第11幕 良薬口苦しとはよく言いますが
「・・・ふーむ・・・。」
港入り口の船の出港時間の書いて貼り出されている紙を見て、シヴルはそう唸った。
『東大陸行き・一般客船アクセル号
現在、海上にて酷い荒れが確認されており、
朝の出港はすべて休航とさせていただきます。
第一便は昼の刻より出港いたします。
お急ぎのお客様、大変申し訳ありません。
ご了承をお願いいたします。
クロッティ港より』
要するに、今日に限ってここに来るのは早かったということか。
「と言う訳で、どうする?」
シヴルは後ろにいるリティとエンゼットにそう話しかけた。
「お昼までは・・・まだ随分時間がありますね・・・・。」
「結構早めに宿屋を出たからな。・・・・観光でもするか?」
エンゼットの意見に、シヴルは「むぅ・・・」と再び唸った。
「観光ね・・・・例えば?」
今度はシヴルが意見を返した。
「ここクロッティは酒が有名だな。
中でも、名酒といわれる酒が存在してな・・・。」
その意見にシヴルは
「却下。俺それにリティも、まだそんな酒なんて飲んでいいような年齢じゃないし。」
そう言われ、エンゼットは
「それでは、有名中の有名といわれる魚料理を・・・。」
再び意見を挙げる。だが
「さっき・・朝食ったばっかじゃん・・・・。」
ため息混じりでそう返された。
さすがに朝っぱらから豪勢な魚料理はキツイ。
さて、本当にどうしたものか・・・・。
「・・・あの・・・じゃあ、海岸に行ってみませんか?」
今度はリティがそう言った。
「「・・・海?」」
シヴルとエンゼットの声が同時に発せられる。おまけにどこか嫌そうに。
「えっと・・・私、孤児院でずっと生活していたので、
こんな海の近くに来ることなんて・・・今までなかったんです。
海なんて本でしか見たことなかったですし・・・・・。
それにヴィアスに行く時は、海なんて見て楽しむ余裕なんてありませんでしたし・・・。」
「「・・・・・・・・」」
リティの話を黙って聞く二人。
さすがにリティもその反応に焦りを感じた。
「・・・いいよ。じゃ、それで。」
「・・だな。」
二人はそう返事をした。
突然のその反応にリティは今度は驚きを感じた。
「あの・・・いいんですか?こんなことで・・・・。」
こんなこと?
とんでもない。
「行きたいんだろ?」
満面の笑みでそう言うシヴルに
「・・・・はい!!」
リティは満面の笑みでそう返した。
リティの意見により、海岸へ行くことになった三人は、
クロッティを出てすぐにある『ブルーエクストルビーチ』に向かった。
海のシーズンは少し前に終わったが、まだ水がとても冷たく感じたくなるような時期でもないだろう。
到着と同時にリティは思わず
「わぁ・・・・。」
と声を上げた。
透き通るような蒼い海。
心地よいリズムを刻む波の音。
少し冷たいが、ほんのり潮の香りがする風。
さらさらと砂が風に舞う白い砂浜。
そして、その砂浜のド真ん中にうつ伏せでぶっ倒れている人。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちょっと待て。
最後のおかしいぞ。
っていうか・・・・・・・
「なんで人が倒れてるんだよ!!」
「季節外れの日光浴か?」
「そんなわけあるか!!」
エンゼットのボケとしか思えないセリフに思わず、シヴルはツッコミをいれた。
先ほども述べたが海のシーズンは終わっているのだ。
それに日光浴ならばなんで服着たままうつ伏せはいくらなんでもない。
ってそんなことより
「おい!大丈夫か!!」
今はぶっ倒れている人を助けるのが先決である。
・・・・到底、こういう展開にはとんでもない展開が待っているのが王道だが。
倒れていたのはどうやら少女のようだった。
外見的にはシヴルより年上で、エンゼットよりかは年下というところか。
服装は・・・なんか結構奇抜な格好だった。
所々に音符やら休符やら、音楽記号を模したオプションがついている。
「どうなんです?」
倒れていた少女を介抱するシヴルにリティは心配そうに言う。
「んー・・・なんか気絶してるだけみたいだけど・・・・・
なんていうか、何か変なものを食べてぶっ倒れたといった所かな・・・?」
「詳しいな。」
シヴルの説明にエンゼットは言った。
「学院で勉強してたのは、魔術とかだけじゃないってことだよ・・・。
・・・・これか・・。」
シヴルは少女が手に持っていた物を手にとった。
どうやらそれは塩焼きにされた魚のようだった。
「魚・・・ですか?」
リティの質問に、シヴルは頷いた。
「こいつは『ドクカマス』っていう魚で、ちょっとしたクセを持つ魚なんだ。」
「ちょっとしたクセ?何だ、それは?」
今度はエンゼットの質問に、シヴルはどこか恐ろしいものを言うかのような表情になった。
そんなにヤバイものなのか・・・?
「壊滅的に、マズイ。そのため食用には向かない。」
・・・・・・・・・
つまりだ。
この少女はどうにかしてこの魚を手に入れたのだろう。
そしてこの海岸で焼いて食べた。
結果、あまりの不味さに気絶した。
「・・・ま、ほっときゃ起きるだろ。
せめて胃薬でも作って、町に運んでやるか。」
「胃薬って・・・・シヴル、作れるのか?」
「まぁ、そこそこはな。」
そう言いつつ、シヴルは辺りを見渡した。
「発見・・・エンゼット、あの木になっている葉っぱと青い実を採ってきてくれないか?」
シヴルはここから少し離れたところにある木を指差した。
「え?あ、ああ。」
エンゼットは急ぎ足で実のなっている木へと向かった。
「リティは・・・確か持ち物の中に水の入った水筒があったはずだから、
それを沸かしてくれ。あんまり熱くしなくていいからな。」
「は、はい。」
そう言われると、リティはいそいそと水筒を取り出すと、
沸かすためにポットを用意し始めた。
「さてと・・うまく作れるかな・・?」
作り方は簡単だった。
エンゼットが採ってきた実を切り、果汁を搾って器に入れる。
今度はその葉をすりつぶし、それを果汁の入った器に入れ、混ぜる。
あとは、リティが程よく沸かしたお湯をその器に入れれば・・・・
「完成・・・イクシー印の特製薬汁・・。」
どうやら、シヴルの育った孤児院ではお馴染みの物らしい。
器の中は濃厚な青い色が支配しており、
いかにも毒が入ってますと言われても違和感など無いものだった。
本当に大丈夫なのだろうか・・・。
リティとエンゼットは心配しつつ、少女に薬汁(らしいもの)を飲ませるシヴルを見守った。
少女の口にゆっくりと、薬汁(らしいもの)が流し込まれていく・・・・・。
「・・・・・・!!!!!!」
突如、閉じていた少女の目がカッ、と開いた。そして
「dfじゅgきgstksぽgsdfhgskぅj?!??!!??!?!?」
訳のわからない言葉を発しつつ、その場に立ちあがり、のたうち回る。
「@pl:y・¥:;」:;r@yr@r・・・・・・・!!!!!!!!!」
そして今度は走り出し、その場にへたり込む
「うぉえええぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・!!!!」
すざましき声を上げながら、胃の中の物を吐いた。
「・・・・・よくおなか壊した時さ、院長先生によく飲まされたよ・・・。
いやに甘くて、激しく苦くて、致命的にマズイ・・・・・。
それを吐かずに飲みきれ・・・なんてさ・・・・・。」
ぽつぽつとそう語るシヴルはどこか遠くを見ているようだった。
良薬口苦し、とはよくいうが
ただ苦けりゃいいというものではない、とリティとエンゼットは悟った。
とにかく、胃の中のドクカマスをきれいに吐きだした少女は
しばらくしてようやく落ち着きを取り戻した。
「・・・助けてくれてどうもありがとう。おかげで助かったわ。」
差し出したお茶をあっという間に飲み干し、少女はお礼を言った。
「まぁ無事でよかった。
それより、なぜドクカマスなんか口にしたんだ?」
エンゼットにそう言われると、少女はバツが悪そうに頭をかきながら言った。
「いやー、新鮮な有名なクロッティに来たんだからさ、
折角だし釣りをして、釣った魚を食べようかなーって思ってさ・・・・。」
「そしてドクカマスを釣って見事に当たった、と。」
シヴルの少しあきれた言葉に、少女は「えへへー」と返した。
「・・・・ドクカマスって焼いたら、それなりの異臭を放つはずだけどさ・・・・
気付かなかったのか?」
「そうなの?結構美味しそうな匂いだったけど?」
マジかよ、オイ。
もはや突っ込む気力はなかった。
「それより、こうなったのも何かの縁だし、折角だから一緒に食事でもどう?
もうお昼だし・・・・。」
何?もう・・・昼?!
気がつけば、まだやや低かった日の光は
高々と天高く昇っていた。
「もちろんこっちのオゴリ・・・・・「・・・しまったああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
少女の話を突然の大声で打ち消し、シヴルは町に向かって走り始めた。
「あ、ま、待て!!!」
状況を察したエンゼットも急いで、シヴルを追う。
「え?!あ・・・そ、それでは失礼します!!!」
リティは少女にそれだけ言うと、二人に続く。
こうして、海岸にぽつんと残された少女。
「ちょ・・・・・・一体どうしたってのよ・・・?」
少女は突然走り出した三人が気になったのか、
少しだけ考えると町に向かって走り出した。
東大陸行き・一般客船アクセル号出港まで
―――――――あと10分を切った。
サルウェ!! 真王でございます。
今回はギャグですね。わかります。
確かに苦い薬はいい薬ではありますよね。嫌に甘く苦い薬というのもありますが。
私は苦い薬は大丈夫ですが、嫌に臭う薬は苦手です。
昔食後に飲んだら、食べたものすべて吐きましたwww
それ以降、そんな薬はいくら医者から処方されてもスルーしてます(コラ)
誰がどう言おうと、嫌なものは嫌です。
今回もここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
意見、感想、苦情(笑)がありましたらよろしくお願いします。




