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BRAVE OF FANTASM  作者: 真王
25/33

第24幕 それぞれの戦い 届かぬ願い

「ここです! ここが『格納庫』です!!」

リティがある扉の前で止まり、そう言った。

確かに扉の上のプレートにそう書かれている。

「よし! 入る―――」

「えええええっ?!?!?!?!」

エンゼットの言葉をミューゼの言葉がかき消した。

「ど、どうしたんです?! ミューゼさ…あああっ?!」

「くそ…!! なんてことだ!!」

誰もが絶望的だと思った。

前から多くの足音立て、

大勢の生物クリーチャーがこちらに向かって来ていた。



「なによ…カッコつけちゃって…でも…いいのかしら?」

タルシスが言う。

「は、何が?」

剣先を突き付けたまま、シヴルが言う。

その様子を見て、体勢を直したルカはクスリ、と笑った。

「今頃、ここを出ていったお仲間さん達は「子供達」に歓迎されている頃――と言えばわかるでしょ?」

「な…!!」

エゼクは絶句した。

まさか…そんな…!!

「ここの職員をエサに、「子供達」はどんどん大きく逞しくなっていったわ。

 それはもう、あなた達を絶望にさせるくらいねぇ?」

ん…ちょっと待て

「まさか…『中央管理室』にいたあれは…!!」

「そうよ? 冷凍睡眠コールドスリープされていたのを私が解放しましたわ?

 …まぁ、冷凍睡眠されていたのは一体だけではありませんでしたけど、ね?」

つまり、だ。

『中央管理室』であの――かつては人間だった――生物がここの職員らしき存在を貪り喰っていたのも

また別の生物がエゼクによって隠れていた子供達を襲い、生物として変貌してしまったのも

全部こいつらのせいってことか…。

おまけに今現在、リティ達は変わり果てたあの生物に襲われようとしているらしい。

ならば…

「(ここで…手間取っていられない!!)」

シヴルは剣に魔力をこめ始めた。

「(…こうなったら一気に決める…!)」

思わず剣を握る手に力が入るのがわかる。

「させませんわ!!」

何かを仕掛ける事を察したのか、ルカが一気に間合いをつめ始めた。

そしてフィム、タルシスがそれに続く。

「くっ!」

やっぱり無理か!?

シヴルは防戦するべく、一旦魔力をこめる事を中断することにした。が、

『主よ…悪しきものを祓いし聖なる浄炎を…ここに具現することを!!』

呪文の詠唱…これは!

『―――フレイム・ブレスッ!!』

ルカ達の周囲に何やら不思議な模様が現れた―――そしてその瞬間、それが爆発する!!

「「「きゃあああああ!!!」」」

またもや突然の攻撃に、ルカ達は悲鳴を上げる。

今の攻撃は―――!

「エゼク!!」

シヴルはそう叫びながら、エゼクを見た。

案の定、彼は術を放つ体勢をとっていた。

エゼクはその体勢を解くと、黙って頷いた。

その頷きにシヴルは

「オッケー!!」

力強くそう答えた。

それを見たエゼクは再び、術の詠唱に入った。

「くっ…!! フィム、あなたはあの邪魔な術師の相手を!!

 タルシス、あなたは私に続きなさい!!」

「了解!」

「は~い」

なんとか体勢を戻したルカ達が今度は分断して、それぞれ襲いかかる。

「ならば―――はああああああああ!!!」

きゅんきゅんきゅんきゅんきゅん!

エゼクは気合いの掛け声と共に、即座に唱えた術を連打で放つ!

「いい加減、おとなしくするですぅ!!」

術の連打を切り抜けたフィムが一気に接近し、

とても少女が放つとは思えない重い一撃が唸りを上げ、エゼクに襲いかかる!

『―――ウィッシュヘキサ!!』

だが即座に防御術を展開、エゼクはその一撃を間一髪で防御した。

その隙を…見逃さない!!!

『忌まわしきものを祓いし聖なる十字よ、主の御名において――――』

「あぁ! しまっ―――」

フィムはもう一度攻撃を叩きこもうと、再び武器を―――根を後ろに引く!

―――遅い!!

『―――今、断罪の一撃を与えよ!! グランド…クロスッッ!!!』

キィイィン!!!

甲高い音を立て、聖なる十字がフィムを包み込む!

「あああああああっ!!」

攻撃の隙を突かれ、完全に無防備だったフィムは決定打を受け、後方に飛ばされ転倒する。

「もらった!」

タルシスの声にエゼクはシヴルを見た

「シヴル君!!」

エゼクは叫んだ。

今まさに、シヴルにルカの鉤爪が、タルシスの銃が襲いかかろうとしている―――!

「おおおおおおおお!!!」

だが、それと同時にシヴルは咆哮と共に剣を勢いよく振りかぶった。

その剣はただ空を斬った―――ように見えたその瞬間だった。

―――ズドン!!

爆発音に似た音が部屋中を支配した。

完全に悲鳴を上げる間もなく、

シヴルに襲い掛かってきていたルカとタルシスが勢いよく後方へ飛ばされた。

そしてそれだけで終わらない。

飛ばされたルカ達は、先ほどのエゼクの攻撃で転倒していたフィムを巻き込み、

さらに後方へと跳ばされる!!

やはり悲鳴を上げる間もなく、ルカ達はなす術もなくただ飛ばされ、

ドゴン、と音と共に部屋の壁に勢いよく激突した。


「…やった、か?」

剣を振りかぶった体勢のまま、シヴルは言った。

「……そのようだな」

若干、息を上げながらエゼクがそれに応える。

その返事と共にシヴルは「だはぁ」と声と一緒に体勢を崩した。

そして、ちらりと今しがた飛ばしたルカ達三人を見た。

ルカ達はそれぞれもつれ合ったまま、痛々しそうに呻き声をあげていた。

辛うじて気絶はしてないようだが、しばらくは立てないだろう。

「なんとかうまくいった、かな?」

シヴルはそう言いつつ、剣を鞘におさめた。

とてつもなく大量に魔力をこめた『剣』を勢いよく振りかぶり、

その時に発生した剣圧と共に魔力も同時に放ち、瞬間的に爆発的な威力を与える。

発動に時間がかかるのが難点だが、まぁ咄嗟に考えた技にしては上出来だ。

うまくいけばさらなる応用ができるかもしれない。

―――と、今はそんなことよりも。

「早くリティ達の所へ急ぐとしようぜ!」

と言うシヴルの言葉に

「ああ、急ごう!」

とエゼクは応えた。

二人はもう一度、ルカ達が立ちあがってこないかと軽く確認した後、

『格納庫』―――今、危険がせまっていると思われるリティ達の元へと足を急がせた。


「ううう…こんちくしょう…ですわ…」

痛みに呻きながら、ルカがとても女の子が口にしてはいけないであろう言葉をこぼした。

こんな筈…こんな筈では…!!

まさかすでにあそこまで『剣』を使いこなしているとは…!

このままでは撤退しても、恥をさらすだけである。

「…くっ……タルシス…フィム…っ!!」

そう言いながら、なんとかルカは立ちあがった。

タルシス、そしてフィムもふらつきながらもそれに続く。

「このままでは…終わらせま、せんわよ……!!」

ギリリ、と噛みしめた唇から、ツンと鉄の味が口の中に拡がった。



『紫電の槍よ、貫け! ヴォルテックランス!!』

手の平から発生した雷の槍が、数体の生物クリーチャーを一列に貫く。

『…流れる旋律、流れ、流れよ、流し尽くしてしまえ! ウォーターハーモニー!!』

タクトから流れる魔法物質イデアが魔力に変換され、

それが怒涛に流れる流水のごとく、生物を飲みこんでいく。


ウァァァアアあぁァァァあっぁぁぁァアアぁァァああ……!!


攻撃を重ねるごとに、生物は痛々しく悲鳴を上げる。

それに、この生物は元は自分たちと同じ人間なのだ…。攻撃をする手にも思わず、抵抗が入ってしまう。

「…っ!! ……っう!!!」

リティはつらい表情を浮かべつつ、術を生物にぶつける。

彼女にとってはかつては共に過ごした『子供達』である。

それを攻撃しなくてはならないなど、一体彼女は今どんな気持ちなのだろうか。

できれば殺したくはない。だが殺さなければこちらが殺され、喰われる。

あまりにも残酷で非常としか言えぬ選択。

それはリティだけではなく、エンゼットやミューゼにとっても同じことだった。


「(シヴル…早く…早く来てくれ…っ!!)」


かつて人間だった存在を殺す、それは虐殺とも言い切れないこの瞬間。

それは彼らの想いを無視して、今もなお、続く。






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