初顔合わせは大事かな
「やぁ…ユズさん…はぁ…はぁ…」
「あら、ナバリくん。それにサラちゃん、いらっしゃい」
俺は魔法陣からサラスを引きずりつつ、ユズさんの家にお邪魔した。
「すみません…お言葉に甘えて…休ませて貰いに来ました…」
「全然良いのよ。
それに、この間商人さんから魔力回復用の「リモナ」と言う魔法薬を買っておいたから、
よかったら飲んで」
ほんと天使か。
出された「リモナ」は、なんと言うか見た目としては若干黄色味がかった水のような見た目で、
味はもはやレモネードだった。
俺もサラスも、元から魔力が少ないおかげか、一杯飲んだだけでかなり疲労が無くなった。
ある程度休ませて貰った後、ユズさんに昼食を作ってもらった。
ほんとにこの人は、とても良くしてくれて…天使だな。
「今日もお仕事ですか?」
「そうよ!このヤクモが選んできた依頼を、このアタシが仕方なく同行してあげているの!」
ぶん殴るぞ…。
「まぁ山の麓のマルクスと言う街が集合なんですが、
一度顔を出しておこうかと思いまして」
「あら、そうなの?嬉しいわ」
依頼は明日だしな。
取り敢えず、夕方まで俺たちはユズさんとお喋りした。
マルクスに出発する際ユズさんが、小瓶に詰め替えられた「リモナ」を何個かくれた。
ほんとにもぅ…かなりありがたいよ…。
この恩は確実に返さなきゃな。
〜〜〜〜〜
ユズさんから貰った「リモナ」のお陰で、魔法陣使用後に行き倒れることもなく、
どうにか集合場所となる居酒屋兼宿屋に到着した。
「やぁ、君たちがイロハからのメンバーかい?」
サラサラのブロンドヘアに柔和な表情のイケメンが声をかけてきた。
「あぁ、俺は隠 八雲。こっちが…」
「アタシがイロハギルドの「魔獣王」討伐最有力候補に立候補する者!!!!
サラスティーナ・アプリコット様よ!!」
謙虚なのか威張ってるのかよく分からん…。
コイツに「リモナ」を飲ませるのは失策だったか…?
「よろしくねサラスティーナさん」
さすがイケメン。
軽くスルーした。
「僕は「ワカヨンギルド」のリカオン・フルクリッター。
みんな既に集まっていてね、奥で夕飯を食べているよ」
リカオンさんに案内され、俺とサラスは奥の大きな席に向かった。
ふと見ると、リカオンさんの腰には左右に剣が下げられており、二刀流の剣士である事が見て伺えた。
今の俺は、取り敢えずギルドでレンタルしている両手剣を使っているが…やっぱり自分に合った武装を見つけていかないとなぁ…。
「みんな、イロハギルドのメンバーが到着したよ。
彼がナバリ・ヤクモくん。彼女がサラスティーナ・アプリコットさんだ」
口調から察するに、彼がこの合同クエストである程度の指揮を取るのだろうか?
まぁ少なくともまとめ役なのだろう。
丸い大きなテーブルには既に幾つか料理が並べられており、
そこに座るメンツは各々に好きな物をたべていた。
「まずは、僕と同じ「ワカヨンギルド」所属で、僕のパートナーであるローラ・ライノセラス」
1番手前に座っていた女性がビクッとして、ゆっくり振り向いた。
メガネを掛けており童顔であり、
俺の地毛より真っ黒な長髪を緩く1つにまとめている。
「ろろ、ろ、ローラ・ライノセラスです、はい」
人見知りか?この人。
なんとも華奢で小柄な体つきであり、下手するとサラスより小柄か、俺より年下か…。
「彼女は僕と2人でパーティーを組んでいてね、とても優秀な「ガーディアン」だよ」
ガーディアン…って事は防御担当か?!
この体躯で?!
でも、まぁリカオンさんが防御を捨てた様な装備である双剣ならば、相方が盾役なのは道理か…。
「それに彼女はとてもちっちゃくて可愛いんだよねぇ〜!いや〜ほんと愛玩対象がパートナーなんて僕は幸せ者だよぉ〜!」
そう言うとリカオンさんは人目も気にせずローラさんの頭を撫で始めた。
柔和な表情は、もはや柔和とかそんなレベルを超えて緩んでいる。
「り、リカオン…み、みんな見てるから〜」
顔を赤らめ下をうつむくローラさんを見て、まるでどっかのムツなんとかゴロウさんの様に撫でくり行為に拍車をかけるリカオンさん。
「そんな顔も可愛いよ〜しゃしゃしゃしゃしゃ!!!!」
確か、ペットの犬をこんな感じで愛でてる友達が1人いたな…。
思わぬところで元の世界を思い出した俺に別の女性が声をかけてきた。
「リカっちはただのロリコンだからねぇ、
見て見ぬ振りでいいと思うよ」
やたら軽装備で、もはや衣服と呼んでいいのか分からない服装の女性だ。
ただ、肌の露出は多いわけではない。
全身タイツでも下から着ているのか、ビキニのような胸当てとやたら際どいホットパンツ以外は、黒のピッチリとした伸縮性に特化してそうな生地で肌を覆っている。
少しボサボサの真っ赤なショートカットも相まってボーイッシュな印象を受ける。
あと巨乳。
「あ、そうそう!ウチはチリーヌのシュナ・フェルミ。
よろしくネ!ナバリっち!」
「よろしくお願いします」
ふと、サラスが静かな事に気が付いてそちらを見た。
「・・・なにしてんの?」
「いや…世の中…不公平だなって…」
見ると、自分の胸に手を当て、シュナさんの巨乳を凝視していた。
…気にしてるのか。
別に貧乳とは言わないが…うん。まぁいい。そっとしとこう。
「んで!コッチがウチのメンバーのアルっちとサクラっち!」
適当と言えば適当な紹介をシュナさんはしてくれた。
「アルジュ・クロスロード…」
「サクラ・ハーネスティです」
「アルっち」ことアルジュさんは、
寡黙そうな人で、濃紺のマントを羽織り手入れをしていない様な髪が目を隠してしまっている。
サクラさんの方は、マジメそうな印象があり、
薄いピンクの髪を、高い位置でポニーテールにしており、服装もどことなく和風な印象があり、
なんとなく日本を思い出した。
「まぁまぁ!紹介も終わったし!
取り敢えず座ってご飯食べよう!!」
この場で1番フランクなシュナさんにすすめられ、椅子に座った。
俺たちも含めて、この7人で明日は迷宮遺跡を探索するわけか…。
不安が半分、好奇心や興味から来るワクワクが半分。
そんな感じの心持ちで、俺はテーブルの上の皿に盛られた肉の塊を自分の取り皿によそった。




