第18話:お披露目の時
「それから、これは”信頼”の為にディルドレさんに見せたいものがあるんですが」
そう言って木彫りの小鳥と犬を持ってくる。加護の力を見せるために。
そう、これは信頼なのだ。商売には信頼が必要なのだ。というのは本音であり建前でもある。
街に来る道中、4人での会話を思い出す。
ーーー
「ねえルークさん、今回ピールナちゃんたちをお披露目するのは加護の力を多くの人の目に晒すことになるけど大丈夫なの?」
「うん、まあディルドレさんなら受け入れると思うんだけどさ。別の狙いもあるんだよね」
「別の狙い?」
「今後荷車を始めとしていろいろとゴーレム化するとゴーレムを知らない人が驚くだろ?自動で動く荷車だもんな。だから先に木彫りの動物が動くという事実をお披露目しておくことで荷車くらい自動で動くかもなって周りに思わせておくんだ」
「木彫りの動物だって動くし、荷車くらい動くよねって思わせるってこと?」
「悪くないんじゃないか?それによってピールナやウーギーに簡単なお使いをさせることができればこちらも楽だしな。手紙を届けるとか」
「そういうこと。だからあえて人目に付くけど多すぎないところでお披露目できればなーって」
ーーー
現状狙い通りの環境ではある。専用倉庫にいるため一般人の目にはつかないがこの店の店員やディルドレの側近が何人かいる。仮に口外禁止と言われても完全に秘密を守れはしないだろう。
「ふむ、木彫りか。なかなかに精巧な作りだな。金持ちの家に飾りとして置いても恥ずかしくはないだろうな」
「ありがとうございます。それで、ディルドレさんとは末永いお付き合いをしたいので隠し事はしないでおこうと思いまして」
「なるほど、それが”信頼”か。まあ一理あるな。で、何を示してくれるんだ?」
「この木彫りが本物のように動くとしたら、どうですか?」
「ほう?それはそれは、非常に興味があるな!あのただの木の椅子が柔らかいことと同じ力なんだろう?あれは感動したな」
「その通りです。ではお披露目しますね」
そう言って木彫りに力を送る。そしてウーギーもピールナも動き出す。
「わんっ!」「ぴぃ!」
こちらに駆け寄って身体を摺り寄せてくる。
「ほう!ほうほう!なんとなんと!本当に動き出すのか!」
周囲の人間もざわざわとしている。わざわざ撫でに来る店員も何人かいるくらいだ。
「これが俺にだけ与えられた力です。今後はこの力を活かして荷運びすら半自動で、と考えています。それに手紙の受け渡しくらいならピールナ......、あの鳥の方に持たせられます」
「ああ、素晴らしいな。それなりに年を重ねてきたがこんな感動は生まれて初めてだ。このことは口外禁止にしておこう。なにせ我々は独占契約を結んだのだから」
本当に少し瞳がうるんでいる。
「そうですね、我々も不特定多数にバレるのは望ましくないので助かります」
「よし、決まりだな。む、もうこんな時間か。そろそろ騎士団のやつらが買い付けに来る時間だ」
「え、そうなんですか?」
「ああ、よかったらお前のことを紹介してやろうか?今後お互いにお得意様になるかもしれんぞ?」
「え、あ、でも......」
やはり騎士団という言葉を聞くとどこか複雑な感情に襲われる。
「ルーク、せっかくだから会ってみたら?気持ちは、わかるけどさ」
セルドが落ち着いたトーンで話しかけてくる。
「そうね、無理にとは言えないけどいい機会かもしれないわ」
ファムも優しく気持ちに寄り添ってくれる。
「なあに、最悪俺がどうにか場をつなぐからよ。ただの商売の話だと思って気楽にいこうぜ」
フィルドも肩をたたいて励ましてくれる。
「ああ、みんなありがとう。ピールナとウーギーはおとなしくしててくれな?」
それぞれが素直におとなしくくつろいでいる。俺は優しく頭をなでる。
「ふむ、行こうか。」
専用倉庫を離れ、店頭に戻る一行。しばらくすると鎧を着た数名が店内に入ってくる。
リーダー格らしい男と化粧っ気が強い細身の女性、おどおどした大柄な男性の3人だった。
「やあ、ディルドレ氏。今日は面白いものはあるかな?」
「ふむ、面白いというならこの松明なんかいかがですか?」
「松明?松明に面白いも何もあるのか?」
「ではご覧に入れましょう」
と言ってディルドレは火をつけた松明を水に入れ、取り出して自動で再点火する様子を見せる。
「え!やば!ウケるんですけど!」
女性騎士が声を上げる。
「す、すごいですね」
おどおどした騎士も小声で同意する。
「確かに面白い。面白いうえに利便性が高い。こんなものどこで見つけてきた?」
「紹介しましょう。このルークという青年と最近取引を始めたんですがね。彼の作る木工品はとにかく面白いんですよ」
ディルドレはルークを紹介する。
「ほう、君が作ったのか。僕はパライド。買い付けの担当をしている」
「初めまして、パライドさん。カーウェン・ランドルークと言います。そのご高名は伺っております」
「はは、嬉しいね。といっても前線を引いた今は兵站の担当だからかしこまらなくてもいいよ」
「ルークっちね!ウチはキャラン!ヨロ~」
軽いノリで挨拶をしてくる女性騎士。だがその動きには隙がない。
「お、オイラはギガノ......です。よろしく......です」
自信なさげに挨拶する若い男性。しかし重そうなハルバードを二振り担いでいる。
「この店には確かな品質のものが集まるからひいきにしているが、また面白そうなものが増えるんだね?期待しているよ」
などと和やかに話していると
「ねえ隊長?この子ぶちのめしたい!いい?」
キャランの突然の発言に場が凍り付いた。




