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BRAVE OF FANTASM  作者: 真王
29/33

第28幕 漂流少年少女

突然だが

「どうする?」

「どうしよ?」

「どうすんだよ」

エンゼットに続き、シヴルとミューゼが続いて言った。

悲しき犠牲を越え、『白い孤児院』を飛空機械で脱出したシヴル達。

だが今現在、彼らは

「あ、魚が跳ねた…」

どういうわけか

「あー…潮風が身に染みる」

海上で漂流していた。


それは脱出直後の飛空機械内部に遡る――――



「うわああああああああああああああああ!!!!!」

リティはその場で崩れ落ち、普段の彼女とは思えぬ雰囲気で泣き始めた。

先ほどまで通信用のスピーカーから聞こえていた兄の声は、もう聞こえない。

ただ、ザー、というノイズが鳴り響きだけだった。

「リティ…」

シヴルはリティの肩を抱いた。

それでも彼女はお構いなしで泣き続ける。多分、シヴルが肩を抱いた事すら気づいてないだろう。

「(こういう時…なんて言ってやればいいんだよ…)」

シヴルは泣いているリティをただ見ることしかできなかった。


――――――ガクンッ!!


突如、景色が揺れた。いや違う、飛空機械が揺れ始めた。

「な、何だ?!」

エンゼットが揺れで転ばないよう、踏ん張りながら言う。

「わ、わからない! 一体どうしたってのよ!!」

ミューゼは操縦席のモニターを見た。

モニターにはこう表示されていた。


≫≫≫Warning!!

      燃料不足!!

      このまま、燃料を補給しなければ墜落の可能性があります。

      ただちに燃料を補給してください。


…………

「燃料が…ないって」

ミューゼがぽつり、と言った。

「それって…つまりアレだよな?」

「ああ、アレだな」

「アレですねぇ」

…………


「全員、耐衝撃準備ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」

その瞬間、シヴル達の飛空機械―――燃料を失ったそれは、それはもうあっさりと重力に負けた。


「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」


シヴル達の悲しみが―――いや生命の危険を察するその悲鳴は

リティとは別の全く違った意味で虚しく空に響いた。



そして現在に至る。

咄嗟にミューゼが緊急着陸システムを打ち込んだらしく、何とか海上に緊急着陸できたらしい。

あの揺れでよくそんな事ができたものである。

そのおかげで死の直面は免れたようであるが結局の所、色んな意味でヤバイ事には変わりない。

「もって3,4日分だな」

中をくまなく調べたエンゼットがそう言った。

非常食や水が搭載されていたらしく、自分達の元々持っていた食料を足してもせいぜいその程度らしい。

マジでどうしよう…。

シヴルは思った。

確かに今の状況もヤバイであるが…

「(こっちもこっちで、なぁ…)」

シヴルはちらり、とリティを見た。

彼女は自分達から離れ膝を抱えうずくまり、じっ、と海面に映る自分の姿を見ているようである。

「(無理もない、よな…)」

唯一の家族であった兄の死。

今は何とか落ち着いているが…先ほどの事を思おうと決して立ち直れたとは到底思えない。

彼女を立ち直らせる事は今の状況を打開するよりずっと難しいかもしれない。

シヴルは思わずため息をこぼしそうになった。

…とにかく、今はこの生死に関わる状況をどうにかしなければ…。

「そもそも…ここ、どの辺なんだ?」

「そうだな…脱出から緊急事態が発生してからそれほどの時間は経過していなかった…

 つまりまぁ陸からはそれほど離れてはいないだろうが…恐らく戻るのは無理だな」

「だよなぁ…」

シヴルは周囲を見渡した。

周りは陸すら見えない、まさしく海のど真ん中だろう。

黒煙を今だ上げ続けているであろう『白い孤児院』のあった方角ですら、もうわからないのだ。

おまけにだ。

「ミューゼ、コンパス直ったか?」

旅の必需品でもある方位磁石コンパス

もちろんシヴル達もそれを持ってはいた。

だが

「駄目ね…完璧に壊れてるわ…」

ミューゼは首を横に振った。

方位磁石による確認は最初に考えた。

方向さえ分かればどこに陸があるか、おおよその予想は可能であるからだ。

しかし、どうやらここに落ちた衝撃で手持ちの方位磁石はすべて駄目になったらしい。

飛行機械にも設置されていた物も衝撃でやはり駄目になっていた。

まさに絶体絶命。

一難去って一難とはまさにこの事か。


はぁーーー………


三つのため息が重なる。

こんな時に頭上でギャーギャー鳴いているカモメがもう鬱陶しくて鬱陶しくて……

…? ちょっと待て。

「カモメ…という事は!!」

シヴルは目を凝らして周囲を見渡し始めた。

? どうしたというのだ?

そしてふと見渡すのをやめ、一点を集中して目を細めた。

「……ビンゴだ…!」

え…?

「もしかしたら…この状況を打開できるかもしれないぞ…!」

ということは…!?

エンゼットとミューゼは顔を見合わせた。そして再びシヴルを向く。

「ああ、見てみろ…!」

シヴルは自分が見ていた方向を指差す。

エンゼットとミューゼはその方向をシヴルと同じように目を細め、ジッと目を凝らした。

「何も見えない…いや…?!」


微かだが…見える!! あれは……!!


「陸だ!!」



『何? 孤児院が?』

ノイズがやや混ざる通信機からそう聞こえた。

「はい、何者かの手によって爆破されました。

 そして、我らの同志であるルカ、タルシス、フィムの三姉妹も孤児院と共に運命を…」

『そうか…どうやらあやつらではあのバケモノを使役する事はできなかったようだな』

「………はい」

思わず通信機を握る手がギシリ、と音を立てた。

『…どうした?』

「…いえ、何でもありません。…それともう一つ報告する事があります』

『ほう? それは?』

「フォルが、『剣』を《継承》した者の一行と接触しました。

 場所は『アクリゼウム回廊』―――『白い孤児院』に向かうには必ず通らなくてはならない回廊です」

『つまり?』

「…孤児院の爆破は…恐らくその一行がやった、かと。

 理由は――――――」

『あの孤児院で行なっていた《実験》、か」

「…はい」

そう応えると、通信機の中からククク、と笑い声が聞こえた。

その声はどこか狂っているように聞こえる。

『莫迦な奴らだ。そのような事をしても傷つくのは己だけで、

 こちらにはただ『失敗』した《実験材料》を処分してくれただけだというのに。

 だが、これ以上動きまわられると我の望みに“また”遅れが出る事になるな…』

その言葉には一切の悪気は微塵も感じない。

感じるのは―――

「…いかがなさいますか?」

『ふむ…これ以上動きまわられたら鬱陶しいな…

 よかろう、この件は引き続きそなたに任せるとしよう』

「…よろしいのでございますか?」

『ああ、まだ我が動く事はない―――いや、まだその時ではない。

 手段は問わん…今は何としてもでも、あの『剣』を我の元へと…!

 そして今度こそ我は…!!』

「…わかりました。必ず『剣』を貴方様の元へ導きましょう」

『ふむ…頼むぞ』

「仰せのままに」


ため息と共に通信を切った。

「バケモノ…か…」

思わず言葉が零れた。

その言葉には間違いなどない。

少なくとも、あの施設―――『白い孤児院』にいた子供達は今回の計画のために

その中に『種』と呼ばれるモノをその身に埋め込まれた。

それはたったひとつのことで異質の存在となる危険な『種』。

それは…純粋な子供達の未来を壊す、悪魔の花を咲かせる『種』。

すべてはこの計画のために…。

あの言葉は間違っては、いない。

だがそれは私にとっては――――


―――コンコン!


突然のノックの音に正気に戻った。

「誰だ?」

若干慌てつつも姿勢を正す。

「私よ。いいかしら?」

「…ああ」

そう返事するとドアが音を立てながら開く。

入ってきたのは

「もう、あの方への報告は終わったの?」

黒い長髪の少女である。

ビシリと服を着こなし、眼鏡をかけたその顔つきは少女と言っては失礼な程である。

肝心の年齢はあまり自分とは変わらないが。

「どうかしたの?」

どうやら柄にもなく見惚れていたらしい。

「いや…それよりそっちの報告を聞こう」

彼はどこか無骨な笑みを浮かべつつ、応えた。

「『ノクターン』の整備がもうじき完了するわ。

 整備が完了次第、いつでも動けると整備士メカニックが言っていたわ」

「そうか。では完了したらまた報告してくれ。完了次第、すぐにここを発つ。

 それまでは待機しておけと、隊員達メンバーに」

「わかったわ…。で? どうかしたの?」

「…何の事だ? もう言う事は何も―――」

少女は「もう」と嘆いた。

「本当にそうなのかしら? 眉間をこう、深くしてね」

少女が眉間をく、と曲げ、そこを指差す。

その表情に思わず、吹き出してしまった。

「ちょっと何笑ってんのよっ。あなたがそんな顔してたのよ」

「くくく…スマンスマン。だけど本当にもう何も言う事はないんだ」

笑いをこらえながら少女にそう言う。

「本当に?」

少女はどこか不機嫌そうに尋ねる。

「本当だ」

そう言うと、少女は少し黙った後、「そう」と応えた。

「…それじゃ、私はさっきの指令をみんなに伝えてくるわ」

「ああ、頼む」


…とてもじゃないが彼女には嘘をつけないな。

少女が部屋を出ていってすぐ、思わずフッと笑ってしまった。

彼女はどこかしら鋭い所がある。

先程のように、こちらが何か考えている所を感じる事を見抜かれることなんてよくある事である。

やはり、幼い頃からずっと一緒にいるからだろうか?

初めてあの忌々しい『孤児院』で出逢い、そして今まで。

「バケモノ…」

またその言葉が零れる。

あの方は確かにそう言った。あの『白い孤児院』にいた子供達を。

ならばそれは―――

「(いや…今はやめておこう)」

そこまで考えて、考えるのをやめた。

今は、今はただ

課せられた任務をこなすだけを考えよう。



任務に支障をきたすような余計な感情は、今は必要ないのだから。







ようやく投稿できました…待っていた方すみません(ToT)

っていうか世の中が大変な事になっているというのに何してんだって言われてしまうかも…ホントにすみません。

私の所は大丈夫でしたが…震災に遭われた方を思うとちょっと色々自分が情けないですね…まぁ色々と……ですね?

次の投稿もまだ未定です…一応進んではいますので意外と早く投稿できるかもしれません…多分(苦笑)


半分はタイムリーな後書きではありましたがここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました。

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