家族
千鶴がいなくなった後、あの叫び声で目が覚めた私達は家に帰ることにした。
「……」
……にしても、草とか木とか、焦げすぎ。小説の中のリイミスは、薬草を探して狼が沢山いる山に入ったんだっけ?これだけ焦げるなら、確かにさっきみたいな方法だと困るし、やっつけるというか追い払うのに失敗するのも納得かも。
「……」
え?じゃああの虫はどこから来たのかって?木の、燃えてない上の方の枝だから落ちてきたんだと思う。
「……」
鈴奈のご飯は……ご飯になるようなものがもう無かったから我慢してもらった。
「……」
……。
「……」
……。
「……」
……。……誰も何も言わないのは何故?鈴奈まで空気読んでるのか何も言わないし。……いや、もしかして寝てる?
「……ふ、ふんふんふーん、……ふふふんふー……」
「「……」」
……気まずい。……あ、分かった、この人達、私が本当の娘じゃないってことを言っちゃったことを気にしてるのか。
「……えーと、あのさ、私のことは気にしないでね。世話するのが嫌になったんなら、どこか別の場所に行くから。」
またどこかで女優でもしよう。それが無理なら、どこかの会社に……あっ、入れない!しまった、私、三歳だった……!どうしよう。
「り、凜河……リイミス様、そういうわけでは……!」
「わ、私達が、リイミス様のことを嫌になるなんて、絶対にありえませんっ!」
うーん……お父さんは本当にそう思ってるのかもしれないけど、お母さんはどうなんだろう。確か小説では、お母さんは補助金目当てで私を育てていて、それを知ったお父さんに反対されて、お父さんを殺してしまうんだよね。しかも、リイミスのせいで死んだと思い込ませて、自分や鈴奈の都合のいいようにリイミスを操ってたはず。……だから上手く自分の思い通りに動かなかったら嫌になるんじゃないかな。小説の中で、この人とメリーザが会う場面があったんだけど、リイミスと勘違いしたメリーザに傲慢な態度で接してたし。
……でも、ここは小説の中とは違うところもあるから、お母さんも小説とは違うって信じたい。
「それなら、何か言いたいことがあったら、前みたいに、何でも遠慮なく言ってね。私が王女だってことは忘れて、ずっと私のお父さんとお母さんでいてね。」
……絶対に、前世の親との関係みたいにはしたくない。今度こそ、家族と仲良しでいたい。
「「……うん。」」
でも、元に戻るまでには時間が必要そうかな……。