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おしゃべりタイム

マルクスからアルドナ山へ向かうと、

かなり早い段階で採石場が見えてくる。


採石場自体はなにも変哲はないが、

最近発破作業を行った場所で地下迷宮遺跡…つまりダンジョンの入り口が発見された。


入り口の調査を行った学者の見解では、

土砂崩れの影響で入り口が土の中に隠れていた可能性があるとの事だった。

内部調査は、俺たちギルドのメンバーがある程度の危険を排除且つおおよそのマッピングを行った上で、本格的に始まるのだそうだ。


「それじゃぁもう一度おさらいするが、

ガーディアンのローラと、トラップ解除の為にシュナが先頭だ」


まとめ役たるリカオンさんがダンジョン入り口で改めて説明を始めた。


「その次に僕とサラスティーナさん、ナバリ君、そしてサクラさん。

最後尾はアルジュ君に確認してもらう」


それぞれに得意な分野があり、

その関係で前衛、中衛、後衛を分けた形になる。

得意分野の関係もあり、それぞれが特徴的な装備をしている。


ガーディアンと言われるだけあり、

ローラさんは150cmにも満たない低身長ながら、両肩の装甲が巨大で、所持するシールドも背丈の半分以上ある。

人見知り故にシールドを前面で持ち顔半分が隠れている状態なのだが、

両肩の装甲と相まって、正面から見ると小さな要塞だ。


逆に俺やサラス、双剣を装備するリカオンさん、腰に日本刀の様な武器を下げたサクラさんは、

体の重要な部分…つまり、胸部や腰部、前腕や脛を中心に武装はしているが、比較的軽装備だ。


そして、それよりも更に軽装備なのがシュナさん。

昨日会った時とほぼ変わらないビキニアーマーとホットパンツ、その下には全身タイツだ。

強いて言うなら、腰にエプロンを逆に着た様な見た目の、たくさんポケットやファスナーが着いた物を着ている。


トラップの解除役との事なので、多分それ系の道具でも入っているのだろう。


アルジュさんに至っては、ひざ下まである長い濃紺のマントを羽織っており、特に何か装備しているのかは分かりづらい。


「よし、それじゃあ入ろうか」


リカオンさんの合図と同時に、俺たちはダンジョンに足を踏み入れた。


〜〜〜〜〜


迷宮遺跡(ダンジョン)と言っても、手入れがされていたわけでもないため、中は真っ暗であり、等間隔で俺たちは灯りをつけていった。

灯りとなるのは「微光石」と言うこの世界特有の石だ。


昼夜問わず、ぼんやりと淡く光を放っている石で粉末状にしても光を放つ事もあり、様々な場面で重宝されるのだとか。

ちなみに、コレはサクラさんが教えてくれた。


「ね、ねぇちょっとヤクモ…こ、この雰囲気、アタシ嫌いなんだけど…!」


「…お化け屋敷とか入れないタイプか」


「何よその物騒な屋敷!」


お化け屋敷はこの世界に無いわけね…。

てか、世界観的に有るとしたらガチの幽霊屋敷って感じか。


「だいたい…なんでアタシがこんな、暗くてジメッとした所に来ないといけないのよ…」


何となく理解した。

ここに来てから…というか、既に昨日からサラスが静かだったのは、ダンジョン強いてはお化け屋敷耐性が無いからだったわけか。


「怖いのか」


「こ、怖いわけな、無いじゃない!!!」


この動揺ぶり。

図星だな。


「サラスティーナさんは、ダンジョンに入った事がないんですか?」


リカオンさんは、そんなサラスに気を使って声をかけてくれた。

まぁ、魔法陣を使っただけでダウンするヤツが、ダンジョン探索なんてした事は無いだろうな…。


「だ、ダンジョンくらい入った事があると思っていて良いと私は思うわよ!!」


曖昧且つ微妙にややこしい言い方をしているが、

要するに入ったこと無いんだろう…。


「そもそも!なんでダンジョンの探索をギルドの人間がやるのよ!

学者の仕事だと私は思うのよ!!」


「そ、それもそうだよね…」


は〜い、完全にリカオンさんが絡まれ始めた。

まぁいいさ、たまには俺以外の人間と交流しなくちゃな。


サラスとパーティーを組んでからというもの、彼女はギルドの窓口を除いて、俺以外の人間と絡んでいる姿を見ない。

エルテさんにそれとなく聞いてみたところ、俺と出会う前から、ギルド内でも浮き気味で、逆に絡みに行こうとする人間も居なかったのだとか。


まぁ「魔獣王」倒すとか言ってればな…。


そもそも、その「魔獣王」とは何か?というか話なんだが…。

サラスやエルテさんに聞いてみたが、

サラスは「魔獣の王様よ!」としか言わないし、

エルテさんからの説明も「名前だけが知られる魔獣の頂点であり、文献にその名が残っているのみで伝説や空想の産物レベルの曖昧な存在」とかであり…


正直なんとも言えない…。


「サクラさん。ちょっと質問してもいいですか?」


「なんでしょう?」


「サラスが目標にしてる「魔獣王」について聞きたいんですけど…文献に名前だけがある存在、だとか?」


「そうですね…。

様々な国で語られる、各国独自の建国神話などに似たような存在が書かれているんです。

大陸内の国々で記述が似ているだけならまだしも、東方の海向こうの国でも似た記述があるのです。


それが「魔獣王」です。

ただ、外見などの記載も無く、その名前だけが共通していると言う不思議極まる存在です」


サクラさんはやたらと博識で、聞いたことをほとんど答えてくれる。

そのサクラさんでさえ、概要を掴みきれてない存在。


・・・なんか、面白味が薄れたなぁ。


「魔獣王とは…」


不意に後ろのアルジュさんが口を開いたせいでビックリしたわ。


「…おそらく、この世界に「魔獣」と言う存在を生み出した張本人的な存在だと考える説もあり、

それほどまでの魔法知識があるとすれば、不老不死の肉体を得て、未だにこの世界の何処かに息を潜めているとも言われている」


「なるほど…んじゃ本当に曖昧な存在なんですね…」


そこまで話したところで、ある程度開けた場所に着いた。

入り口からまっすぐと進み到着したこの場所には、その先3つの通路が続いている。


「この先は分かれ道みたいだし、ちょうどいい頃合いでもある。

少しここで一休みしよう!」


「それもそうね!このアタシも、アナタの考えに賛成だわ金髪ロリコン!」


おい、サラスが変なアダ名でリカオンさんを呼んでるぞ。

リカオンさんの方はというと、何とも微妙な表情で聞き流していた。

反論した方がまた絡まれて面倒なのが分かったんだろう。


しかしまぁさすが迷宮遺跡。

曲がりなりにも「遺跡」であり、先ほどから壁や柱、床に天井、そのどれからも精巧な装飾技術が見てうかがえる。


「これって大体どれくらい前の遺跡なんだ?」


「んん〜そうだねぇ…学者のお偉いさん達が入り口を調査した段階だと、少なくとも500〜700年くらい前に入り口が塞がったらしいって見解だったけど、

出来た時代自体は…ウチの見立てだと7000〜8000年くらい前かな?」


俺の呟きに返して来たのは、巨乳のビキニアーマー女子のシュナさんだった。


「そんなに…ですか」


「ま、大概の迷宮遺跡(ダンジョン)は4000〜5000年前だって言われてるけど、

今まで入って来た迷宮遺跡(ダンジョン)より、ここはかなり古い感じがするもん」


シュナさんはアルジュさんの方を向く。


「アルっち、どんな感じ?」


アルジュさんはと言うと、3つの通路の入り口前に、それぞれお札の様な物を置いていた。


「シュナさん…アレは何を?」


「ああ、あれはね「霊符」を使った占いみたいなものかなぁ?

ウチの分野じゃないから詳しく説明出来ないんだけど、この先の通路の吉凶を調べてるって感じ」


「アルジュさんって…占い師的なものなんですか?」


「ちょっと違うかな。

アルっちは「魔具師(アイテムユーザー)」なんだよ」


「僕らのギルドにも数名居ますね。

結構汎用性が高いので、いろんなパーティーに人気なんですよね」


リカオンさんも話に入ってきた。


ちなみにサラスは、

ローラさんサクラさんと共に紅茶を作っていた。


緊張感ねぇな…。

ローラさんと共にサクラさんの紅茶講座を聞いて、律儀にメモまで取っている。

意外だ…。


そんな事を考えている内に、アルジュさんがこちらを向いた。


「右は魔獣が徘徊している。通路は細く入り組んでいる模様。

真ん中も魔獣が徘徊している。通路はそれなりに広く、先にここより広い空間がある模様。

左は魔獣が停滞している。地下に続く階段がある模様」


・・・。


魔獣しかいねぇじゃねぇか…。

吉凶どころの話じゃないし。


まぁ空間も把握出来るのは良いかな。


「リカっち、どーする?」


「そうだね。

僕個人としては、どこも魔獣が居るのなら広い空間の方が戦闘しやすいんだけど…」


「ウチは隠密系だし、サクラっちの戦いはそこまで動き回らない感じだから狭くても良いんだけどねぇ…」


「ナバリ君はどうだい?」


「ああ〜…俺はそもそも戦闘が苦手ですから…。

まぁウチのサラスの得物がハンマーだし…広い方が良いのかも知れないけど…左の「魔獣が停滞してる」「地下への階段」ってのも気になるんですよねぇ…」


俺ら3人はお互いの意見を聞き、「う〜ん」と唸る。


パーティー毎に得意分野が分かれている。

それに毛色も思想も違うのだ。


それに昨日揃った様な即席パーティーだ。

全体でしっかりと機能するとは考えにくい。


まぁ協調性のある人達が殆どだが、爆弾は完全にウチのサラスだ…。

何かやりかねない…。


となると…結論は1つだ。


「それぞれの通路に別れようか」


提言したのはリカオンさんだった。

ただ、シュナさんも同じことを考えていたのだろう。

「おっけー!」と、すんなり受け入れていた。


「それじゃ、僕たちは真ん中を。

シュナさん達は右、ナバリ君達は左、という事で良いかな?」


俺とシュナさんは頷く。


「よし。

なら、1時間後にここに戻ってくる事にしようか。

さすがに未知のダンジョンで別れて行動するのは、出来る限り避けるのが本来の鉄則だからね」


俺たちは、それぞれのパーティーメンバーの元に戻り、決まった事を報告した。


「あら?ここでみんなとはお別れなの?」


「1時間だけな。俺たちは左の通路に入って、地下への階段を調べる。

途中で魔獣が居るらしいから、その時は任せるぞ」


「ふん!誰に向かって言っているのかしら!!

このアタシが魔獣を華麗に美しく葬る様を、存分に見せてあげるわ!!」


お前の武器はハンマーだろ…。

魔獣の頭潰して、真っ先に血みどろになるのは何処の誰だよ…美しさよりも見た目のショッキングさが強いわ。


「はいはい、それじゃよろしく頼むぜ」


さて…ダンジョンの本格的な調査が今から始まるわけだな…。

今のところ、まっすぐ歩いて喋ってただけだからな…。

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