第16幕 エンゼットの旅と結局ついてくる奴
「で・・・・なんでここにいるんだよ・・。」
「ふへ?」
シヴルの問い掛けにミューゼは何とも情けない声で返した。
リティの回復術で目を覚ましたエンゼットとミューゼを引き連れ、
シヴル達は『遺跡村ドセルド』に戻ってきた。
そして宿屋に入って一息ついていた。
シヴルはリティから出された茶を一口すすった。
そろそろ・・・いいだろう。
そう思ったシヴルは話を切り出したのだ。
「ふへ?・・・ですと・・・?!?!
おみゃあ、いったいなんつーことをおっしゃってやがるますとですど・・・?!?!?!」
「シヴル、気持ちはわかるから落ち着け。言ってる言語滅茶苦茶だ。」
シヴルの身体から怒りのオーラが昇っているのを感じたエンゼットはそうなだめた。
「いいじゃない、別にそんなこと。」
「よくねぇ!いくら天が味方してもお前がタイミングよくいた時点でよくねぇ!!
っていうかお前に遭遇した時点でよくねぇ!!!」
「ちょっと!再会して早々それ?!何か酷くない?!」
「再会なんて言うな!なんか虫唾走る!!」
「いい加減や・め・ろ。」
ぼかり、という景気のいい音がシヴルとミューゼの頭から響き渡った。
「・・・どっかそこらのガキじゃないんだから、ギャーギャー騒ぐのはやめろ。いいな!」
「「・・・へーい・・・・」」
頭をおさえながら二人はそう返事したのだった。
「・・・ったく・・・それにしてもどうしてまたここまで来たんだ?
お礼は今度でいい、と言ったはずだが?」
エンゼットはそう言った。
口調はかなり大人しいが、どこか怒りが混じったような口調にも聞こえる。
「そ・・・それは・・・・・。」
それを感じ取ったのかミューゼは口籠る。
「ああは言われたけど・・・やっぱり納得できなくて・・・
それで別れた後、こっそり後をつけて・・・そっちの話を・・聞いちゃったんだもの・・・。」
「聞いた?何を?」
そう言ったシヴルをちらりと目線だけ向けてミューゼは一息つき、言った。
「・・・あなた達が『白い孤児院』に向かってるって話をしている事・・・・。」
「「「!」」」
三人はほぼ同時に目を見開いた。
ミューゼは話を続ける。
「どうしてそんな事に行くなんて思ったけど・・・でも・・・何か気になって・・・。」
「だからディーテからここまで来た、と。」
エンゼットの言葉にミューゼは頷いた。
「あ・・・でも、どうしてセシュルにも・・・・」
今度はリティがそう問いかけた。
「・・・この宿に泊ってちょっと夜中に起きたら・・・エンゼットが出て行くのを見て・・・
こんな夜に出るなんてと思って、またこっそりついていったのよ。
そしたらあの遺跡に・・・・。」
「なるほど・・・それで・・・・・。」
ミューゼのここまでの事情はわかった。次は・・・・
「・・・そもそもエンゼット。
何でまた突然、一人でセシュルになんて行こうと思ったんだよ?」
「・・・ちょ「ちょっとな?とかで誤魔化すなよ?」・・・・・」
まさしくそう言おうとしていたところ、見事に見抜かれた。
・・・・仕方ない、か。
「そうだな・・・・・・世話になった人をちゃんと眠らせるため・・・とでも言っておくか。」
「世話になった人?」
リティの言葉にエンゼットは頷いた。
「私は幼い頃に親を事故で失って、町という町を彷徨う浮浪孤児として育ってな・・・。
たいへん盗みとかやったもんさ・・・。」
「へぇ・・・今のエンゼットからはなんか信じらんないな・・・で?」
「最後に盗みを働いたのは、私を引き取った男―――養父だった。
やや年老いながらも旅をしていたようでな・・・抵抗をしたら・・・。」
「あっという間にやられた、ってことか。」
「そういうことだ。」
思わずエンゼットは苦笑した。
「養父は私を憲兵につき出したりせずに、色々なところに連れて行ってくれたよ。
路銀は私が今やっているように手品で稼いでな・・・・。」
そう言いつつ、エンゼットは以前手品をしているときに使っていたシルクハットを取り出した。
「これは・・・養父がその時に使っていたものだ。」
なるほど・・・これはエンゼットにとって・・・・
エンゼットの話はまだ終わらない。
「楽しかったさ・・・あの時は・・・・・・。
もしかしたら本当の両親と一緒に暮らしていた時よりずっと楽しかったかもしれないな。
だが・・・。」
エンゼットはふいに顔を曇らせた。
「・・・数年前に養父は旅中の怪我がもとでそのまま逝ってしまった。
最期の時に・・・養父は私にこう言った。
『私を祖先と共に眠らせてほしい』・・・とな。」
「祖先・・・?」
今度はシヴルの言葉にエンゼットは頷く。
「いつか話してくれたことがあった。
養父は太古に滅びた町に住んでいた一族の末裔、だと。
養父自身がそれを知った時はその一族はもう養父しか残っていなかったらしい。
だから養父はその場に赴くために旅に出たらしい。
・・・・・結局、辿りつくことはできなかったがな・・・・。」
「もしかして・・・エンゼットさんの『スペルクリエイター』としての力は・・・。」
「ああ、養父が私に教えてくれた力だ・・・・。
私が知らなかったように、この力が何なのかは養父自身もわからなかったようだがな・・・。
それに私が今使っている術は養父から学んだもの、実は私自身まだ術をつくったことはないのさ。」
話はこれで終わりのようだった。
つまりだ。
「エンゼットは、昨日していた話を聞いてセシュルに行ったんだな?」
エンゼットは頷く。
「ああ、もしかしたらそこが養父が求めていた
太古の町の手掛かりがあるかも知れないと思ってな・・・・。」
なるほど・・・そういうことか。
「だからってさ・・・別に夜中にこっそり行くことはないだろ?おまけに一人で。」
「すまん・・・旅についていくといった以上、迷惑はかけられんと思ってな・・・・。
朝には帰るつもりだったが・・・自分でも知らずに眠ってしまったようでな・・・・
本当にすまなかった。」
エンゼットは本当に申し訳にないように頭を下げた。
「シヴル・・・・・。」
その様子を見たリティはシヴルを見た。
シヴルを見る目線は・・・まさしく・・・・
言いたいことはわかっているからその目線はやめてくれって・・・。
「・・・もういいよ。そっちにもそれなりの事情あったんだし、
俺がどうこう言っても、もう済んだことだからいいよ・・・ただし。」
シヴルはエンゼットに向かってビシィと音がつかんばかりの勢いで指をさした。
「今度からは一人で行く場合、ちゃんと声くらいかけて行けよ?
今回のようなことなんて、もうたくさんだからな!いいな!」
エンゼットはシヴルの勢いで思わずのけぞったが、
「・・・わかった。今度はそうさせてもらおう。」
苦笑しながらそう言った。
「・・・なんか信用できない言い方だな・・・・。」
「心外だな。それでは満面の笑みで今のを言い直そうか?」
「・・・いやいい。」
ため息をつこうとした、その時
「いやーよかったよかった!!うまくまとまってくれて!」
その声でため息を飲み込んだ。
そうだった・・・まだこいつの問題が残ってたんだ。
「よーし!!それじゃ今から食事に・・・!」
「ストーップ。なに勝手に仕切ってんだよ。」
シヴルの言葉にミューゼは文字通り、かくっとよろけた。
「え?だってそっちの話は終わったんでしょ?
だったら今日はもう遅いし・・・・。」
「終わったのはエンゼットの話で、お前の話はまだ終わってないって・・・!」
そう、終わったのはエンゼットの事で。
ミューゼをこれからどうすることなどまだ何も決まってないのだ。
まぁ・・・話を切り替えたのはこちらだが・・・。
「えええええ!!!だってだって!!
過去バナを聞かせるなんて仲間の証拠でしょ?!だったら・・・!!」
「あくまでそっちの問題に便乗してでの過去バナだったんだから、
お前の問題自体はまだ解決してねーっつの。」
「そ、そんなの!」
「アリだよ。アリ!」
「ガーーーーーーーーン・・・・・」
ガーンを口で言うな。口で。
はぁ・・・・・。
シヴルは先ほど飲み込んだため息を出した。
ま・・・でもこいつがいなかったら、エンゼットどころか俺達も危なかったし・・・・
・・・しゃあないなぁ・・・もう・・・
「わかったわかった。もうお前の好きにしろ!ついてきたければもう勝手についてこい!」
そう宣言すると、ミューゼの顔がみるみる明るくなっていく。
「ぃやったーーー!!!」
「ただし!途中で嫌になったから別れるとか言ったら・・・・!」
「わかってるわよ!そう言ったら許さんぞ!でしょ?」
明るく言うミューゼにシヴルは
「いや、遠慮なく別れさせてもらうからな。以上。」
そう言った。
「んもう!わかってるわよ!ささ、リティちゃん!はやくごはん食べにいこーー!!」
そう言いながらミューゼはリティの腕をがっしり掴んだ。
ホントにわかってんのかこいつ。
「え、あ、そ、その?!」
腕を掴まれたリティは何か言おうとするが、
ミューゼはそれにお構いなしに彼女を連れて食堂へ向かった。
そしてその場に残されたシヴルとエンゼット。
「シヴル・・・・あんな事言ってよかったのか?」
エンゼットの言葉にシヴルは
「どーせここで断ってもまたこっそりついてくると思うし、
もうあんな奴、目の見えるところに置いておくのが一番だろ。
・・・ま、別にやな奴ってわけでもないし、構いはしないだろ?」
「なるほどな。
・・・これで、この旅も騒がしくなるな・・・・。」
「全くだよ・・・ホントに。」
ため息と共に言い捨てたシヴルをエンゼットはそっと見た。
シヴルの顔は嫌そうでもなく、少しだけ楽しそうに見えた。
・・・本当に少しだけ。
お待たせしてすみません・・・真王です。
今年初の投稿です。1月から今までにかけて忙しくて・・・待っておられた方は本当に申し訳ありませんでした・・・え?そんな奴いない?・・・ですよね・・・。
急いで打ち込んで投稿したので脱字や誤字があるかもしれません。
そんときは急いで訂正させてもらいます。
っていうかこの話はもう少し長い予定でしたが、長くしたらマジで長くなりそうなのでここで切りました。続きは次の話です。多分読んでいてアレ?と思われた方も次の話で理解ができる・・・と思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
感想、苦情(笑)共々お待ちしております!




