2-14 アクサナ
「「あ!!」」
レファリアとミルクークスは同時に声を上げる。
……が、直後の二人の反応は全く正反対のものだった。
マントから手を離したミルクークスは、レファリアの右腕を睨みつけて小さな身体から威圧感を滲み出す。対してレファリアは数歩距離を取って、見られてはいけないものを見られてしまったと言わんばかりにバツの悪そうな表情を浮かべる。
アクサナにも彼の右腕がハッキリと見えた。
(あれは……)
艶の全くない黒色の表皮。手の甲に灯る赤い光点。そして何より、手先から伸びる、肉食獣のように鋭利な鉤爪。
あれはマントの影の所為でも皮膚病に罹っているわけでもない。アクサナにはその右腕に見覚えがあった。魔導院で上位存在を討伐しに第一魔法実験場へ行った際、狭間亭からの派遣と思われる黒衣を纏った雑種が振るっていたそれである。
彼が、バーニスが言っていた悪魔憑きだったのだ。
少しでも頭が回れば彼が狭間亭に入ってきたときに分かっただろう。なにせ半身をマントで覆っているような人間は調停騎士くらいなものなのだから。
しかし、今日のアクサナはナハトの監視のことで頭が一杯だった。狭間亭の前を一度通り過ぎてしまうほどだ、分からなかったとしても無理はないだろう。そもそも、アクサナの目の前にいる女の子と見間違えてしまうような可憐な少年が、悪魔の軍勢を相手に大立ち回りする姿など誰が思い浮かべようか。
「……アンタ、その腕」
瞳を細めたミルクークスが、先程までの明るい声とは対照的な、敵愾心を多分に含んだ声で威圧的に言葉を発する。それだけで部屋の温度が急速に冷えてゆくような気がした。
「こ、これは……その……」
「―――知らなかったよ。まさかアンタも悪魔に関係する人間だとはね」
狭間亭から注文された商品であるにもかかわらず床に散らばった金物を拾おうともしないミルクークスは、脚を少し開いて体勢を低くとる。少女らしい彼女の姿からは想像も出来ないほどの気迫と鋭い視線は、彼女が幾度となく死線を潜り抜けてきたことを分からせるに十分すぎるものだった。
「悪魔には―――」
ミルクークスが渇いた唇を小さく開く。
その瞬間、アクサナは自分の目を疑った。
―――銀色が、彼女の両手へ収束してゆく。
どこからともなく湧いて出てきた銀の粒子は、ミルクークスの手中に凝固してゆく。それが棒状に形をとると、程なくしてミルクークスの身の丈より少し短いくらいの銀の長剣を二本生み出した。
「―――死んでもらおうかっ!!」
「ひぇっ!?」
突如、ミルクークスが銀閃を振るう。
椅子から転げ落ち、無様ながらも危ういところで回避したアクサナは、訳も分からずレファリアに視線を移す。
「うわっ!? ちょ、ちょっと―――くっ!!」
彼は薙ぎ払いを屈んで回避すると、続く振り下ろしを悪魔の鉤爪で受け止めた。剣の切っ先によって天井が少し削り取られる。
木片舞い散る中、ミルクークスは店への被害など考えずに次々と剣を振った。テーブルが二つに割れ、椅子の足が欠け、階段の手すりを壊してもレファリアを攻撃し続ける。狭所だというのに二本の剣を振り回すことが出来ているのは、彼女の力量を示す材料となりえるだろう。
対してレファリアは防戦一方だった。止まない剣戟を避け、受け止めて、なんとか攻撃を凌いでいるといったところ。魔導院で上位存在と戦っていた時の動きのキレは見られない。
(あ、あれは《魔武器創造》の魔法!? いやいや、にしても魔法陣もなしに使えるはずないでありますよっ!!)
急ぎカウンターに身を隠したアクサナは、顔半分だけ覗かせて成り行きを見守っていた。
ティーカップが割れていたり雑貨の類が散らばってしまっていたりとフィアーレットに申し訳なく思う。その反面、全身鎧が突っ伏している机にだけ被害が殆どないことに驚愕していた。
従業員は誰一人として出てこない。ナハトは外出中だとして、カルマやシャノアールも買い物に行っているのだろうか。しかしそれでもフィアーレットは残っているはずで、かといって彼女に助けを求めに行っても何の解決にもならないような気がする。
「―――くそっ!!」
悪態を吐く声に目を向ければ、レファリアはミルクークスの振り下ろしを右腕で弾いたところだった。そしてもう一本での攻撃が届く前に、彼はまだ明るい店外へと跳びだす。間髪入れず、ミルクークスは追撃するために外へ出た。
(ど、どうしてミルクークスちゃんは悪魔を? し、《深淵歩き》を追っているんですかな? ……いや、もしかすると《大地信仰》を……?)
急に静けさが訪れた店内で思案するも、今はそれどころではないと気付く。
このままではレファリアが―――ナハトの下で働く従業員であり、悪魔憑きのサンプルでもある彼の命が危ない。
アクサナは殆ど損害の無かった全身鎧の元へと急ぐ。未だに彼は欠けた机に突っ伏していて、どういうバランス感覚があるのか、背もたれと足一本を切り取られた椅子に座っていた。
「ちょ、ちょっと起きて! 大変なことになったでありますっ!」
「……何だ?」
(今の騒ぎでどうして聞いてないんだ、バカヤローっ!!)
内心で罵倒しつつも、アクサナは顔を上げようとしない全身鎧の男の肩を思い切り揺さぶった。
「ここの従業員の子が襲われてる! 助けるの手伝って!!」
「襲われてる? 暴漢にか?」
何が彼の琴線に触れたのか。そんなどうでもいいことは放っておくとして、とにかく全身鎧の男はアクサナの言葉に反応し、顔を上げた。
「相手は男じゃないけど、命を狙われてるのは確かでありますよ!」
ミルクークスの身のこなし。そして彼女が使った魔法らしきもの。
あれらは素人の業ではなかった。身の丈ほどの剣を両手に持って軽々振り回しているのは魔法的な効力――例えば、《魔武器創造》の魔法であれば、魔法の使用者のみが重さを感じずに生成した武器を使用することが出来るように――だろうが、それでも軽業師が如き俊敏さを武器に戦っていたレファリアを相手に長剣で圧倒できるということはかなりの実力者と見て間違いない。
要するに、アクサナでは手も足も出ない相手なのだ。
無力な自分一人では何もできない。出来るのは、今も昔も他人を利用することだけ。
「―――勇者として見過ごせないな! どこだ、案内してくれ!」
自分の無力さに歯噛みするアクサナの心情を知ってか知らずか、椅子を突き飛ばしながら勢いよく立ち上がった全身鎧の男はいち早く店外へ走った。どうやらこの男、耳が遠いうえに情緒不安定かつ妄想癖があるらしい。自称勇者ほど信じられないものない。そもそも勇者は自分のことを勇者とは呼ばない。
が、今はその言葉を信じるしかなかった。全身鎧を着込んでいるということは金があるということ。金があるということは、商人には見えないから、開拓者としてある程度の実力はあるということだろう。
アクサナも暗く光る鋼鉄の背中を追いかけようとして、
「あ、あれ? 皆さん? え、何がどうなって……?」
背後から聞こえてきたフィアーレットの戸惑う声に振り返る。
彼女の手にはお盆が。そしてその上にはマグカップが一つ。きっとレファリアのために用意したものだろう。
しかしながら店外から響く、早く来い、とは全身鎧の言。
「あー……フィアちゃん! ちょっとレファリア君が大変なことになってるから! ナハトっちには後で謝りに来るって言っておいて!!」
事情を説明している暇などあるわけも無く、「ちょ、ちょっとアクサナさん!?」との言葉を置き去りにしてアクサナも全身鎧の男の後を追った。
「どこへ行った?」
「ちょい待って! えっと……」
外に出るやいなや、井戸の前で全身鎧の男が訊いてくる。
狐尾種のように耳の長い種族は聴力に優れている。正確な位置こそわからないが、剣を持った人間がいるともなればいつもと違ったどよめきが生まれているだろう。本格的に戦闘が始まれば金属音が響くはずだ。それらの方向に向かっていけば、いつかは二人に追いつけるはず。
アクサナは頭上に伸びる細長い耳の後ろに手を当てた。その行為で聴力が向上するわけではないのだが、こうすると意識を集中できるものである。
「―――向こう!」
アクサナが指差した先は、大通りとは別方向の道。考えてみれば、あの悪魔の腕で人通りの多い所には向かえないだろう。
「俺が先を行く。アンタは後ろから指示してくれ」
「りょ、了解であります!」
言うと、黒鉄の全身鎧は駆け出した。その速度は重装備の人間とは思えないほどで、全力で走らなければアクサナも追いつけない。そして驚くべきことに、彼の鎧からは五月蝿い金属音が響いてこなかった。
この男、かなりの実力者かもしれない―――思えば、この都市で全身鎧を着込んでいる人間なんて大鷲騎士団長のゼグラと灰狼騎士団長フェインくらいなものである。ならば、安直な考えかもしれないが、目の前を走る全身鎧の男も団長クラスには強いはずだ。
強いんだったら、全力で走りながら聴覚探知を行わなければならないアクサナに少しは配慮して少しゆっくり走ってくれればいいものを、と内心で毒づいて彼の背中を睨みつける。
そこでアクサナは重要なことに気付いた。
「ちょっとお兄さん、武器は!?」
狭い路地を歩くのは大抵、古くから都市に住んでいる人間か開拓者、または犯罪者の類だ。そういった人々は基本的に、自分の身を守るための武器を携えている。ここは商業都市という土地柄、あらゆる人間が流入してくるために都市内部とは言え安全ではないのである。それでも未開拓地とは天と地ほどの差があるが。
ちらほらとすれ違う人々はその例に漏れず、全員が武器を提げていた。では全身鎧の男はどうかと言えば、どこにも武器は見られない。まさか全身鎧を着込んでまで肉弾戦を好むわけでもあるまいし、ならば忘れてきたと考えるのが道理だろう。
「あ……抜かった! 三日後には新しい刀が届く予定だったのだが……!」
「ちょっと、そんなんで大丈夫なの!?」
相手は魔法で生み出した武器を使ってくるのだ。いくら全身を鋼鉄で覆っているからと言って、打撃武器で打擲されようものなら肉体への衝撃は計り知れないものになる。
「……ああ、大丈夫だ!」
アクサナの指示で路地を曲がると、進行方向に一人の開拓者らしき青年がいた。腰には剣を提げている。その青年が振り返って首を傾げているところを見るに、アクサナたちが進んでいる方向に間違いはないようだ。
その脇を通り過ぎようとした、その時。
「―――御免!」
全身鎧の男は青年の剣の柄を逆手で持つと、走りながら引き抜いた。
「え? ……あ、ちょっと!!」
青年の声が虚しく路地に谺する。無論、二人は足を止めない。
抜き身の剣を持ちながら男は狭い路地を走り続けた。都市内を剣を振り回して走っている全身鎧など狂人でしかなかったが、流石のアクサナも今はそれについて言及するつもりはない。
走り続けること数十分。
息も絶え絶えになりながらも、使命感を気力と変えて走り続けたアクサナたちは貧民街へと突入していた。普段のアクサナならばこれほどの時間で到着することなど出来ないだろうが、今回は限界を超えて走り続けたのといつもならば使わないような路地も構わず使ったことが幸いした。
貧民街は非常に入り組んだ構造になっている。
貧民街の入り口ではすぐに長い下り階段が来訪者を出迎えてくれるにも拘らず、どういうわけか建築物の高さは奥に進んでも変わらないままなのだ。これは奥に行けば行くほど家屋が積み重ねられて出来ていることを意味しており、今にも崩れ落ちてきそうな造形ながら貧民層は何でもないような顔をしてここで暮らしている。
湾曲した大地に構築された家屋の深林は薄暗く入り組んでいて、腸を連想させるようにグネグネと曲がっていた。少し走れば幾つもの階段を見つけることができ、上にも下にも道がある。
「―――その先、すぐ!」
「承知!」
最後の気力を振り絞ってアクサナが大声で叫ぶと、ロートスブレードはいち早く突き当りを曲がった。
アクサナも壁に手を突いて乱れた呼吸を必死に整えながら覗き込むと、そこには体勢の崩れたレファリアに斬りかかるミルクークスの姿が。
剣が振り下ろされる―――間一髪のところで全身鎧の男が彼女の長剣を弾く。
突然の闖入者にも驚かず、冷静に距離を取ったミルクークスは両手の長剣を霧散させた。対して、レファリアに少し下がるよう指示した全身鎧の男は通りすがりの青年から引っ手繰った剣を下段に構える。
「……邪魔をする気かい?」
相変わらず凍てつくような低い声で問うミルクークス。
邪魔にならないように距離を取っているアクサナですら逃げてしまいたくなるその重圧に、しかし全身鎧の男は全く動じなかった。
「弱きを助け、強きを挫く。これこそ勇者の為すべきこと」
「そいつは悪魔憑きだよ」
「この状況、どちらが悪か断ずることなど易い」
従業員が暴漢に襲われている―――アクサナが最初にかけた言葉が刷り込みになってしまっているらしいが、それはそれで都合が良かった。なんにせよ、今はレファリアを救うことが第一目標なのだから。
切っ先を地面に向けたまま微動もしない全身鎧の男を、ミルクークスは鼻で笑った。
「……そうかい。まあ、邪魔をするなら容赦は―――しないよっ!!」
―――瞬間、彼女の周囲に三本の槍が現れる。
地面につき立ったそれらの内、二本を両手で掴むと、男に向かって同時に投げつけた。質量を全く感じていないからこそ出来る芸当だ。
迫る槍。男は動かない。
二条の銀閃が全身鎧の男に吸い込まれるように飛んでゆく―――衝突の直前、槍は軌道を変えて上空に弾け、消えた。
男が手に持っていた剣で高速に弾いたのだ。戦士でもないアクサナでは、よく見ていなければ剣が振られたことすら分からないほどの速度だった。
下段の構えに戻った男。
だがミルクークスも負けておらず、男が槍の対処をしていた間に残り一本を持って肉薄していて、至近距離から突きを放つ。剣の間合いに入らないところを見るに、彼女も相当の手練れだ。
しかしその突きは再び防がれる。突き出したミルクークスの手から槍は一瞬にして消え去り、金属音を置き去りにした槍は先程と同じように上空で霧散した。
無闇に白兵戦を挑める相手ではないと感じたのだろう、ミルクークスは後方に跳躍しつつ両手に銀の粒子を集める。その銀が形を創ると、一瞬にして八本のナイフが彼女の指の間に現れた。
「ふっ!」
短い呼気と共に、それらのナイフを投げつける。
だがやはり全身鎧は動じず、八条の軌跡を二振りのもとに打ち上げた。
さらにミルクークスは長剣、槍、さらにはメイスまでもを投げつける。それらは全て男が捌き、背後にいるレファリアに届くことなく上空で霧散した。左右に散らさないのはレファリアやアクサナへの配慮だろうか。
「やるね。だけど、これならどうだい!」
幾本もの銀閃を尽く弾かれたミルクークスは、細々(こまごま)とした武器の生成を止めると右手を天に向かって突き上げた。
銀の粒子が収束してゆく。そこに現れたのは、先程まで彼女が投げていた物とは比にならない大きさの、丸太のように太い槍だった。
どうやら彼女は、全身鎧の男を巻き込みながらレファリアに攻撃するつもりらしい。そんなことをすれば奇跡的なバランスで成り立っている貧民街にどれだけの損害が出るか分かったものではないが、彼女はそんなこと気にしていないのだろう。都市巡邏の番犬騎士も、入り組んだ貧民街へは滅多に足を運ばない。
「止められるものなら、止めてみなっ!!」
ミルクークスは豪槍を投擲する。
路地を埋めんばかりの槍は脆い家屋の外壁を削り取りながら直進する。さながらアクサナたちを押しつぶすための擂粉木のようだ。
さすがにこれは防ぎきれない―――アクサナが曲がり角を一歩後退しようとした瞬間、全身鎧の男は逆に一歩大きく踏み出した。
剣を大きく引きながら上体を沈める。さらに捻りを加え、力を蓄えた。
「―――キェェェェェェエエエエエエエエエイ!!」
裂帛の気合いを放出させ、男は豪槍を下から切り上げる。
剣は槍を打ち上げようとし、槍は男を貫こうとする。二者の武器はそれぞれが意思を持っているかのように火花を散らす。
果たして、勝者は男の剣であった。
豪槍は健闘虚しく空中に投げ出され、力を失ったかのように粒子となって消え失せる。
「―――甘かったね!」
大きく剣を振り上げた体勢で残身を取る男―――その懐に、ミルクークスが飛び込んでいた。手には鎧の隙間を縫うための鎧通し。
先程の巨大な槍は、男に隙を生み出すための囮だったのだ。
「危ないっ!!」
レファリアが叫ぶも、遅かった。
ミルクークスの刺突が男の腹部に突き刺さる。
硬質な鎧と銀の鍔が打ち合わされ、金属音が何重にも路地に響き渡る。
にやり、と笑うミルクークス―――次の瞬間、その目は大きく見開かれた。
男が、何事もなかったかのように剣を振り下ろしたのだ。
鎧通しから手を離して反射的に後方へと跳躍したミルクークスの表情は、驚愕から次第に憎悪へ変化してゆく。
ロートスブレードの腹部に突き刺さっていた鎧通しは地面に落ちた。その刀身に、血は付着していない。
「……まさか、アンタも人間じゃないとはね」
(人間じゃ……ない?)
では、あの鎧の中には何が隠されているというのだろうか。悪魔か? それとも、それ以外か?
困惑するアクサナとレファリアを余所に、二人は互いを警戒しながらも言葉を交わす。
「人間でないことは悪ではない。何故なら、人間はもっとも狡猾で罪深き種族であるからだ」
「どうかな。悪魔なんて自分の欲望を剥き出しにして生きる存在じゃないか。それが罪深くないって? 笑わせるね」
「人間に非ざること。それ即ち、法による罪を負うことはないということ」
「屁理屈だね。アンタ、哲学者かい?」
「いや。俺は開拓者だ」
「ならそれらしく、力で決着をつけようじゃないか」
「望むところ」
男は下段で構えていた剣をゆっくりと頭上へと持ち上げる。一刀のもとに切り伏せる、そんな意思が彼の構えからは感じ取れる。
それを見て男が本気になったことを感じ取ったのか、ミルクークスは両手に二本の長剣を創造した。狭間亭で使っていた剣よりも長いものだ。あれが彼女の最もよく使う武器なのだろう。
両者は睨み合い、互いの出方を窺っていた。それは強者にのみ許された行いであり、互いの力量が優れたものになればなるほど雌雄を決するのに要する時間が少なくなるため、読み合いが重要になってくるものなのだ。
「「…………」」
沈黙が路地を包み込む。
薄暗い貧民街の路地で、まずは全身鎧の男が摺足で距離を詰める―――
「―――そこまでだ」
声がした。




