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死ななきゃ始まらないのがお決まりでしょ

その世界は、どこまでも澄んだ青い空が続いていた。


余りにも唐突だった為に、記憶は若干曖昧だ。

けど1つだけ理解していることがある。


「俺…死んだんだな」


萌える芝生の香りが鼻をくすぐるので、おそらくここはだだっ広い草原か何かなんだろう。


ゆっくりと、起き上がる。


やはり、どこまでも続く雄大な草原。

そよ風は気持ちが良く、ところどころに咲く小さな花が可愛げに揺れる。


俺…(なばり) 八雲(やくも)の人生は余りにも面白味がない物だったな、と物思いに耽る。

まぁあえて面白味があったとしたら、神社の生まれ故に付けられたのか…この余り聞き慣れない名前で、よく稀有の目で見られたくらいか?


とは言え、イジメがあったとかでもないし、

クラス替えで初めて同じクラス担った人に「珍しいね」と言われる程度だ。


高校に上がった頃には大分慣れていた。


「にしても…ここが「あの世」って事か?」



授業終了後の清掃時間。

俺は自分の担当場所である階段の掃き掃除をしていた。

清掃時間なんて退屈な時間に加え、

近くのレンタルショップで借りていたマンガの期日が今日だったので、夜遅くまでそれを読んでいたが為に、眠気はピークに来ていた。


眠すぎる。

帰ったらまず寝よう。


そんな事をボーッと考えながら箒をサッサと動かす。


「コウイチ!強過ぎ!!」


そんな大声が聞こえ、そちらに顔を向けると、

抗えない衝撃を全身で感じた。


あ、やばい。


なんて思った時には遅かった。

足の裏に床の感覚はなくなり、

代わりに全身には浮遊感があった。


周りの景色がスローに見えた事と、それにより見えた光景で察しがついた。


掃除時間なら何処かしらに現れる「サボって遊ぶヤツ」が、かなり近くで遊んでいたらしい。


目の前で青ざめている顔だけは知っている同学年の男子の手には、丸められた雑巾があり、

その奥には投球フォームのまま唖然としている別の男子。


多分、雑巾でキャッチボールでもしていたのだろう。

声から予想するに、奥の男子が強く投げた雑巾を追った目の前のコイツが、

不本意ながら全身全霊のタックルを俺にクリティカルヒットさせた、ってな感じか。


走馬灯と言うものなのだろうか?

周りの景色は尚もスローモーションのままで、ゆっくりと、しかし確実に俺の体は頭から階段の踊り場に向かっているのを感じた。


これだけ多くの状況を理解できているなら、回避できるだろうとも思うが、

これがまた意地悪な事に、自分の動きもスローである為に、回避なんて不可能とゆう、バッドエンドまっしぐら状態。


打ち所が悪いと死ぬわ。

いや、このままの角度だと確実に死ぬわ。


ん?

まてよ。


死んだらあのマンガ、誰が返してくれるんだ?

まぁ親がどうにかしてくれるかな。


瞬間、俺の後頭部に前代未聞の痛みと衝撃が走り、

意識は完全にブラックアウトした。

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