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BRAVE OF FANTASM  作者: 真王
16/33

第15幕 堕ちた聖域(後編)

「なんの冗談よ・・・これ・・・・っ!!」

ミューゼはそう嘆いた。

頭上からによる襲撃。それはなんとかかわすことはできた。

しかし問題はそれで解決などしない。

「オオオオオオォォォォォォン!!!!!!!」

彼女に襲いかかってきた存在は猛々しく咆哮をあげた。

突然だが昨日、食堂で食事をしている時に小耳にはさんだ話がある。


―――最近セシュルに出た魔物の事、知ってるか?

―――知ってる知ってる。知らずにセシュルに行って被害にあった人たくさんいるらしいぜ・・・。

―――うわ・・・もしこの村に来たらどうするんだよ・・・?

―――でもどういう訳かその魔物、セシュルからは出ることはないらしいぜ?

    偶然逃げ切った学者たちがそう言ってたぞ。

―――そうなのか?・・・でも何にしても・・・・

―――今はセシュルには近づかない方がいい、ってことか。

―――そういうことだ。ま、村長がどっかから衛兵を雇って退治に行かせるらしいがな。

―――ふーん・・・・。


つまりこれがその魔物ということか。

しかし・・・これは本当に魔物なのだろうか?

どっちかというと・・・これは・・・

「ウオオオオォォォォォォン!!!!」

考え事をしていたら魔物?が再び咆哮をあげ、こちらへと向かってくる!!

「うわ!また来た!!」

そう言いつつミューゼは懐から何かを取り出した。

取り出したそれはなにやら細々と装飾された細い棒のようだった。

ミューゼはそれを構えると

「アンコールは・・・ご自由に・・・!!」

なにやら、場違いな言葉を発した。


「ぐーーーーー・・・・・」

未だに眠り続けるエンゼットが目覚めるまで

あと・・・数分。



「くそ・・・どこにいるんだ!!」

「もう随分進んだはずなんですけど・・・・」

一方、シヴルとリティはまだエンゼットの元に辿りついていなかった。

いくつか部屋のような所には行ったのだが、

エンゼットどころか最近動き出したという『聖獣』の石像すらいない。

まぁ、後者は遭遇しないことに越したことはないのだが・・・・

どっちにしろエンゼットがもしその動く『聖獣』の石像に遭遇していたら・・・

走りながらも、それはないとシヴルは願った。

「シヴル、分かれ道です!」

リティの声にシヴルは我に返った。

確かに目の前には右と左の分かれ道。おそらくどちらかの道の先にエンゼットはいるだろう。

片方はアタリ、片方はハズレ。確率は二分の一とリスクは高い。

・・・どうする・・・?!

その時だった。

・・・・・きゅいいいいぃぃぃぃぃぃぃんっっっっ!!!!

「どお?!」

「ひゃあ?!」

耳をつんざくような音に二人は耳を塞ぐ。

「な・・・なんだよこの音は!!」

思わず大声になってしまいながら、シヴルは言った。

「ど、どうやら・・・み、右の、方から聞こえます!!」

「右から?!」

突然右の道の方から響き渡った超音波のような音。もしやこれは・・・・・

「エンゼットの奴、なにかやったのか?!」

シヴルの言葉にリティは首を振った。

「わかりません!でも・・・・・!」

少なくとも右の方に誰かが・・・いる!!

「行くぞ!」

「はい!!」

シヴルとリティは再び走り始めた。

分かれ道を右へ曲がって。



「ぐぅうう?!」

突然鳴りだした音にエンゼットは目覚めた。

意識が急速に覚醒していくのが自分でもわかる。

そしてそれと同時に耳をおさえる。

「なんだこの音・・・・・・!」

そこまで言って気付いた。

確かに耳をつんざくような鋭い音だが・・・・・・

うるさいだけで何かおかしくなりそう・・・なことはない。

「お目覚め?!」

音が止んだ。

この声は・・・・!!

「ミューゼ?!」

「ご名答!!」

そう言いながら近づいてくる者がいた。

もちろんミューゼである。

「どうしてここにいる?!」

「それはあと!!今は逃げることを考えて!!」

「何?!」

そこまで言ってエンゼットは気付いた。

彼女の後ろに何かがうずくまっている・・・それも大きい・・・

何だあれは?!

「あれは・・多分ここにあった『聖獣』の像に何かががとり憑いたものね・・・。

 まぁ、あんな姿だと『聖獣』っていうよりは魔物って言った方が正しいかもしんないけどね。」

確かに毛並みが血みたいに赤黒い『聖獣』なんてどこを探してもいないだろう。

さしずめあれは・・・そう『堕獣だじゅう』と言った方が正しい。

・・・ってこんなこと思っている場合じゃない。

「逃げるぞ!!」

「りょーかい!!」

二人は走り出した。

それぞれ、手にしっかりと武器を握って。

逃げ出した二人に気付いた『聖獣』----いや『堕獣』は

身を翻すと、勢いよく追い始めた。



突如、耳をおさえたくなるようなつんざく音は止んだ

「音が・・・止んだ?!」

シヴルのその言葉は嘆きのようだった。

まさか・・・まさか・・・?!

「ぎゃー!追ってきたーーー!!!」

「黙って走れ!!」

・・・・・・・・・大丈夫だったっぽいな。

心配して損した・・・・って

もう一人誰かいたような・・・・おまけにその誰かの声・・・聞いた事あるような・・・・・

「シヴル!あれ!」

突然リティが前方を指差した。

前から誰かやってくる・・・・。

あれは・・・・・・。

「エンゼット!!」

「・・・とミューゼさん?!」

まさしくあの姿はエンゼットとミューゼだった。

・・・っていうか何でミューゼがここにいるんだよ!!!

「あ、お、お前ら!!なんでここに!!」

エンゼットがなにやら焦った様にそう言ってくる。

「なんでここにって・・・・お前が突然いなくなるからだろうが!!

 昨日なにやら考え込んでいたと思ったら、まさかこんなことになるとは思いもしなかったわ!!」

「あー・・・いや・・・スマン・・・。」

シヴルの強烈な責めにエンゼットは苦笑しつつ謝罪した。

「で、なんでお前がここにいるんだよ!!」

その言葉と共に今度はミューゼに責めかかった。

「え?!そ、それは、その・・・・って今はそんなこと言ってる場合じゃないのよ!!

 早く逃げなきゃ!!」

「それってどういう・・・・・・・・」

リティは最後まで言えなかった。

「ウオオオオオオオォォォォォォン!!!!!」

四人のすぐそばに巨大な何かがいた。

巨大な黒い、獣が。

こめかみにひやりとしたものが流れるのをシヴルは感じた。



シヴル達から遅れて走っている者がいた。

シヴル達にここから立ち去るように警告した男である。

遠くでなにか叫び声が聞こえる。

ひとつは獣の叫び声

ひとつは・・・あの少年達の悲鳴である。

近いな。

男は腰につけている大剣に手をあてた。

あのような悲鳴が

絶望に変わっていくのは

もう、たくさんだ。

大剣を握る手に思わず力が入った。



「うわああああ!!!こっちくんな!あっちいけぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「オオオオオオオオオ!!!!!」

シヴルの必死の叫びにもお構えなしに動き出した『聖獣』の石像は

あちこち破壊しながら逃げる四人を追いかけてくる。

「だあああもおおおお!!!これでも喰らってろ!!!」

シヴルは剣を鞘から抜くと走りながら剣を天に掲げた。

『爆ぜる閃光、それは仇名す者を打ち抜く必殺の一撃!ブラストシュート!』

術式の完成と共にシヴルは剣を後ろに向けた。

剣先から一筋の閃光が放たれ、炸裂する!

だが

「グオオオオオオオオ!!!!!!」

全く効いていないようである。

「だめか・・・・!!」

四人はいったん立ち止まった。

このまま逃げていては埒が明かない!

こうなったら攻撃を当ててでもとにかく時間を稼ぐ!

「今度は私が!」

そう言いながら、リティも詠唱に入る。

「よし!」

同時にエンゼットも詠唱に入った。

『出でよ、悪しき者を貫く浄化の矢!ホーリーアロー!』

『来る炎は破壊を示す猛き爆炎の衝動!ノヴァフレイム!』

今度はリティの手の平から光の矢が、エンゼットのステッキから紅蓮の火球が炸裂する!

「グギャアアアアアアア?!」

効いてる!今のうちに!

「よし、にげ・・・・!」

「次はあたしよ!」

ミューゼの発言にシヴルはこけそうになった。

「ちょ、おま?!そんな暇は・・・!」

「黙って見てなさいって!!」

お構いなしにミューゼは武器を取り出し構えた。

そしてあるポーズをとった。

「何でそのポーズ?!」

シヴルがそう言うのも仕方なかった。

彼女がとったポーズ。

それはまさしくオーケストラでよく見かける指揮者のようだからである。

「ま、見てなさいって・・・・・・!」

そう言うと彼女は詠唱に入った。

『いざない、夢見て、汝、今、拘束する!』

「そ、その式は・・・!!」

「説明はあと!行くわよ!」

リティの言葉を制止して、ミューゼは両手を掲げ、術を発動する!

『ドリームピース!』

その瞬間、ミューゼの手の平から光の結晶が放たれた。

それは動く『聖獣』の石像を当たると瞬時に巨大化し、その巨体を包み込む!

その結晶の中で動く『聖獣』の石像は苦しそうにもがいた。

「こ・・・これは・・・・・!」

ミューゼの想定外の技にシヴルは開いた口が塞がらない。

「どーよわたしの実力は!」

ミューゼは三人に向かってVサインを出した。

「・・・ダメだ!逃げろ!!」

「え?」

エンゼットの叫びにミューゼは石像の方へ向いた。

シヴルとリティもそれにつられた。

その時、動く『聖獣』の口から

ごう、と黒い何かが吐きだされ

その場にいた四人すべてを包み込んだ。


「グウウウウ・・・・・・・」

自らの攻撃で結晶を破壊し『聖獣』―――いや『堕獣』は

今の攻撃で痛手を喰らい、気絶してしまったシヴル達にトドメを刺そうとしていた。

「ウウウ・・・・オオオオオオオオオオオ!!!!!」

『堕獣』は咆哮と共に鋭い爪のはえた前脚を振り上げた。

ガギン!!

鋭い、痛々しい音が遺跡に響き渡る。

だがその振り上げた前脚がシヴル達に向かう事はなかった。

その脚は付け根から斬られたのだ。

一人の男によって。

「ウオオオオオオ?!」

『堕獣』は前脚を失った事でバランスを失い、その場に崩れ落ちた。

『堕獣』は自らの脚が斬られたことに驚いているようだった。

男は―――シヴル達に警告した男はゆっくりと『堕獣』に向かって歩き始めた。

「さらばだ・・・。」

『堕獣』が最後に見たものは

男が剣を振り下ろす、その瞬間だった。


「いてて・・・・・・。」

シヴルは苦痛に呻きながらも、気がついた。

身体痛くて・・・起きられねぇ・・・・・・・

ん・・・・ちょっと待て・・・・なんで・・・・

・・・・・・なんで生きてる?

確かミューゼが何かすげえ技使って・・・

でも動く『聖獣』の石像の攻撃を喰らって・・・

それから・・・・・・・

それ・・・から・・・・・・・・

そうだ!ヤツは?!

シヴルは身体の痛みに堪えつつ起き上がり、周囲を見渡した。

「・・・!」

思わず目を疑った。

目の前には石の山があった。

だが、その石はひとつひとつ所々に何かの模様が刻まれていた。

そう、それはまさしく

あの動く『聖獣』のなれの果てだった。

「どうして・・・・・・・。」

なぜ、こうなった・・・・・?

一体誰が・・・・・

・・・・・・・っ!!!

「まさか・・・!」

考えが繋がったその時

「ん、うん・・・・・・・」

リティの呻き声が聞こえた。

彼女も痛みに耐えながらなんとか起き上がっている。

「シ、シヴル・・・・私達・・・どうして・・・?」

リティの質問にシヴルは黙りながら、動く『聖獣』の石像のなれの果てを利き手の親指でさした。

「え・・・?い、一体・・・」

「あー・・・ストップ。」

リティの言葉をシヴルは手で制した。

「とにかく回復術を頼む・・・・まだ気絶してる二人にもな。そして起きたらここを出ようぜ。

 もうここには用事はないんだ・・・。話は・・・・・村に戻ってからでいいだろ?」

シヴルの疲れ切った様なその口調に

リティは黙って頷くことしかできなかった。






オスィヨ、真王です。

いくら今年中だからって・・・すっげぇギリギリですみません^^;

しかも結構滅茶苦茶ですね・・・「なんで」とかすごく使った気がするし・・・・もうダメダメです・・・。

今回、『堕獣』という言葉と動く『聖獣』の石像という言葉を使い分けていますが、これはあくまで『堕獣』という言葉がエンゼットの作った造語ということにしてるのでシヴルサイドでその言葉を使うのはこの時点では一応避けています。

まぁ、次回からはしっかり使わせるようにはしますがね。

それでは、今年最後の作品をここまで読んでくださって本当にありがとうございました。

来年の更新も一応(笑)ご期待ください。では!

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