マグの処遇と次どうするか
まず結論から言うと、
マグは俺の所有物
とゆう事になった。
「自動人形」とゆう技術がこの世界にはあり、彼女もその扱いとなったわけだが…さすがに超古代の、それも無傷の自動人形となるといろいろ問題が出てくる。
案の定、本来なら偉い学者さん達の元に送られ、いろいろ調べられる…はずだったのだが、
面倒な事にマグには意思があり、そしてハッキリと
「嫌。」
と拒絶したのだ。
営業スマイルを常に崩さなかったエルテさんも、流石に苦笑いだったよ…。
偉い人達の話し合いの結果、いくら自動人形であっても、本人が自分の意思を明確に持ち、更には固辞しているとあっては、無理矢理に連れて行く事は出来ないという判断に落ち着いた様だった。
加えて、俺やリカオン、シュナが報告したマグの戦闘能力から考えるに、無理に連行して暴れられたらひとたまりもない、という意見も出ていたらしい。
こっそりとエルテさんが教えてくれた。
「では、改めてお世話になります。マスター」
「うむ!魔獣王討伐予定パーティーの新たなる仲間!!歓迎するわ!!」
「マスターはヤクモ様です。何を勘違いしているんですか、サラスティーナさん」
「めっちゃ他人行儀じゃないこの子!!」
「はぁぁ…」
ついでとばかりに、俺はマグのマスターにもなっていた。
これに至っては、マグが勝手に言い出した事であり、何故俺がマスターなのかは全く分からん…。
一応ギルドの方から、定期的にマグについては報告する様言われているし…これも後で報告だな…。
〜〜〜〜〜
マグの処遇について決まった次の日。
俺達は取り敢えずギルドの食堂で朝飯を食べながら、これからどうするか話し合っていた。
「とにかく、前回のダンジョン探索で思ったより稼げたんだから、装備を整えた方がいいと思うのよ」
サラスにしてはわりと真っ当な意見が出たな…
「サラスにしてはわりと真っ当な意見が出たな…」
「声に出てるわよ、喧嘩売ってんの?」
「私はそろそろ充電したい」
俺の袖をちょいちょいと引っ張りながら、マグはそう言った。
「充電って。この世界にコンセント…とか無いよなぁ…。
ちなみに今はどれくらいの充電率なんだ?」
「活動限界まであと39時間弱」
2日切ってるじゃん…。
てか、充電ってどうすりゃいいのさ…。
「ジュウデン…て何?」
テーブルを挟んで向かいに座るサラスが、首を傾げて居た。
「あぁっと…つまり、マグにとって電気がご飯なんだよ。
つまり…充電ってのは食事…かな。
取り敢えずそれが出来ないと動かなくなるんだ」
「ふぅぅん…んじゃまたボルトリザードの電気でも食らえばいいんじゃ無い?」
いや、まぁそれもアリかも知れんが…
「マグが腹減るたびにボルトリザードを探すのか?
効率悪すぎだろ」
「う…たしかに…」
サラスは眉間に皺を寄せながら、目の前の皿に盛られた鳥の焼肉を頬張った。
ん?ボルトリザード?
あぁ…そう言えば、あのトカゲの尻尾素材…確かアルジュが説明してくれたな…。
「ボルトリザードの尻尾…発電尾はその名の通り、電気を作り出す発電機関だ。
大抵は複数集めて、大きな施設に設置されてる機械関係に使われるが、
武器として加工すると強力な雷属性を持たせられる。
他にも電気が必要なアイテムの充電も出来るが、その際には電力を落とす為の加工が必要になる。
今は使い道がないかも知れないが、持ってて損はない貴重な素材だ。
大事に使うと良い」
小型のアイテムの充電に使えるって事は、出力を抑えなければ、マグにも使えるんじゃないか?
「よし、ちょっとエルテさんの所行ってくる」
「んぉ?なにかおもひつひたの?」
だからお前は口の中をモゴモゴさせて喋るなよ…。
「まぁちょっとな。2人とも待っててくれ」
「はいよぉ〜」
「分かった」
サラスは既に目線を料理に固定して手をひらひらと振り、
マグは感情の感じられない緑とグレーの瞳をこちらに向けていた。
俺は席を立つと、ギルドの受付に座るエルテさんのもとへ歩いて行った。
〜〜〜〜〜
「んで、ここがエルテさんに紹介してもらった技工士がいる店だ」
「ほぉ〜…ボロい店ね」
失礼だなサラス…。
とは言え…たしかに外観はボロい…。
エルテさんに状況を説明し、ボルトリザードの尻尾を安定した発電機関として加工してもらえる所を紹介してもらった。
イロハギルドからそう離れていない「専門店街道」と呼ばれる大きな道。
道の両側は「武器屋」「防具屋」「鍛冶屋」「アイテムショップ」
更には「八百屋」「お菓子屋」
はたまた「賭場」に「娼館」までほんと色んな店が並んでいた。
その街道の少し裏道に逸れた場所に、紹介された店「パンデル魔具技工店」はあった。
俺は取り敢えず店の扉を開け、サラス、マグがそれに続いた。
「すみませーん。ギルドのエルテさんの紹介で伺ったんですがー」
「んぇ?おぉ!はいはいはぁーい!エルテリオルフェからの紹介って言ったかぁい?」
様々な魔道具であろう雑貨が置かれた棚。
かなり適当に配置しているようで、ただでさえ広くはない店内が、更に狭く感じる…。
…と言うか実際狭い。
店…なんだよな?足の踏み場が無いぞ?
奥の方から声だけは聞こえたものの…姿が見えねぇ…。
声からして多分女性なんだけど…こんな、ある意味ゴミ屋敷レベルの狭い店内に、まさか女性1人かよ…。
「ごめんねぇ〜ちょっと散らかってるけど、ささ!おくにどーぞー」
ちょっとじゃねぇだろ…。
「あ、あのぉ…足の踏み場も無いんですけどぉ…?」
「あぁ…もぅ適当に蹴っ飛ばしてっていいからぁ」
いや流石にそれはどうなのよ…
「そう?じゃ遠慮なく!」
「遠慮なく」
ガシャンゴシャンと盛大に音を立てながら、サラスとマグは言われた通りに、足元の邪魔な雑貨を左右に蹴飛ばしながら奥に進んで行った…。
ちょっと遠慮しようよ…。
「あ、そうそう〜。
そこら辺、ネズミ対策の罠があったりするからーーー」
ばちんッ!!ばちんッ!!
「あいっだだだだだだッッッ!!!」
「あいたー」
仲良く2人ともネズミトラップにやられてらぁ…。
案外サラスとマグの仲が悪くはない、てか気が合ってるのは…お互いそこそこバカだから…とかじゃないだろうな…。