第20幕 シヴルと謎の生物とナパーム
ちょっとグロい?描写があります(あくまでちょっと…多分?)
それでも苦手という方はこの幕は読まない事をおススメします。
あくまでちょっとですけど…ね?
「し、しン入、sy、は、っけ……救、ぇん、を……」
頭部を破壊され、それでも救援を呼ぼうとする機械兵士にシヴルはもう一度剣を叩きつけた。
機械兵士は頭にバチバチとスパークを走らせるとその場で煙を上げながら倒れた。
…どうやら完全に機能を停止したようである。
「あー…マジ驚いた…」
シヴルは安堵の息をついた。
かつて『白い孤児院』の前に存在していたという遺跡。
その地下に存在する地下遺跡からシヴル達は『白い孤児院』の侵入を試みた。
地下遺跡はやや複雑であったものの、孤児院が依頼した捜査隊が残したとみられる痕跡を発見し
それを辿る事によって、『白い孤児院』に繋がる出口に到着する事が出来た。
そして気合いを入れて突入した途端…見張りらしき機械兵士と遭遇したのだ。
幸い、見張りは一体であったので先手必勝でシヴルが咄嗟に剣を取り出し
機械兵士のド頭に剣を叩きつけたのである。
さすがに機械兵士の頭は斬る事は難しいが…
ブッ叩いて頭の回転を止めることくらいは決して難しくなんてないだろ?
「驚いたのはこっちだ…さすがにいきなり機械兵士に飛びかかるなんて思いもしなかったぞ…」
エンゼットも咄嗟に構えていたのかステッキを直しながら言う。
「仕方ないだろ…ここで警報出されたら覚悟はしていたとはいえピンチなんだしな…」
そう言いながらシヴルも剣を直す。
「でも斬って壊すんじゃなくて、叩いて機能を停止させるなんてすっごい豪快ね…」
ミューゼがもう動かない機械兵士を指でつつきながらそう言う。
まぁ確かにそうだが…
「機械兵士は外見は硬いけどな、中枢機能を司ってる所は弱いんだってさ。
学園でそう習ったんだよ」
「そうなんですか? じゃあ…学院が襲撃された時も?」
「おう、あの時もガンガン殴って動かなくしてた」
「ふーん…(学院って結構極端的な教え方すんのね…
なんかもっと…マトモなやり方でもするのかと思ってたわ…)」
ミューゼは心の中でそう呟いた。
「それで…リティ、俺達はこれからどうすればいいんだ?」
何にしても孤児院の内部への突入は成功したのだ。
シヴルの質問にリティは頷く。
「まずは中央管理室に行って、子供部屋の監視システムを停止させましょう。
最初に兄さんのいる子供部屋に行っても見つかってしまう可能性が高いですからね…」
「だな…よし、みんな行くぞ…こっそり、な?」
「抜き足…さし足…」
「千鳥足とかぬかすなよ」
「……………」
ミューゼが呟いていた言葉にシヴルが咄嗟にツッこんだ。
コイツ、マジで『千鳥足』って言うつもりだったんかい…!
シヴルは呆れて言葉も出ない。
何て会話をしつつ、シヴル達は『白い孤児院』内部を進んでいった。
もちろん見張りの機械兵士に見つからぬ様にである。
にしても…さっきから機械兵士ばっかで…
「(ここの人間に遭わないってどういう事なんだ?)」
シヴルはそう思いつつも足を進めていた。
「そろそろ中央管理室です…」
いくつかの見張りを切り抜けたその時、リティはそう言った。
確かに…少し先に今まで見てきたのより少し大きい扉がある。
そしてその上には『中央管理室』と書かれたプレートが貼ってあった。
幸いにその扉の前には…
「…見張りの機械兵士はいないようだな」
エンゼットの言葉に他の三人は頷いた。
おかしい…こんなに事が上手くいくなんて…
もしかしたらここの連中は俺達がここに侵入してる事を知ってんのか?
それとも………?
「少し気になる所もあるが…とにかくもっと近づいてみるとしよう」
エンゼットの言葉に再び三人は頷いた。
ゴリュ…!
「何…?! 今の音…」
ミューゼが呟く。
その呟きは何か怖いものでも見たような言い方である。
「何か硬い物をどうにかしているような…そんな感じでしょうか?」
確かにそんな感じの音っぽいが…どうしてそんな音がこんな所で?
ゴリュ…ゴキ、ゴキッ!!
続いて何かが折れてしまったような音が聞こえてきた。
どういう訳かどこか気味が悪い。
しかもその音は…
「あの中から…聞こえてきてる?」
シヴルは思わずそう呟いた。
自分で言ってアレだが、やっぱり気味が悪い…。
「何をしてるんでしょうか…?」
「さぁ……でも…」
ゴキキッ! ベキッ!!
「もっと気合い入れていった方がいい、ってことだな」
シヴルは剣を構えた。
同時に三人もそれぞれ武器を構える。
「行くぞ…!!」
返ってくるのは無言の頷き。
3…2…1――――――!!
「うるああああぁぁ!!!」
シヴルはその部屋に殴りこむと同時に剣をふるった!
ザシュウ…!
手応え…アリ!!
シヴルはそう思ったと同時に一旦後ろに引いた。
そこにいたのは
ウゥオオォォォォォォオオオオおぉぉンンンンンン!!!!
聞いた事のない悲鳴を上げる
それも見たこともない
おまけにその身を紅い《何か》で染めている
気味の悪い魔物―――いや生物だった。
「ちょっと! 予想以上に気持ち悪いんですけど!!」
そう言うミューゼの声は震えあがっている。
確かにこの気持ち悪さは予想以上だ。
なんというか…ゴブリンとかの人獣型の魔物が大きくなって気持ち悪く成長した感じか?
「こ…これは一体…」
部屋を見渡すリティの顔はすっかり青ざめている。
謎の生物はこちらを見ると、フシュウという音と共に息を吐き出した。
判ってるけど…考えるだけでもゾッとする!!
少なくとも今は…やらなきゃ…やられる!!!
ウウゥオオォォオゥゥゥゥウウオゥゥウウウ!!!!
気味の悪い生物はなにかベッと吐き出すと雄叫びを上げ、こちらに向かってきた!!
「…エンゼット!!」
「わかってる!」
エンゼットは術の詠唱を終えていた。
『エクスプロージョン!!』
完成と共に杖先から放たれた光球が生物にぶつかると同時に爆発する!
そして爆発と共に生まれた炎はその巨体を包み込む!
『セイント!!』
なんとか術の詠唱を終えたリティも術を発動させた。
燃え上がる生物の巨体に続けて、白い爆発が襲う。
ウアアアアァァァァァァァアアアッッッ!!!
その身を炎に包まれ痛々しい悲鳴を上げつつも、気味の悪い生物はこちらに向かって来る!
「こっちくんじゃないわよ!!」
ミューゼはタクトを生物に向けると
『ドカンと鼓膜に一発! アクセントミュージック!』
奇怪な詠唱と共に術が発動すると、タクトの先から音符らしきものが放たれ
勢いよく飛んで行ったそれは生物にぶつかると「バン!」と大きな音を立て破裂した。
ギァ!!
それをモロに喰らった生物はその場にひっくり返った。
…もらった!!
「楽しい食事の時間はもう終わりだ!!」
シヴルは剣を背中のド真ん中に突きこむ!!
思わず肉を貫く感触にゾクリ、と寒気が走った。
アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
気味の悪い生物は最後にそう叫ぶと、ビクリとその身を震わせ、動かなくなった。
もう動かなくなった事を確認したシヴルは剣を黒焦げになった生物の身体から引き抜いた。
「…うへぇ…!!」
引き抜いたと同時に離れて正解だった。
剣を抜いた所から生物の体液が勢い良く吹き出したからである。
やや粘着質のありそうな紫色の体液が。
「うわ…見た目も気持ち悪いけど…こっちも気持ち悪…うぇ…」
ミューゼはそれだけ言って部屋の端に行くと、我慢できなかったのか内容物を吐き出した。
確かに…これは気をしっかり持ってないとマジで吐きそうだ…。
「…リティ、大丈夫か?」
シヴルはこみ上げてくる吐き気をなんとか抑えながら言った。
「は、はい。なんとか…」
そうは言ったもの、彼女の顔ももはや真っ青で気を抜くとその場で吐いてしまいそうだ。
「別に無茶しなくていいんだぞ?」
「だ、大丈夫です。それより今の内に監視システムを止めてしまいましょう」
そう言いつつ、リティは監視システムのコンソールへと向かった。
「(だから無茶せんでもいいのに…)」
ふらふらと歩くリティを見つつ、シヴルは思った。
「…? エンゼット、どうした?」
シヴルは少し離れた所に立ち尽くしているエンゼットに気付いた。
「え…いや、なんでもない」
そう言いながら振り向いたエンゼットの顔はミューゼとリティ以上に青ざめている。
彼もまた先ほどの戦闘中、やや青ざめた顔をしていたがそれ以上である。
「…何を見たんだ?」
エンゼットはこちらを向いたその顔を少し歪ませた。
「これを…どう思うか?」
そう言いつつ、シヴルをこちらに手招いた。
「……っ!」
エンゼットの方に近づいたシヴルは声にならない悲鳴を上げた。
彼の足元に何かが落ちていた。
青白い何かに真っ白な何かが剥きだし、それが白い布で包まれている。
そしてその白い布は赤黒く染まっている。
間違いない。これは…これは…
耐えていた吐気がすざましい勢いで食道を一気にかけ昇ってくるのがわかる。
「終わりました!!」
リティの声でシヴルはギリギリで吐くのを堪えた。
「そ、そうか。もう子供部屋に行っても大丈夫なんだな?」
「はい、あ、でもまだ途中にいる機械兵士はまだ機能を停止してませんから…
行き方はここに来たように行くのがいいと思います」
「わかった。ではこんな場所はさっさと出て行くとしよう」
「え、ええ…」
急かすエンゼットに首を少し傾げながらもリティはそう応えた。
「ミューゼ、もう大丈夫か?」
エンゼットはミューゼにそう訊ねると
「おっげー…」
まだ吐いてるかのような返事を返した。
ホントに大丈夫なのか…。
いつもは思わずため息が出そうであるが、場合が場合であるため今回はそんな気にはならなかった。
「…シヴルも大丈夫か?」
「…………」
エンゼットの言葉にシヴルは何も応えない。
「シヴル?」
返事をしないシヴルが気になったのかリティはシヴルの元へ向かおうとする。
マズイ!
エンゼットは何とかリティを引き留めようとした。
が、
「リティ、これ何だと思う?」
その言葉にエンゼットは一瞬固まった…が、
シヴルが手に何か箱のような物を持っていた。
どうやらそこに落ちているものから注意を逸らすために
すぐ横にあったの棚のような物から取ったらしい。
エンゼットは思わず息をついた。
「これは…多分、ナパームではないでしょうか?」
「ナパーム?」
リティは頷くと、シヴルが持っている箱を開けた。
その中身は金属製の卵型の球体が4、5個程度入っていた。
「これは安全装置を引き抜くと、数秒後に爆発する…簡単にいえば爆弾ですね。
でもこれは普通の爆弾と違って、特殊な薬品を化学変化を起こして爆発するんです。
爆発しても約2千度近くの炎が対象者を燃やし尽くすまで消えることはないそうですよ」
「へー…」
シヴルはそのナパームをひとつ手に取った。
こんな小さなものが2千度くらいの炎を出すなんてなんか信じられない。
そう思いつつ、シヴルは箱の中のナパームをすべてポケットにいれた。
「…持って行くんですか?」
「……ま、念には念をって事で、な」
「気を付けてくださいね。ちょっとやそっとで爆発するものではありませんけど、
安全装置を抜いたら…」
「わかってるわかってる。安全装置も結構すぐ抜けそうなシロモノじゃないっぽいし、
爆発物の扱いくらい学院で多少習ってるさ」
「…魔術学院ってそんなことも習うの?」
ふらふらしつつ何とかこっちに歩いてきたミューゼがそう言った。
「まぁ一応な? あと簡単な解体くらいも習うぞ?」
「やっぱり変な学院…」
ミューゼのツッコミにシヴルは
「否定はしないぞ? 教師もイロモノばっかりだし」
とにっこりと笑いながら言った。
「あ、そ…」
もはやツッコむ気力もなかった。
「それより見張りが来る前に早くここ出るぞ。いくら監視を止めたからといっても
機械兵士に見つかると厄介だからな」
「わかった。んじゃ、とっとと行くとしようぜ」
「そうですね」
シヴルは『中央管理室』から出る時、ちらりと後ろを向いた。
何とか今はリティを誤魔化すことはできたが…
だがそれは一時しのぎにすぎないだろう。
だからシヴルはナパームを手に取ったのだ。
ナパームがどんなシロモノなのかはとっくにわかっていた。
もしもこの部屋にナパームがなかったら…
一体なんて言って誤魔化してたんだろうな。
「シヴル、どうしました?」
少し離れた所でリティが声を潜めて呼びかけてくる。
「…何でもないよ」
声を潜めてそう返すとシヴルはそこを離れた。
『中央管理室』の扉は音も無く、閉まった。
誰もいなくなった『中央管理室』に残ったのは
謎の気味の悪い生物の亡骸と
その謎の気味の悪い生物が吐き出した食事の食べカスだけである。
はい、真王です。
遅れてすみません…年度末や初は色々忙しくて…ね、ネタがなかったわけじゃないんだからね?!
どうでした?少々グロかった…そんなわけないですよね(笑)
この話からしばらく始まる『白い孤児院』編はグロ…っていうかバイオレンス系?な展開が続きます。劣化バイオハザード…みたいな?(あくまで個人的に(爆笑)
まぁ…それでも読んで下さる方は暖かい目で見守って下さって欲しいです…はい。
バイオレンスな展開に暖かい目ってどうなんだツッコミはなしで。
また長文失礼…今回もここまで読んで下さってありがとうございました!!




