第8幕 ある村での依頼(前編)
「いよし、着いた!」
シヴルはそう言った。
ここは実りの村プンク。ヴィアスとここから南にある港町とちょうど中間地点にある村だ。
ヴィアスと港町の中間地点、ということで村ではあるがそれなりに栄えている。
周囲を見渡せば、旅人やら衛兵やらが目に入る。
朝早く、宿から出たシヴルとリティはお昼前にここに到着した。
「どうします?少し休んでいきますか?」
リティの言葉に、シヴルはんー、と唸った。
「そうだなぁ。今日中には港町に行きたいし・・・少し休んでから・・・」
「うわあああああ!!!すっごーーーい!!!」
突然の歓声に、シヴルは最後まで事を言えなかった。
「な、なんだぁ?」
シヴルは周囲を見渡す。
「あ、あれ見たいですよ?」
そう言ってリティが指さした先に、人だかりができていた。
よく見ると、ほとんどが子供のようだった。
「なんだろな、あれ。」
「行ってみましょう!!」
2人はその人だかりへと向かった。
「はい、種も仕掛けもないこのスカーフ・・・。
こうやって何の変哲もないシルクハットに乗せると・・・?
はい!!」
スカーフを退かすと、シルクハットの中から、ポンと音を立てたくさんの風船が飛んでいく。
「わーーーー!!!」 パチパチパチパチパチ・・・・
「さらに〜・・・はい!!」
手に持っているステッキで、こつんとシルクハットを叩くと
今度はたくさんの鳩が、シルクハットの中から飛んで行った。
「おおおおーーーーーーーーー!!!!」 パチパチパチパチパチ・・・・・
そして今度は、子供たちにシルクハットの中を見せるようにした。
そして、それをさっきのスカーフで隠す。
「トドメに・・・はい!!!」
スカーフを退かすと、中からたくさんの飴玉が勢いよく飛び出した!!
「わああああ!!」
子供たちが一斉に飴玉に飛びかかった。
「そんなにあせらなくても、まだまだあるぞ〜!」
と言って、男は今度は手からロリポップを出した。
それを見た子供たちは、飴玉を持った手を突き出して
「ちょーだい、ちょーだい!」とせがんだ。
「はいはい、どうぞどうぞ〜。
・・・・・これにてマジックショーは終了です! どうもありがとうございましたー!」
大きな拍手が起きた。 手品師はそれを丁寧に礼で返す。
前に置いといた箱には多くのおひねりが入っていくのがわかる。
どうやら手品師によるマジックショーのようだった。
「わー・・・すごいすごい!」
リティも観客と一緒に拍手をした。
「マジックショーか。前に孤児院の子供たちと見に行ったが、これもすごいな・・・。」
シヴルも感嘆の声を上げた。
「私、マジックショーなんて初めて見ました! 本当にすごいんですね!」
リティに浮かぶ顔は、満面の笑みだ。
「そっちでは、マジックショーなんて見せてくれなかったのか?」
そう言うと、リティは「ええ」と言った。
「『白い孤児院』は、子供が遊べるものがすでに用意されていて、
定期的に新しい物が増えていきましたけれど、
マジックショーとか外部の者を招くようなことはすることはなかったんです。
兄さんや子供達にも見せてあげたかったなぁ・・・・。」
さっきの満面の笑みがみるみると寂しげな笑みになってしまった。
マズイ、やっちまったか?
「あ、あのさ・・・・」
「お客さん、どうかしたか?」
「うおっ!!?」 「ひゃっ!!?」
突然声をかけられた。この声は。
「もしかして・・・楽しくなった、か?」
マジックショーをしていた手品師である。 少し困ったような表情をしている。
「あ、いえ、そんなことありません!楽しかったですよ!!」
「ああ、全然楽しかったぞ。」
と言って、シヴルはポケットをまさぐり、お金を数枚、男に渡した。
「よかった。楽しんではもらってないぞと思ったぞ。」
手品師は喜んでくれたようだ。
「えらい営業慣れしてるな。ショーの顔とはえらい違うぞ。」
「仕方ないだろう。無愛想なマジックショーなぞ、見ても面白くはないだろう?」
「まぁ、それもそうだな。」
手品師の言い分に、シヴルは納得した。
無愛想なマジックショーなんて想像したら、何か不気味である。
「・・・で、そっちはなんだ? 観光にでも行くのか?」
「え? ああ、まぁな。」
ほんとは違うけどな。
シヴルは心の中でそう付け加えた。
「こんな魔物がウジャウジャ出るこの最中、
観光なんて呑気な奴らだな。おまけに男女二人とはな。」
「うるせぇ、ほっとけ!!」
思わず赤くなったシヴルを見て
手品師はクク、と笑った。
「んじゃ、まぁこの先の旅路も気をつけろよ。
死んでしまったら元も子もないぞ?」
「わかってるって。そっちもな。」
「ふ、その言葉、ありがたく受け取っておく。
・・・じゃあな。」
そう言うと、手品師は去って行った。
二人は結局、今日はこの村に泊まることにした。
「素敵な人でしたね。あの手品師さん。」
「俺たちに比べて世渡りが上手なだけだろ?
なんせ、俺たちは世間知らずと言ってもいいくらいのもんだからな。」
「ふふ・・・そうですね。」
リティは思わず笑った。
こんなに笑ったの久しぶりだな・・・・。
孤児院にいた頃は笑っていても、いつ来るかわからない恐怖が待っていて
そしていつ笑えなくなるかで、震えてしまって・・・・・・
そういえば、今もあの孤児院で
兄は、そしてみんなは今も・・・・・・
「あ、リティ!!危な・・・」
「・・・え?!」
リティは自分の注意力の鈍さを一瞬恨んだ。
ドン!!!
間に合わなかった。
「きゃっ!!!」 「どわっ!!!」
リティは歩いている人とぶつかってしまったのだ。
ぶつかった二人はふらつきながらもなんとか転ばずに済んだ。
「ご、ごめんなさいっ!!考え子としてて・・つい・・・!」
鼻に当たったのか、リティは鼻をさすりつつそう言った。
「いや、こちらも考え事をしててな・・申し訳ない。」
リティにぶつかった人物―――少年、いや青年はそう言った。
見た感じは歳はそんなに離れていなそうだが、少年よりは青年と言ったほうがしっくりくる。
だが、大人のような口調。そしてその身体つき。
歳は離れていないが、まるで大人のようにも見える・・・といったところか。
悪く言えば・・・・・・・・・・・・・老けている?
って、そんなことを分析している場合じゃない。
「悪かったな。考え事邪魔して・・・・。」
「・・・それは、謝っているつもりかい?」
「?・・・そう、だけど。」
シヴルがそう言うと、青年は笑った。
「いや、そういう風に謝るような奴初めて見たな、と思ってな。」
「な、なんだよ・・・なんか人を莫迦みたいに・・・・。」
「そんなことない。君のような人物を初めて見ただけ。
それだけのことさ。」
「は・・・はぁ・・・・。」
莫迦にしてるのかしてないのか、いまいちよくわからない。
あちらはそんなつもりは更々ないようだが。
「ともかく、邪魔してすまなかったな。」
「本当にすみませんでした・・・。」
「それはもういいさ。
・・・・それはともかく・・君たちは旅人かい?」
「え?まぁ・・・一応。」
シヴルはとりあえずそう答えた。
突然何を言い出すのだろうか?
「君たちがよければの話なのだが
・・・少しこちらの仕事を手伝ってはくれないだろうか?」
「仕事・・・です、か?」
青年はああ、と言った。
「ここから少し北西の方にある塔のことを知ってるか?」
「ここから北西の方って・・・『古の塔』のことか?
大昔に・・・確か儀式事かなんかで建てられた・・・。」
「そう、その塔だ。
実は最近その塔に魔物が出没したらしくてな。
つい先ほど、この村の村長からその魔物を討伐してほしいと依頼された・・・。」
なるほど
「つまり、一人だとやや分が悪いから討伐を手伝ってほしい、ってことだな。」
「そういうことだ。」
そういう事だったら納得はできる。
だけど
「なんで俺たちなんだ?」
シヴルのその言葉に、青年の顔が少し曇った。
沈黙が走る。
・・・やがて、青年は口を開く。
「・・・理由を話したら、この依頼を手伝ってくれるのか?」
「・・・・返答次第だけど、な。」
再び、沈黙が走った。
「・・・君たちが旅人でなければ
手伝ってくれ、なんて言わなかった。
・・・・では、ダメか?」
その返答にシヴルはため息をついた。
「・・・わかった。今はそれだけで充分だよ。」
「では、手伝う、ということで。」
「いいよ。・・・リティは?」
突然そう問われた。
「え?!あ、は、はい、大丈夫です。」
「・・・じゃあ、今日はもう行くには遅いから、明日でいいだろ?」
「ああ。では明日の朝、村の入り口で待ち合わせることにしよう。
・・・そういえばまだ名乗っていなかったな。
私の名はディクロス。・・・ディクロス・ベルティヴェスだ。」
「・・・シヴル・ストラヴィジュ。
で、こっちはリティ・カルティネージ。」
「シヴルとリティか。短い間だが明日はよろしく頼む。
では、な。」
ディクロスはそう言うと、去って行った。
「・・・ごめんな。」
ディクロスとのやり取りから少しして、突然シヴルは言った。
「え?何がですか?」
「依頼。勝手に引き受けて。」
ああ、そのことか・・・。
「大丈夫ですよ。
もし、私があなただったら同じことをしていたでしょうし。
兄は・・・きっと大丈夫だと思いますから。」
「・・・そっか・・ありがとう。
んじゃ、明日は頑張るとしますか!!」
「ええ!!」
そう言い合うと、二人は宿へ向かった。
リティが先ほどのシヴルとディクロスのやりとりの真の意味を知るのは
まだ先の話である。
おはこんばんにちは。真王です。
前回から一カ月以上も経過しております・・・。
パソコン壊れるわ、テストはあるわ、ネタは出てこないわ・・・・。
その結果がこれか、というわけですね。とほほ・・・・(T_T)
一応、この話はこれから先の伏線としております。
どうでもいい感じの伏線ですが。
きっと気づいたとしても、ああこのことか、という程度でしょう。この話自体無駄に長いですしね・・・。
また次も読んでもらえたら嬉しいです。 では!!




