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BRAVE OF FANTASM  作者: 真王
19/33

第18幕 迷える一直線の回廊

エンゼットを見つけ、ミューゼを加えたシヴル達はようやく『白い孤児院』へと向かい始めた。

朝早く『遺跡村ドセルド』を発ち、

シヴル達はいよいよ『白い孤児院』へと続く道である『アクリゼウム回廊』に足を踏み入れた。

「ふっへー…すっごい長い道ね…」

足を踏み入れた途端、ミューゼが驚きの声をあげた。

確かに彼女が言うとおり、その回廊は長かった…………それはそれは異常なくらいに。

「ひょっとして……あそこにぼんやりと見えるあれが…?」

「はい、その通りです」

エンゼットの問いに、リティは頷き、言った。

「あれが…私たちが目指している『白い孤児院』です」

「そうか…あれが………」

ようやく見えてきた目的地。

あそこに彼女の兄がいる………

まだぼやけて見えるだけというのに、嫌に威圧感を感じる。

気合い入れて行けという女神のお告げか。

エンゼットは思わず笑ってしまった。

「では…気合いを入れて行くとするか…!」

エンゼットの言葉に

「はい!」

「おっけー!」

と、リティとミューゼの二人は答えたが……

「………………………」

肝心のシヴルは黙まりだった。

「ってちょっとちょっとー! なーに一人黙りこんでんのよ!

 これからビシッて決めなきゃいけないときに!!!」

「………………………………………」

シヴルは答えない。

ただ何やら考え事をしているようである。

「聞いてんの?! ちょっと!!」

「…え……あ…ああ」

ようやく呼びかけに気づいたシヴルはそう言った。

「シヴル…昨日の夕食の後から何か様子が変ですよ? 一体どうかしたんですか?」

「いや……うん…ちょっとな」

そうとしか言えなかった。

言ったとしてもなぁ……。

―――その剣はお前に絶望という未来へと導く―――

―――そしていつかそれはお前を喰らいつくすだろう…………―――

また思い出した。

昨日の男―――ソウガが最後に言った言葉である。

一体あいつは何を言いたかったのだろうか。

何か剣について知っているようだったけど……どういう訳か言ってくれたのは「封印しろ」だけだし。

……まぁ今こんなこと考えても仕方ないか。

「シヴル?」

リティが心配そうに話しかけてくる。

気付くとエンゼット、そしてミューゼまでもが心配そうな顔でこちらを見ていた。

「ごめん。なんでもないよ」

とりあえず笑顔でそう返した。

「…わかりました。でも何かあったらすぐに言ってくださいね?」

「……うん」

心配そうに語りかけるリティにシヴルは思わず苦笑しながら返事した。

「それでは、行くとしますか!」

気合い入れの言葉を兼ねて、シヴルはそう言った。

ふいに入った視線に、まだ遠くの『白い孤児院』が見えた。


こうして歩き始めたシヴル達一行。

長い長い『アクリゼウム回廊』を一歩一歩踏みしめていく。

一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…

一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…

一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…

一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…一歩一歩…

一歩いっ……ぷち

「長すぎるんじゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

突如、ミューゼがキレた。

無理もないだろう。

『白い孤児院』が近づいているのはわかっているのだが…

あとどれだけ歩けばいいのか、など誰も知ったこっちゃないのだ。

前の道も果てしないが、後ろの道もすでになんか果てしない。

一体、どれだけ歩いたのだろうか……。

唯一幸いなのは魔物が出てこないということである。

「ば、馬車と徒歩じゃこんなに違いがあるなんて……」

あー、そういえばリティは馬車でここ渡ったんだよな…………。

いいなぁ…とか思ったがそんなこと思っている場合じゃない。

「とりあえず近づいてはいるんだ。文句はわかるけど…とにかく歩こうぜ」

「だな…ほらミューゼ、行くぞ」

座り込んでいたミューゼにエンゼットはそう言った。

返ってきたのは

「へーーい………」

何ともやる気の失せた返事だった。

さっきのやる気はどうしたんだ…全く…。


再びシヴル達は歩き始めた。

ここに入り始めた頃、まだ低かったお天道様はもう真上へと向かっている。

とにかくシヴル達は黙って歩き続けた。


……

………

…………

……………

………………

…………………

……………………

………………………

…………………………

……………………………………ぶち


「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

再びミューゼがキレた…おまけにさっき以上にキレやがった…。

まぁ、それはともかく

「なぁ? いくらなんでもおかしくないか? これ。」

「だな。これは何かあるな…」

不審に思うのも今更という気もするが、これはおかしすぎだろ。

どんだけ歩いても、出口につかないなんてどう考えても変すぎる。

もしやこれは…

「幻覚系の…?」

「その類だろうな」

二人の意見にリティも頷く。

つまりだ、これは誰かが幻覚系の『魔術』で俺達を足止めしているということか。

そんなことする奴なんて…たかが知れている。

あの謎の組織だろう。

問題は…

「こういうのってどうやって突破するんだっけ?」

ということである。

「そうだな…常識的に考えると…術者をつきとめる……」

「ここでか?」

こんな恐ろしいくらい広い回廊のどこにそんなのいるのだろうか。

捜すだけで日が暮れる。

どう考えても却下である。

「もしくは幻覚の発信源をつきとめる…」

「それって術者見つけんのと同じなんじゃ…」

「そんなことないわよ」

ようやく落ち着いたのかミューゼが話につっかかってきた。

「確かに一番の解決法は術者を見つけて術そのものをやめさせることよ。

 でもこんだけ広い空間に幻覚かけるなんてどう考えても長時間もたないでしょ?

 だからこういう場合にはその負担を軽くするために何か触媒をどこかに設置するハズよ」

「でもさ、その触媒を探すったってやっぱり術者見つけんのと変わんないんじゃ…」 

「まぁ、確かにね。でも…」

ふいにミューゼが前に歩き始めた。

「…こんだけ広い空間を支配することなんて別に難しくなんてないのよ?

 特にこんな同じような景色が続くような所はね?」

そう言ってミューゼは景色を見渡す。

左右に広がる景色は所々絶壁である。落ちたら死ぬのは確実だろう。

そしておもむろに立ち止った。

「だからね。こんな飽きっぽい所・・・」

彼女の手にいつの間にか武器であるタクトが握られていた。

そして

「さっさと出るわよ!!!!!」

おもむろにそれを前に突き出した!

そのタクトは空を突く―――そのはずだった。


ピシッ!


シヴル達三人は自分の目を疑った。

ミューゼの空を突いたはずのタクトの先に…一筋の亀裂が入ったのだ。


ピシ…パキ…パキパキパキッ!!


亀裂は徐々に大きく拡がっていき、それは自分達の足元までも拡がっていく。

そして


バリィィィィィン!!!!!


ガラスが割れるような音を立てて、周囲の空間が砕け…

それが完全に砕け散ると砕け散る前の空間に戻っていた。

だが何かが砕け散る前と違っていた。

それは…

「ミューゼ…それって…」

「これが、あたし達を派手に迷わせていた幻覚の…触媒よ」

ミューゼはタクトを前方から降ろした。

それに少し遅れて何かがミューゼの前に落ちた。

それは割れた鏡だった。

ミューゼが割った鏡は地面に落ちると、その破片を辺りに散らした

「この鏡が映し出した景色の中をあたし達はずっと迷い込んでいたのよ。

 この鏡が映せる空間の中を、ね」

なるほど…だから同じような所を歩いていたのか…。

「ミューゼさん、ずっとこれを探してたんですか?」

リティのその問いに、ミューゼは

「まーね」

と、笑いながら答えた。

「じゃあ、あの気の狂い様は演技だったのかよ?」

「まさか」

ミューゼはタクトを直しながら言った。

「最初はわかんなかったから道の長さにキレただけ。

 途中からおかしいなと思って、歩きながら探したんだけど…見つからなくて…

 キレて…冷静になったら、ようやく見つけたって所よ」

「…よく見つけられたな…」

エンゼットの感嘆の声に、ミューゼは「そんなことないわ」と言った。

「あたしも似たような術を使うからね。

 …気付くのが遅れてしまっちゃったから何とも言えないけど

 まだまだ修行が足りないってことか…………それより」

突如、ミューゼは真剣な表情になった。

その切り替えにシヴル達は驚いた。

しかし、驚きはまだ止まることはなかった。

「姑息なタネはもう解かれたのよ?さっさと出てきたら?」

な…んだと?!

こいつ……!?

「おやおや、まさかキミにこのタネを解かれるなんてね。びっくりだよ」

!!

シヴル達は咄嗟に身構えた。

だがミューゼだけは身構える事はしなかった。

「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。なぜなら……」

その言葉と共に身体中に鳥肌が走った。

どういうわけか反射的に背後に向く。

「キミ達はここで死んじゃうのだから」

なん…だと…………?!

その声の主はシヴル達の後ろから聞こえた。

そして同時に目の前に

鋭利な刃が視界を支配した。

―――――――――――――っっ?!?!?!?!

間に…合わない!!!


ビシィン!!!


だがその鋭利な刃がシヴル達を襲う事はなかった。

その刃はシヴルの目の前で止まっていた。

そしてその間になにかがあった。

まるでそれはシヴル達を守るように包まれた薄いバリアのような膜…

いや包まれているのは襲いかかってきた奴だ…!

これは…まさか…!!

「へぇ、これはお見事」

襲撃者はそう言った。

そう言われた者――ミューゼは

「そりゃどうも」

と何か嫌なものを吐き捨てるかのような口調で言った。

「まさかこの僕のスピードについてこれるなんて…

 ふふ、これは面白い発見をしたものだ………!」

その瞬間、襲撃者はミューゼの術を突拍子もなく破壊した。

それと同時にその場から消えてた。

「え…?!」

リティは辺りを見渡す。

「…! 上だ!!」

エンゼットの声で、全員一斉に前を―――回廊の出口の門の上を向いた。

その門の上にいる者はこちらを見ていた。

年齢は20代半ば、髪型はなんかボサボサで、装備は身軽に動けるような軽装である。

まるであれは…暗殺者のようである。

「あらためてこんにちは。リティ・カルティネージ、そしてシヴル・ストラヴィジュ。

 僕の名前はフォル・ザンテーク、キミ達二人の事はゼノから聞いてますよ?」

やっぱり…!!

シヴルの、剣を持つ手に力が入った。

「今回はこのような形で出迎えて申し訳なかったね。

 なにしろ僕の相棒が今回都合が悪くなっちゃってね…本当に申し訳ない」

「なにが申し訳ないだ!思いっきり殺そうとしてたじゃねーか!!」

シヴルがそう言うと、襲撃者フォルはニィッとどこか歪んだ笑みを浮かべた。

「これが僕なりのおもてなしってヤツでしてね…どうだい?気に入ってもらえたましたか?」

「冗談!!そんなの気に入れるか!」

こいつ…何て奴だ…!

人を殺す事を楽しみにしてんのか?!

しぼんでいた鳥肌が再び沸き出すのをシヴルは感じた。

「それは残念。しかし今回はまぁ挨拶のようなものです。

 それで死んでくれて大人しく剣をこちらに献上していただけるのならそれでよかったのですが…

 どうやら面白い人を仲間に加えていたようですね?」

そう言うと、フォルは視線を面白い人―――ミューゼの方を向けた。

「あなた、名前は?」

まるでそう言う口調は女性を誘うかのように聞こえる。

ミューゼははぁ、とひとつ息をついた。

「…ミューゼ・K・ナヴォリックよ。

 面白い人という言葉、褒め言葉として受け取っておくわ」

ミューゼがそう言い捨てた途端、フォルは本当に嬉しそうな顔をした。

まるで新しいオモチャを、見つけたような。

「ミューゼ・K・ナヴォリック…なるほど…覚えておきますよ…

 『音律士ハーモニクサー』のお嬢さん?」

「……………………………」

音律師ハーモニクサー』…?

それがミューゼの…?

「それではまた会いましょう!シヴル、リティ、そしてミューゼ!!」

その言葉を言った途端、フォルの姿は消えた。

………どうやら本当にこの場から去ったようである。

それを確認するとシヴル達は身の構えを解いた。

「できればもう会いたくないな…」

エンゼットのいう事はもっともであった。

それよりも…

「ミューゼさん、『音律士ハーモニクサー』だったんですね…」

リティが感嘆の言葉に、ミューゼはバツが悪そうに頭を掻いた。

「何?そんなにびっくりした?」

「まぁ、な。ちょっとばかし」


音律士ハーモニクサー』とは《イデア》を扱い、攻撃等を行使する『魔術士』などとは違い、

自らの生み出す音や声を自らの攻撃エネルギーとして変換し、攻撃を行使する者である。

よく考えれば、セシュルでの攻撃もそれを使ったのだろう。

それによく考えたら先ほど彼女は無詠唱で術を行使した…つまり…


「(コイツ…実はかなりの凄腕の『音律士ハーモニクサー』なんじゃ…)」

シヴルは思った。

「でも『音律士ハーモニクサー』は普通旅したりなんてしないですよね?

 主に自分が学んだ師と共に楽器の製造や調節を行う仕事がメインですし…

 旅している『音律士ハーモニクサー』は破門もどうぜ……はううぅぅ?!」

「リ・テ・ィ・ちゃ~ん? 口は災いのもとよ~?」

「ふ、ふみまへ~~~~ん…」

ミューゼはリティの頬を笑顔でつまんでいる。

ああ…そういうことか。

なんか納得…っていうか、ピンとくるというか。

「お前達…あれを見ろ…」

エンゼットが緊迫とした様子で言った。

シヴルはエンゼットが指した方向を見た。リティとミューゼもそれに続く。

邪魔はあったがシヴル達はすでに『アクリゼウム回廊』の出口にいたのだ。

そのため入り口では遠く見える程度だった存在が、今では近くにあった。

そう

『白い孤児院』が。

…………とうとう来たか。

………………………よし!

「行ってやろうぜ…みんな!」

その言葉に

「ああ!」

エンゼットが腕を組んで答えた。

「おっけー!!」

ミューゼは右手をあげて答えた。

「はひ!!!」

リティは元気よく答えた…

…って


「お前さ…いい加減許してやれよ!!」


ミューゼの左手は今だリティの頬をつねったままだった。








前回からそんなに経過してないのに投稿できたことに驚いている真王です。

…今回から小説形式でやってみましたけど…どうでしょうか?あんまり変わってないかもしれないけどですけどね…。

急に変えやがってざけんじゃねーとかおっしゃる方はどうぞ遠慮なく感想ください。はいどうぞ遠慮なく(笑)

それにしても今回の話、なんか一部の人がキャラ変わりすぎだろ…とか思ってみる。初期の設定ではこんなキャラじゃなかったはずなのに…初期の設定って3年前に設定したやつだろーが…ってね(苦笑)

今回もここまで読んで下さってありがとうございました。

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