表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRAVE OF FANTASM  作者: 真王
15/33

第14幕 堕ちた聖域(前編)

まだ夜も明けぬ『清めの聖地セシュル』で

「・・・・・・・・」

エンゼットはただ、黙々と歩いていた。

聞こえるのはコツコツという靴が床を打つ音だけだった。

こういう遺跡にはよく魔物が棲みついているが、襲ってくる気配は一切感じられない。

まだ眠っているのか、それとも襲いかかるチャンスを狙っているのか。

・・・・何にしても、完全に日が昇り切る前には村へ戻らなくては。

だが今はまだ戻るわけにはいかない。

ここがそうならば

まだ何も見つけていないのだから。


「・・・・こんなとこまで来ちゃったけど・・・どうして一人で・・・・。」

柱の陰でミューゼがぼそり、と呟く。

夜更けに宿を出ていく彼を見て、思わずついてきたのだ。

もちろん部屋には書置きとチップをおいてきた。

「何か・・・探し物?」

少し先を歩いているエンゼットは何かしらどこかで立ち止まり、キョロキョロしている。

そして残念そうに首を振るとまた歩き出すのだ。

何か探しているとしか思えない。

だけど・・・・何を?

わざわざこんなところに、しかも仲間二人を村の宿に残して

一体何を探しているというのだろうか?

再び歩き出したエンゼットを、ミューゼは再びこっそりと追跡する。


空はやがて日が昇ろうとしていた。



「・・・・ここが・・・『清めの聖地セシュル』・・・・・」

崩れ、朽ちかけている門のような所で、シヴルは言った。

まさしくそこは聖地だった。

入口は猛々しい獣の銅像が立ち並び、所々の装飾は神々しい雰囲気を漂わせている。

残念なのは所々崩壊していることだろう。

「これだけあって昔の町のひと部分か・・・・すげえな・・・」

「そうですね・・・・正式には《入場口ゲート》だったようですけどね。」

「《入場口ゲート》?」

シヴルの言葉にリティは頷いた。

「ええ、存在したという太古の町は空の上に存在していたと伝えられていて、

 ここはあくまで聖地への玄関口にしか過ぎなかったようです。」

「空の上ねぇ・・・・どうして今はないんだ?」 

今度はリティは首を振った。

「色々と文献には残っていますが・・・長くなるので今は省略しますね。

 ただ言える事は、その町は突然、住人ごとこの世界から消えてしまったそうなんです。

 遺されたのはこの《入場口ゲート》だけで、この世界の人々は存在した聖地の事を忘れないように

 ここを聖地として崇められたそうです。」

「住人ごと突然消えた、ね・・・・。

 ・・・・なぁ、この地上にかつてそこにいた奴らの末裔て今もいると思うか?」

「そう・・・ですね。

 ごく少数は地上に残っていてそのまま生涯を全うした、という記録もありますから・・・・

 今、存在していてもおかしくは・・・・・・・シヴル・・まさか・・・・?」

シヴルは黙って頷いた。

「確証はないけどな。

 ただあいつの持っている能力・・・『魔術』を『創る』・・・・

 もしそれが昔存在したという太古の町に関係あるとしたら?」

「それじゃあ、エンゼットさんは・・・・・!」

「・・・まだあくまで仮説だ。本人に聞けば・・・わかることだよ・・!!」

そう言うとシヴルは遺跡の中へと歩き始めた。

リティは少し慌てながら、シヴルに続いた。



「・・・・これもダメか・・・。」

壁面に刻まれていた文字を解読しようと試みたが損傷が激しすぎ、解読はできなかった。

もうこれで・・・・・いくつめだっただろうか?

もうどれだけのものを見ただろうか。

どれも損傷が激しすぎ調べようがなかった。

遺された文献を頼りに捜しに捜してここを訪ねたというのに

結局、何もわからないのだろうか。

「はぁ・・・・。」

疲れがたまっていたのか、急に身体が重くなりその場に座り込んだ。

ふと気がつくとすでに日は昇っている。

しまった、と思ったが、疲れてしまった身体は動こうともしなかった。

これではあの二人に心配かけてしまうな・・・・。

ふぅ、と一息つくと、突然瞼が重く感じた。

・・・・眠くなってきた・・・。

いかん・・・・こんな・・・・ところでは・・・・・

しかし襲いかかる眠気に勝つことはできず、

エンゼットはその場で眠りこけてしまった。


「寝ちゃった・・・・・・。」

そう言いつつ、ミューゼは隠れていた柱の陰から出た。

こんな場所で寝るなんて・・・・・。

「おとなしく三人でくれば良かったのに・・・・・

 ったく、こんな場所で寝るといつ魔物が・・・・・。」

最後まで言えなかった。

周囲から気配を感じたからである。

最初は人―――あの二人だと思ったけど・・・・・・違う。

これは人の気配じゃない!!

「(それに・・・ただの魔物じゃない・・・?!)」

感じる気配は魔物のようだが、少し何か違うものが混ざっているようである。

何て言うか・・・神聖的な感じ・・・・?

その時だった。

ミューゼの真上から

とてつもない『何か』が彼女を覆った。



「どりゃ!!」

シヴルは襲いかかってきた魔物に切りかかった。

まるで案山子のお化けような魔物―――スケアクロウは斬撃で真っ二つになった。

『女神よ・・仇名す者に聖なる一撃を!・・・セイント!!』

リティも別の魔物に術を叩きこむ。

その魔物が光に包まれ、消えるのを見るとリティは再び術の詠唱に入った。

遺跡に入って、結構な数の魔物と遭遇した。

先ほども述べた案山子のようなお化けの魔物スケアクロウ。

自ら動きはしないが遠くから術で襲いかかってくるクリスタルのような魔物。

外見が蝙蝠と虫が混ざったようで目玉が大きく、超音波で攻撃するバッドアイ。

それらの魔物が二人に襲いかかってきたのだ。

しかしここでやられるわけにはいかない。

二人は襲いかかってくる魔物を次々と撃退していったのだ。

「ほっ!!」

掛け声と共にシヴルはバッドアイを撃退する。

これで今襲いかかってきた魔物の最後の一匹だったようだ。

「ふー・・・これでよしっと・・・。」

そう言いながら、シヴルは剣を鞘にしまった。

いくら不思議な剣の力を借りてるからって、

こんなに襲いかかってきたらいくらなんでもキツイって・・・・。

「それにしても、エンゼット・・・どこにいるんだろな?」

「ここまで来てもいませんでしたからね・・・・もっと奥の方でしょうか?」

「だな・・・もっと奥に行ってみよう。」

「はい。」

二人は再び歩き始めた。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

靴が床を打つ音だけが遺跡の廊下に響く。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

どこからかピチャン、と水滴が滴る音が聞こえる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

すぐ近くで何かが軽く崩れる音が聞こえた。

「・・・・・・・・・あの・・シヴル。」

いやな沈黙を破ったのはリティだった。

「どした?」

シヴルはそう言った。

「・・・どうして黙ってるんですか?」

「どうして黙ってるんですかって・・・特に喋ることなんてないし・・・。」

「それはそうですけど・・・・。」

リティは何かごにょごにょと口ごもる。

もしかしたら・・・・・

「・・・怖いのか?こういう雰囲気。」

「・・・・・ええ・・・まぁ・・・・。」

「聖職者なのにか?」

「そうじゃなくて・・・なんかこんな静かなのは・・・少し怖いんです・・・。

 ・・・『白い孤児院』にいた頃を思い出して・・・。」

「え?」

しまった、と思ったが既に遅くリティは話し始めてしまった

「静かにしていると、遠くで研究者たちの話し声が聞こえてくるんです・・・・。

 その内容は・・・今思い出すだけでも・・・・・。」

「ストップ。」

シヴルはリティの話を無理矢理やめさせた。

別にこんな話をさせようと思ったわけでもない。 

ほんの少しからかってやろうかなと思ったら、こんなことになってしまった。

「・・・なんか・・・ごめん。」

咄嗟にそう言って謝る。

「・・・・すいません。私こそ・・・突然こんな話をして・・・・・・。」

リティも本当に申し訳そうに謝る。

「いや、別に・・・・・・って悪いのはこっちなんだから

 別にそっちが謝ることじゃないって!」

「ですが、何か謝るようなことをさせてしまったのならこちらにも・・・・」

「だからいいって!!

 ・・・そうだ!この前、孤児院のみんなで肝試しをしたんだけどな・・・!」

「まぁ、肝試しですか・・・。」

よっしゃ!!話転換大成功!!!

シヴルは心の中でガッツポーズをした。

「そーそー!!

 でさ、子供達あいつら、を驚かそうと廊下の曲がり角で待ち伏せしててさ、

 子供達あいつらがそこを曲がろうとした瞬間・・・・。」

「おい」

「そうそう、『おい』って・・・・あれ?」

ちょっと待て、今の声なんだ。

「シヴル、そんな野太い声で子供達を驚かしたんですか?」

「いや今のは俺じゃ・・・・・・」

確かに角曲がりかけて野太い声で『おい』とかびびるけどさ・・・

ってそうじゃない!!

「誰だ?!」

シヴルは辺りを見渡す。

「後ろだ。」

「え・・・・・うぉっ??!!」

そう言われ、後ろを向くと誰かいた。

シヴルはリティをかばいつつ後ずさった。

「ま・・・マジで、誰なんだよ!!」

思わず声が裏返っているのが自分でもわかる。

話しかけてきたのは男だった。

顔はちょうど中年――30代半ばから40代前半くらいで、なんか鋭い眼をしている。

黒みのかかった茶色い髪がざんばらになっている。

そして・・・大きなマントを身体に纏っていて何を身につけているのかよくわからない。

だが広めの肩のラインでそれなりにがっしりとした身体つきでありそうだ・・・・・多分。

・・・・マジで誰なんだ・・・・・。

こういう時のお約束事って・・・・

「ここは子供が来るような所じゃない。今すぐここから出た方がいい。」

ですよねーーー・・・・・・

でも、はいそうですかというワケにはいかない。

「だけど、仲間が多分・・・だけどこの遺跡の奥にいるはずなんだ。

 ここで帰るわけには・・・・・。」

シヴルがそう言うと、男は目を細めた。 

「奥に誰かいるのか?・・・マズイな・・・・。」

「・・・この奥に何かあるんですか?」

リティの言葉に、男は「ああ」と言った。

「最近、この遺跡の奥にある『聖獣』の石像にタチの悪いモノが取り憑いたらしく、

 実体化して、ここに入ってきた学者や冒険者を次々と襲いかかっているらしい。

 ここ数日で数十件の被害が出ているらしいが・・・知らなかったのか?」

そんなこと知るはずない。リティの方を向くと彼女も首を横に振った。

だとしたら・・・・。

その時だった。

ズウゥゥゥゥゥン・・・・ッッ!!!

遺跡の奥の方で何かが聞こえる。そして

オオオオオオ・・・・・ン!!!!!!!

何かの叫び声のようなものが聞こえてきた。

「・・・エンゼット!!!」

シヴルはおもむろに走り出した。

「シヴル?!待って!!!」

リティも突然走り出したシヴルに続く。

その場には男だけが残された。

「シヴル・・・・・?」

男はただ、そう呟いた。

そして何か考え込むような仕草をすると、

何かを決めたような顔をして、自らもシヴル達が向かった遺跡の奥へと向かい始めた。


何にしても、ここで死なせてしまうわけにはいかない。

いや、死なせるわけにはいかないのだ。



今、この廊下に響いているのは男が走る時に鳴らす足音だけである。






はいそんなわけで(どんなわけだ)ハロー、真王でーっす。

今回も前後編でお送りします。

ホントはちゃんと一話で終わらせようとしたんですけどね・・・いろいろ構成してたらなんか長ったらしくなっちゃって・・・これでも結構カットした方なんです。なんでこんなややこしくしちゃったんだろうかwww

最後が相変わらずこじつけ全開なのは黙ってスルーしてください(笑)

今回もここまで読んでくださってありがとうございました。

後編は頑張って年内にも更新するつもりです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ