第5話:森の探索
翌朝、ルークが目を覚ますとセルドの姿がない。まだ辺りが薄暗い中どこへ行ったのだろうか。
外へ出てみると昨日より更に空気が澄んでいるように感じる。植物が元気になってきているということだろうか。
「あ、おはようルーク!」
木刀を片手にあいさつをするセルド。軽く汗を光らせている彼女は素振りをしていたらしい。
引き締まった腹筋がチラ見えしてルークはなんとなく目線をそらす。
「おはようセルド。こんな時間から運動してるのか」
「うん、大体この時間に起きて運動してるよ!昨日より空気が澄んでて心地いいね」
改めて目にするセルドの筋肉は魅せるためというよりは実用的に鍛えているといった感じだ、とルークは思う。そして自分の観察癖に嫌気がさす。
「とりあえずメシにしようか、森の奥の探索しないといけないもんな」
「うん!案内は任せてね」
二人は昨日の残りのウサギ肉炒めでお腹を満たすと木斧や木刀、木製ナイフを各々装備し準備を整える。
「帰りには今日のご飯を調達したいね。あたしたちには蓄えがないから、その辺もどうにかしないとね」
「そうだな。木材も補充しないといけないし、家も建てたい。人手が足りないなぁ」
そう、いくら加護があってもルークとセルドが効率的に仕事ができても、人手はカバーしきれないのだ。
「うーん、それに関してはどうにかできるかも!とりあえず探索行っちゃお?」
そういうとセルドは歩き始める。小鳥のピールナと犬のウーギーもついてくる。それぞれ見張りをしてくれているようだ。
「やっぱりかわいいなぁ、いい子たちだし。なんとなくだけど、こういうのって作り手の性格とか現れてそうな気がするな」
「性格が?」
「うん。ルークがいい人間だからこの子たちも人懐っこいんだと思う。ルークが悪い人間なら凶暴な子が生まれる。そんな気がするなー」
ルークは照れ臭くなって下を向く。こんな風に言ってもらえるのはいつ以来だろうか。セルドのことはまだ全然知らないが、お世辞でほめるタイプには見えない。故に余計に照れてしまうのだ。
30分ほど歩みを進めると、セルドとウーギーが立ち止まる。辺りは朽ち果てた木しかなく、地面は不自然に黒ずみ、風は異様に生ぬるい。昔勉強した魔物の巣がある土地の特徴と一致する。
「ここだよ。淀んだ魔力が充満してる。こういう魔力の中にいると普通の動物が魔物になっちゃうんだ。まあウーギーちゃんとかは木だから大丈夫だけとね!」
などと話しているとウーギーが突如警戒態勢に入る。
「ワンッ!」
その時ーー
「グルルルッ!」
茂みから黒い影がうなり声をあげて2頭飛び出してきた。狼型の魔獣だ。目が赤く光り真っ黒の体毛に覆われている。
「ルーク、下がって!」
セルドは腰の木刀を正面に構える。
「大丈夫だ、俺も戦える!」
そういうとルークは木刀、ではなく木斧を手に取る。深呼吸をして上段に斧を構える。
狼魔獣が牙を剥いてとびかかってくる。その動きに合わせてセルドは横にルークは縦にそれぞれ武器を振るう。魔獣はその武器に沿って両断される。ピクリとも動かない狼魔獣が2体、地面に転がる。
ルークは大きく息を吐く。セルドに目をやるとルークと斧に交互に視線を向けながらそれ以外はフリーズしている。セルドは感情が昂るとフリーズする癖があるらしい。
「ルーク、強いんだねぇ......。きみの木刀とか斧の切れ味は理解してたつもりだけど、特に斧はあたしが昨日振った時より強い気がする......」
「たぶん、俺が木こりだから。木こりは斧に適性があるって聞いた気がする」
「なるほどねぇ。でも、嬉しくなさそうだね。自分が騎士じゃないから?騎士なら剣に適性があったのかな?」
ルークは何も言えなかった。図星だ。どこまで行っても騎士になれなかった自分がまとわりつくのだ。
「ねぇ、ルーク。あたしは嘘とかお世辞とか得意じゃないの。だから」
ルークの肩をぽん、と叩く
「その力、誇っていいと思うよ。加護も、木こりも、木工も、全部きみを助けてくれる。きみが自分を肯定できないなら、あたしが褒めてあげる!きみはすごい!」
「ははは、ありがとう。時間はかかるけど、頑張るよ」
きっとこの気持ちはまとわりつく。受け入れるには時間がかかるだろう。でも今は仲間がいて、加護がある。この森を復活させたい気持ちは嘘じゃない。
「ほら、この子たちも君が好きだって!」
ピールナとウーギーが身体をすりよせてくる。俺が生み出した仲間。木でできているのにどことなく柔らかさがあって温かい。
「もう大丈夫だ、行こうセルド」
「うん、核の部分がこの先にあるはずだから」
二人は瘴気が渦巻く森を進む。荒れた地面と枯れ果てた木々に囲まれた先に何があるのか。
彼らを待ち受けているのは何か。彼らの探索はまだ続くーー
次回の投稿は1/17(土)の予定です。




