた。
怒ってる。ぜったい怒ってる。
おれは怒られないようにコリアスに罪をかぶせよう。
「コリアスがおれに本物の剣できたえるっていってきてもたされたんだ」
「ほほう。コリアス。子供にこんな危ない物を持たせるとは正気か? 説教が必要だな」
「ま、待て! おいセレメ! 剣で鍛えたほうがいいだろ?」
コリアスが救いを求めてくるけど、おれはみすてる。
コリアスには恩があるけど、アキの説教は悪夢よりおそろしい。
だからコリアスをぎせいにする。
おれはコリアスの勇姿をわすれない!
「剣って重くてきんにくつうになった」
「コリアス! セレメが嫌がっているじゃないか!」
「セレメお前裏切ったな! 子供の癖に悪知恵が働くじゃねぇか!」
コリアスがよけいなことをいってる。
アキの目がぎろりとこっちをみた。
「……セレメ? 嘘は良くないぞ」
これはいけない。
本能がキケンだといっている。
でもおれはうそはついていない。
コリアスに剣をもたされたのもきんにくつうになったのも本当だ。
でもこのままごまかしてたら命があぶない。
おれは悪夢もまけないくらいつよくなるから、今死ぬわけにはいかない!
「ごめんなさい。コリアスにそそのかれてしまいました」
正直にぺこりと頭をさげてあやまった。
「よろしい。腕立て伏せ五百回で許してやろう。コリアスは腕立て伏せ一万回な」
「勘弁してくれぇ!」
そのあとおれとコリアスは腕立て伏せをおこなった。
コリアスは、アキのありがたいおせっきょうをきかされながらの腕立て伏せだ。
腕立て伏せ五百回をおえてからおれよりがんばっているコリアスを応援したくなったので、コリアスの口調をマネして応援する。
「コリアスがんばれ! お前はつよいぜ!」
「おっしゃあ! 頑張るぜぇ!」
コリアスがげんきに腕立て伏せをしてくれる。
さすがコリアスだ。
かっこいい!
「セレメ。強いぜってなんだ? 変な口調をするな。ぜなんて付けなくていい」
アキが悲しいことをいう。
「でもコリアスの口調はかっこいいよ?」
「……コリアス! 追加で一万回だ!」
「なんでだし!?」
コリアスがいっぱい悪いことしたみたいで、アキにいっぱいおしおきされてた。
コリアスが少しかわいそう。
でもちゃんと一万回ともう一万回の腕立て伏せをやりとげていたからすごい!
おれもそのくらいできるようにがんばろう。
「セレメ。コリアスの剣で鍛錬をしたいのか?」
こわくなくなったアキが、おれの目線に合わせてしゃがみこんみそう聞いてくる。
やさしいアキだ。
こういうときのアキにはうそもごまかしもつうじる。
うそをいってもそれを信じてくれるし、うそだとアキがわかっていても怒ったりしない。
だからおれはうそをいいたくなくなってしまうんだ。
すぐばれてうそついたなって怒ってくれるならいいけど、ずっとうそを信じてしまうかもしれない。
それはすごいざいあくかんを感じるんだ。
アキはそれをわかっていて、きいてくるんだとおもう。
「コリアスの剣でたんれんしたい」
おれは正直に今のきもちをつたえた。
アキはおれのことばをきいてからうなずき、少し考えるように目をつぶる。
それからフッと息をはくように笑って目を開けた。
「仕方ないな。今日からは私との鍛錬も金属の剣を使おう。剣は危ないから十分に気をつけなさい」
おれはちからづよくうなずいてみせる。
剣はかんたんに相手を傷つけてしまう。
それはつかう者も例外じゃない。
だから気をつけないと。
ただの木の剣でもあぶないんだ。
木の剣よりももっとちゃんとかんりしてつかう!
きょうのコリアスは腕立て伏せのせいでつかいものにならなくなったから、アキとの練習になった。
コリアスにはまたこんど教えてもらおう。
次話は4月14日投稿予定です。
次話予告、だーくぶれーど! わーお。