噂
冬休みが明けて、部活が始まった。私は憂鬱だったけど音楽室に向かった。
「なんか…今はまだ考えてないんだって。」
友達にそう言われて二週間も経つのに、気持ちの整理が付かない。何度も何度も後悔した。「言わなかったら、こんな想いしなくて済んだのかな」って。それと同時に「優衣はどうなったんだろう?」という疑問も生まれた。
もし、二人が両思いだったとしたら…そう考えるだけで足が重くなった。好きな人と同時に好きなものまで失ってしまうんだろうかと。
そんな事を考えながら歩いていると音楽室に着いた。いつもと変わらないはずなのに、その日は音楽室までの道のりがひどく短かったように感じた。
その日は、珍しく君は私より早くに部活に来ていたね。いつもみたいに「おはようございます」って私に言ってくれた。
でもその日はいつもの雑談が無かった。かわりに、きちんと告白の返事をくれたね。逃げないでちゃんと答えてくれた。それだけで十分嬉しかった。でも、どうしても聞きたかったの…
「優衣と付き合うの?」
優衣が告白したって事、私は知らないって思ってたんだよね。すごく慌ててたように見えたもん。でも、そのこともちゃんと話してくれた。
「今はそういう事、考えてないから…」
それだけで十分、分かった。ほっとして、涙がでてきた。その時は困らせちゃったかな?ごめんね。
噂っていうのは怖いもので、誰にも言ってないのに何故か部活中に広まっていた。
「Tubaの先輩が〜今井に告ったんだって〜!」
そんな言葉を今までで何回聞いたことか。今はもう飽きたのか、言わなくなったけど…。もちろん、それは優衣にも同じことが言えた。ある日彼女が私に相談してきた。
「後輩がさぁ、何かしんないんだけどアレのこと知ってて、いっつもウチに向かってそのこと言ってくるんだよね。マヂむかつくんだけど!」
そんなことを言った彼女に、私は何故か打ち明けていた。
「…実はさぁ…私も告ったんだ。今井に…」
優衣は驚いてたみたいだけど、「どうだった?」って明るく聞いてきた。きっと無理して笑ってくれてたんだよね。ごめん…。「無理だった」って私が言うと「じゃぁ、振られた者どうしって訳か」って、特に責めることせずに私を許してくれたね。
それからも、後輩から同じような事を何度も言われたけど、優衣がいると思うと、今までみたいに楽しく部活をすることができた。
今回もつつみ隠さず実話です。この後は、番外編ということで「今日の出来事」を書こうと思います。今日、学校で「学芸発表会」が行われ、部活も演奏で参加したことです。




