第21幕 再会 そして 喰らいあう真実
「ここです! ここが『子供部屋』です!」
突然、リティが部屋の前に立ち止まりそう言った。
「そうか…ここが…」
先ほどいた『中央管理室』の扉と似たような扉。
その上には『子供部屋』と書かれたプレートが貼られている。
「やっとここまで来れたな…」
『中央管理室』からまだ動いていた機械兵士の見張りを切り抜けつつ幾時間。
ようやくたどり着く事が出来た。
「リティ、ここに見張りがいる可能性は?」
エンゼットの質問にリティは首を振った。
「『子供部屋』の見張りはすべて『中央管理室』で管理されます。
先ほどここのセキュリティは解除しましたから大丈夫だと思います」
「そうか…ならばひとまずは大丈夫だな」
エンゼットがそう言うと、リティが「はい」と答える。
「だけど…もしここにここの職員がいたらどうすんのよ…。
子供達を盾にされて投降とかさせられそうよ?」
よく考えれば、確かにその可能性もある。
ここまで来るのに見たのは見張りの機械兵士だけ。職員など一人も見ていない。
あまり考えたくはないが、先ほど『中央管理室』で遭遇したあの変な生物。
もしあれがまだいたとして、それがこの『白い孤児院』内をうろついているとしたら
ここに隠れているかもしれない。
可能性としては充分在り得る話である。
「どうする?」
シヴルがそう問う。
「…もしここに職員があの生物に隠れて逃げ込んでいるとしたら、
もう研究どころじゃないだろう…上手くいけば協力を請う事ができるかもしれんぞ」
「そうね…まぁ上手くいけばの話だけど、ね」
「シヴル…私もう覚悟を決めます!」
つまりだ
「決まりだな」
四人は頷いた。
そして、念のためではあるが武器を構えると
再び勢いよく、その部屋に殴りこんだ。
プシュウ、と音を立て扉が開いた。
「「「「な?!?!」」」」
四人は目の前の光景を疑った。
殴りこんだその部屋、『子供部屋』の中は、人一人いない、もぬけの殻だった。
「そんな…どういうことです?!」
リティが部屋の中央に走り、その部屋を見渡す。
先ほどの『中央管理室』よりかは幾分広いこの部屋。
あるのは散らかった積み木などの玩具、開きっぱなしで所々に散らばった絵本。
子供の姿どころか、ここの職員らしき者の姿すらないのだ。
しかし誰もいないのは確かだというのに、つい先ほどまで誰かがいたような気配があるのだ。
どういうことだ?
「兄さん?! みんな?! どこにいるの!? 隠れてないで出てきて!
私です! リティですよ!! 隠れなくても大丈夫ですよ!」
そう呼びかけるが誰も出てこない。物音すら、ない。
まさかすでに…
その可能性は考えたくなかった。
考えてはいたが、口に出して言う事は出来なかった。
もうすでに
さっきの生物によって―――――
「誰だ!!」
突然、『子供部屋』内に声が響き渡った。これは…
後ろから!?
一行は降ろしていた武器を再び構えなおす。
開いていた『子供部屋』の扉の前にいたのは…見知らぬ誰か。
まさか……ここの職員――――――
「リティ…?」
え?
「……にい、さん?」
はい? にいさん? 新居さん? 日産?
……なんてボケてる場合じゃないって。
…どうやら突如現れたのは、機械兵士でもここの職員でも先ほどの生物でもなく
今回の旅の目的達成の鍵だったようである。
…鍵っていうよりかは人ではあるが。
「兄さん!! 無事だったんですね!」
リティは走り出し、突然現れた人物―――彼女の兄に抱きついた。
「それはこっちのセリフだ」
彼女の兄は驚いた顔でそう答え、彼女を受け止めた。
その顔はどこか嬉しいものが混じっている。
「(この人がリティのお兄さんか…)」
シヴルは武器を直しながら思った。
顔立ちは確かにリティに似たようなところを感じる。
髪の色は亜麻色のリティと違い、かなり濃い目の茶色で…瞳の色はリティとまったく同じようだ。
身に纏っているシャツとジーンズっぽいものは白衣のように真っ白である。
だがそれを纏っている人間が恐ろしく色白のせいか
どういう訳か、確かに真っ白なはずの衣類がまるで汚れているかのように見えてしまうのだ。
「(まさしく《聖人君子》……なんてな)」
ふいに思ってしまったイメージに笑ってしまう。
「何、笑ってんのよ。気持ち悪いわね」
どうやらミューゼに見られてしまっていたようである。
「うるせ」
とりあえずそう言っておくことにした。
「兄さん、彼らが私をここに連れてきてくれたんです」
そう言いながら、リティがこちらに戻ってきた。同時に彼女の兄もこちらに向かってくる。
「そうか…」
その声は外見からのイメージを損なわず、なお穢れがない。
「お初に申しかかります。エンゼット・スカイタルスと申します」
「初めまして、ミューゼ・K・ナヴォリックです」
二人は自己紹介をした
「私はエゼク・カルティネージ。
リティを――妹をここまで守って来てくれてありがとうございます」
そう言うと、シヴルの方を見た。
「君が…シヴル君か?」
「え?! あ、は、はいっ」
どうやら呆然としていたようである。声が少し裏返ってしまった。
何やってんだ俺は……
「…もし君がいなかったら、もうリティには会えなかったかもしれない。本当にありがとう…」
「あ、は、はぁ…」
感謝されてんのに何か素っ気ない返し方…
本当に俺、何やってんだ………。
「兄さん、子供達は…どこに?」
リティが心配そうにエゼクに訊ねる。
「ああ実は…」
エゼクの話によると
突然、部屋の外から悲鳴が聞こえてきたらしい。
何事かと思いエゼクが様子を見に行くと、
どこからともなく職員が悲鳴を上げ、逃げて回っていたらしい。
おまけにその身を紅いもので汚して。
ただ事じゃないと思ったエゼクは、職員が見ていないその隙に、
子供達を別の部屋に避難させたそうである。
全員を避難し終え、しばらくして落ち着いた所でエゼクは様子見を兼ね、ここに戻ってきた。
そしてシヴル達と遭遇したという事である。
「なるほど…そんなことが……」
エゼクの話を聞き、シヴルが呟く。
「ここに来るまで、見張りの機械兵士がいるだけで職員とは誰一人出会うことはなかった。
一体、何があったんだ?」
エンゼットの問いにエゼクは首を振る。
「わからない。私もここに来るまでそちらと同じように職員とは出会うことはなかった。
おそらく、どこかに隠れているのかもしれない」
それも考えられる、そしてもうひとつ。
「あるいは…あのバケモノにやられたか、か?」
「バケモノ?」
エゼクがそう問い返す。
「ああ、さっきな…」
シヴルはエゼクに先ほどの『中央管理室』の出来事を話した。
だがそいつが何をどうしていたか、ということだけは言わなかった。
いや、言えなかった、が正しいか。
「そう、か………」
そう言うエゼクの言葉はどこか重い。
まさか…………
「……何か、知ってるのか?」
「…………ああ、まぁ一応は」
少しの沈黙の後、エゼクは応えた。
「兄さん、どうしたんですか?」
その様子に、リティが心配そうに言う。
エゼクはちらり、とリティを見ると、どこかつらそうな表情を浮かべつつ、再び口を閉ざした。
「………リティ、ずっと君に黙っていたことがある」
どこか決意と迷いを交えた表情でエゼクは口を開いた。
「え…」
初めて、兄のその表情を見るのか、リティはどこか戸惑いの表情を見せた。
「私達が幼いころから連れてこられ、今までずっといたこの『白い孤児院』。
子供達を使って、一体何の研究をしていたのか私は気になっていた。
……ある日、私はとある子を連れていく職員の後をこっそりつけることにした―――」
――――子供の手を引いた職員はやがてある部屋についた。
そこの部屋の扉の上には『実験室』と書かれていた――――
エゼクの話を聞いたシヴル達は『子供部屋』を飛び出し、走った。
――――私は気付かれぬように部屋に入った。
その部屋の中には多くの職員がいた
そこにはよくわからない機械がたくさんあった。
そして連れて行かれた子はその機械に繋がれていた大きな容器の中に入れられた――――
そんな…そんなことが……!!!
リティの頭の中は不安と恐怖は弾け飛びそうだった。
――――職員は機械を触ると、途端に容器の中に何かの液体が勢いよく流れこみ、
その中に入れられた子を一瞬にして飲み込んだ――――
もう見張りなんて気にしていられない。
もし見つかってしまっても構わない。
もうそんなのどうでもいい!!
――――飲み込んだ子はもがいた。
とても苦しそうに…だけどそれだけで終わらなかったんだ。
苦しんでいる子の顔が、歪んだ。
次に、身体から何かが突き出て、身体中のすべてがあらゆる方向に、歪んだ。
そしてその子の身体の所々から何かが突き出した――――
シヴル達はエゼクが言った子供達がいるという部屋に辿りついた。
――――私は信じられなかった―――
扉が音を立てて開く。
――――いつも一緒に遊んでいたその子が――――
その部屋の中は
――――得体のしれないバケモノになってしまったことが――――
先ほど『中央管理室』で遭遇した沢山の生物が、同じ姿をした別の生物を喰らいあっていた。
真王です。
なんていうか……遅れてどうもすみませんでしたぁぁぁ(大泣)
すみませんこの三か月、色々と忙しかったんです。
それにこの話は何回も書き直しをしたりしたんで…本当にすみません。
書き直しのワケはちょーーっと納得いかない部分があったりしたんです。まぁ色々と(笑)。だけど結局何か急ぎ足の形跡が所々にあったり…もうたいへんです。
ばーっと読みましたが…もう知りませんっていうかやめてくれというか…
今回、アレ?と思われた部分は次で判ると思います(多分)
他にも何か思われたなら、感想ページでその意見を書かれてくださるとこちらでもお応えできるので、何かありましたらどうぞ。
では、久しぶりの作品、ここまで読んで下さって本当にありがとうございました!




