エピソード001「プロローグ」
ここはロンドン動物園近くの水路、
10月の早朝7時、ナロー・ボートの見習い船頭「ピーター」は、修理が終ったばかりの観光周遊用ボートを試し運転していた。
カムデンタウンから、リトルベニスへ向う、お決まりのコース、
ピーターは、橋の下に放置された見慣れない「大型保冷コンテナ」を発見する。
歩いては近寄れない筈の「こんな場所」に、一体誰が? 何を?隠したのだろう?
ピーターは面白興味半分に、橋の下の狭いスペースに接岸し、ボートの上からそっと、そのコンテナの蓋を、開けてみた。
ピーター:「うっあっ!」
中に入っていたのは、全裸で、脳死状態の女、英国留学中の日本人学生「市村早妃」。
特に目立った外傷は無かったものの、調査の結果、幾つかの内臓が抜き取られている事が分かった。
ニュー・スコットランド・ヤードは、一般への公表は控え、内臓売買事件として秘密裏に調査を開始する。
それから1ヶ月後、
被害者の遺族は、十分な「事情説明」が得られない事に業を煮やして、現地に私立探偵を送り込む。
初老のベテラン(刑事崩れ)「岡本」と通訳と実践教育を兼ねた新人「宇都宮」の2人組である。
これが、此の事件の始まりだった。