好きになったのは…
「こんにちは〜」
私の部活はこの言葉から始まる。ほとんど誰もいない音楽室に入って、すぐに楽器を出して、所定の位置に座る。そのときの私は、まだ二年生。先輩が引退して間もない頃。
不安だらけだったけど、君がいるから毎日、楽しく部活に通っていられた。それに、「音楽を生きる道にする」って、その頃にはもう決めてたからね。大好きな人の側で大好きなことができる…こんなに幸せな時間って他になかったよ。
私が一通り基礎練習を終えた頃、君はいつもニコニコして音楽室に入って来てたね。(それは今でもそうか。)そして、私と同じように、男の子にしては随分と高い声で
「こんにちは〜」
って言って私の隣に座って、楽器の用意をし始めるんだよね。確か…この頃はまだ、TUbaを置くためのスタンドを使ってたな。君は今も使っているけどね。一通り用意し終わったら、私に雑談をしてくる。それは学校に来る途中に変なお婆ちゃんに会って、自分の家がどこだか分からないから…と言われ、家庭内の事の愚痴をさんざん聞かされた事とか。担任の先生が実はロリコンだとか、「それは…ないだろ?」というようなフィクションがかった事が多かったね。
でも、そんなことで、君の事が好きになった訳じゃない。決定的な事があった。きっと、君にとってはほんの些細な事だったんだろう。
私は、体育で失敗したことの責任を全て押し付けられて、その友達に愚痴を言われ、友達がいなくなった時期があった。
そんな時、救いの手を差し伸べてくれたのが君だったんだ。
いつもの雑談をしてる最中に、君は生返事ばかりする私に気付いたのか
「青木さん、何かあった?」
って聞いてくれたね。すごい驚いたけど、すごく嬉しかった。ちゃんと私の言葉を聞いてくれる人が側にいるんだって分かって。そして、そんな優しい君が好きになったんだ。
11月の始め。先輩が引退して間もない頃です。前作を読んで下さった方は分かると思いますが、彼の名前は今井君(仮)です。背は私と同じ160ちょっとでした。(この時は)ルックスは至って普通…ちょっと幼い感じの子です。




