亀山千鶴④
結局私は、炎だけで狼を追い払った。とても疲れた。……主にこの女子とのやり取りで!
「日崎さーん、起きてくださーい。朝ですよー。……あ、鈴奈ちゃん、おはよう。はじめまして、私、亀山千鶴っていいます。よろしくね?」
「……マンマー」
「……この子、私が何言ってるのか分かってるのかなぁ?」
「鈴奈は賢いからきっと分かってるよ~。あー、ご飯どうしよう……」
「……三歳児だと思うと違和感がー……」
「三歳児?どこにいるの、そんなの。」
「私の本体と、リイミス様ですよ。」
そっか、忘れてた。……って、何でこの子が私の年齢知ってるわけ?……あ、双子なんだっけ?
「あ、そういえば、リイミス様の前世の名前って何だったんですか?私は亀山千鶴です。……でした。ペンネームは千歳川鶴亜でした。」
「ふーん、ちゃんと見てなかったから知らなかった。私は橋村恵那子。女優のときの名前とほぼ同じでしょ?」
「あ、ごめんなさい、顔は知ってるんですけど、名前分かりません。私、名前覚えるの苦手で……」
「……子って文字を消すだけだよ。」
「あ、そうなんですか。」
……私、自惚れてたかなぁ?自分では結構有名になったと思ってたんだけど……。
「……あ、おはようございまーす、狼はリイミス様が夜のうちに追い払ってくださいましたので、帰りましょう。」
「え?……うん……うん……おやすみ。」
あ、お母さん。お父さんはまだ寝てる。……私も寝よっかなぁ。
「あっ、二度寝しないでください。え、リイミス様も寝るんですか!?起きてく……ひっ!で、出たぁ~っ!!」
「「「え?」」」
今度こそ幽霊?……あれ、何もいないけど?
「{嘘やん!私が作った世界やのに、何でおるんっ!?ほんまありえへん!!……っ、ひいいいいいいぃ!……え?ちょ、嘘やん!なっなな、何でこっち来るんよおぉっ!?いっ……ぃいやあああああああぁ!}」
あ、日本語だ。あ、泣いてる。あ、どこかに逃げていった。……でも、日本語にしては何かおかしくない?
「「フィルフェ人?」」
フィルフェ語というのは日本語とほぼ同じ言語。……というか日本語そのもの。
「……あ、分かった、あれって関西弁だ。」
「「関西弁?」」
「え?な、何でもない。」
……いつの間にかお父さんも起きてる……いつの間にかじゃなくて、千鶴って子が叫んだときだよね、きっと。
「……きゃっ、虫!」
「「え?」」
そこにいたのは、たった一匹のしゃくとり虫。……成る程、あの子、泣くほど虫が嫌いだったのか。