プロローグ
私が君を好きになったのは、ただ、かっこいいとか、一緒にいると楽しいとか、そうゆう事が理由じゃない。ただ、いつも『会いたい』って思ってたのは本当なの。
二月の冷たい空気が音楽室の窓を曇らせてる。空はどんより曇っているというよりもあの時、私にとっては雲が銀色に輝いているように見えたんだ。
そう―――それは一年前、バレンタインの日。吹奏楽部の私は、同じTubaパートでひとつ下の君に恋をして、三ヶ月ぐらい経った頃だったね。
毎年行われている「バレンタイン・コンサート」。私にとってこの日がどんなに緊張するバレンタインだったことか。君はきっと今でも分かってはいないよね?ただ、いつものように私に
「青木さん。ここ、まだ分かんない。」
って楽譜を出して、指番号書いてって言ってたの、私、覚えてる。
ねぇ、今井君。私、君のこと、まだ好きなの。もうすぐ、バレンタインになるのにね。もう、あきらめてしまいたいって何度も思ったのにね。ずっと、あきらめきれなかった。ずっと好きなままだった。
あれから、一年が経って、もうすぐ私は引退しなきゃいけないんだ。その前に、もう一度「好き」って伝えたい。
あと、三週間。―――君は私のこと、どう思ってるの?
この話は名前以外は全て実際の出来事です。そして、引退するのは11月の始め(来月)、私にもこの物語がこの先、どうなってゆくのか分かりません。でも、良い終わりであってほしいと祈るばかりです。
2006年10月26日―――著Ascentium




