第8話:ゴーレムづくり
「さて、ゴーレムの作り方はわかったかな?誰かに説明するのは久々だったからねー。絵も苦手でさ、ごめんね?」
「いや、すごくわかりやすかったよ。それで、一つ試してみたいことができたんだが......」
「試したいこと?」
「俺の才能の一つ、ハードウッドは素材の性能強化ってことだったが樹液の量を強化できないかと思ってな。ゴーレムづくりでは樹脂を結構使うみたいだから」
「なるほど!それ面白い!うまくいったらかなり樹脂を賄えるよ!もともと樹液とか樹脂って樹のキズをふさぐ役割だし、防御性能を高めるってところに関わるからいけそう!」
「よし、やってみるか......!”ハードウッド”!強化するのは”樹液の量”!」
ルークはまだ切り倒していない一本の樹に向かって叫ぶ。するとその樹は光に包まれ、やがて光が消える。ルークはその樹に近づきそっと触れる。
「お、おお!これすごいぞ!樹の中身がまるまる樹液に置き換わってるみたいだ!」
ルークは能力”ウッドセンス”で木の状態を確認する。
「ほんとだ、これ全部取り出せたら今後がだいぶ楽だね!ルークは樽とか作れる?」
「頭の中に作り方はあるな。たぶん問題ないだろう。あとは木の幹に蛇口をつけたいな。樹液がどのくらい出てくるかわからないからな」
「蛇口、いいね!間に合わせなら木材の中身をくりぬいて途中に栓を挿せばそれでいいと思うよ!樹液は粘度が高いからね」
「それなら簡単につくれそうだな。それだけ作ってからゴーレムづくりにとりかかるとするか」
「そうだね、今回使う樹脂の量はそんなにいらないし必要な分だけ取り出せればいいと思う!あたしは予定通り木を伐ってそれから食材の確保するね。ウーギーちゃんとピールナちゃん連れてっていい?」
「ああ、そいつらも動いてたほうがいいだろうしな。ゴーレムの作り方はもう頭に入ったから一人でも大丈夫だ」
ウーギーとピールナも嬉しそうだ。
ルークは小刀を使って簡易蛇口を作り、加護の力で蛇口としての機能を与える。それから樹に穴をあけて差し込む。蛇口の栓を開けると樹液がゆっくりと流れだす。小さい桶に溜めてから栓を挿す。樹液はピタッと出なくなる。
「よし、問題なく使えるな。あとはゴーレムづくりだ」
セルドのほうを向くと丸太の山がいくつも出来上がっていた。最初はこの辺の樹をすべて切り倒すのではと思う勢いだったが、十本も切り倒したあたりで作業をやめ、使いやすいように加工してくれている。
森の暮らしはセルドのほうが長いのだろう。なし崩しに同居することになったがなんやかんやで頼りになる存在だ。心の中で感謝しながらゴーレムづくりを始める。
最初に切り倒した木をすべて角材にし、色々な大きさのものを用意する。脚部、胴体、腕部、頭部。取り出した樹液を樹脂として木材同士を接着させ、樹皮は関節代わりに、短めの角材で指のようなものも作っておく。それらをすべて組み合わせ、仰向けになったような人型に組み上げる。理論上は自重にも耐えられる設計のはずだ。
あとは加護の力を、というところでいつの間にか狩りに行っていたらしいセルドが戻ってくる。......シカを担いで。ついでにウーギーはウサギの束を背負い、ピールナは果実がたくさん入った籠をもって飛んでいる。
「おー、だいぶ形になったね!うんうん、これなら問題なく動きそう!」
セルドはゴーレムを触りながら確認する。......シカは下ろしていいんじゃないか?
「じゃあ加護の力を使うが、どう機能を与えればいいんだ?ゴーレムはゴーレムで機能とか役割になるのか?」
「あー、考えたことないけど......。万能お手伝い人形とかの役割でいいんじゃない?実際そういう目的だし、下手に自我を持っても困るし」
「自我を持たせると困る?なんでだ?便利じゃないのか?」
「人型に変に自我を持たせると製作者の意図しない挙動をする、というのがエルフ族の中での共通認識だからね。まあウーギーちゃんやピールナちゃんもある種のゴーレムだけど、この子たちは人型じゃないし大丈夫!」
「まあセルドがそういうなら従うよ。よし、お前は万能お手伝いゴーレムだ!」
加護の力を発動させると、ゴーレムは目に赤い光を灯しその身体を起こした。ルークやセルドよりやや大柄で身長は2mくらいだ。自分の身体を確認するように見回したり動かしたりしている。一通り終わったゴーレムはじっとルークを見つめる。
「お、ルークからの命令待ちだね!今回はルークの力をもとにしているからルークが持ってる技術は真似できると思うよ!もちろん加護の力は無理だけどね!」
「その技術って、俺の才能込みでってこと?このゴーレムに新たにゴーレムを組み上げさせられるのか?」
「うん、そういう使い方もよくあるよ!本人が面倒なことをやってもらうのが一般的な使い方かなー。ちなみに命令は一度に一つしか受け付けないから、都度命令するのがいいよ!」
「よし、ゴーレム!そこにある角材でお前と同じようなゴーレムをもう一体作り出してくれ!」
ゴーレムはルークを数秒見つめると、ゆっくりと頷き作業に移る。その動きは先ほどルークがゴーレムを作っているときの動きを真似ているようだ。指や関節、頭部の目もきちんと機能しているようだ。
「じゃああたしたちはこのお肉の血抜きしよ?今回はシカも捕れたしさ!ウーギーちゃんが見つけて追いかけて挟み撃ちで大活躍だったよねー!」
セルドがウーギーの頭をなでる。ウーギーは嬉しそうに尻尾を振る。
「それからピールナちゃんもたわわに果物がなってる木をたくさん見つけてくれたんだよね!これだけ採ってもまだまだ採れるよ!」
今度はピールナの頭をなでる。ピールナは自慢げに胸を張っている。
「ねぇルーク。食べ物や木材はどうにかなりそうだし、ルークが作ったもので交易してみない?」
「交易、か......」
ルークは呟いた。その表情はどこか浮かないものだった。




