第17話:再び街へ行くよ
翌朝、朝食を済ませた4人は荷車に荷物を積む。ナイフとランプ、空の樽と松明くらいだが。樹脂が詰まった樽は勝手についてきてくれるはず。あとはありったけの薪を積んだ。
「ねぇルーク、街から戻ってきたら前に言ってた専用ゴーレム作ってみない?」
「ああ、セルドはその設計図作ってたよな」
「うん!本来なら木を伐ったり畑耕したりもゴーレムに任せるんだけど、その辺は専門家がいるからね。今回提案するのは荷車型!この荷車をゴーレム化して自動で目的地に運んでくれたら便利じゃない?」
「そりゃ便利だが、実現できるのか?というかゴーレムなのか?それは」
「まあルークの場合樽ですら自動で動くせいでややこしいけど、役割外の時でも意志を持っているのがゴーレムって感じかなぁ?例えば樽は中身が入ってないと全く動かないでしょ?でもウーギーちゃんピールナちゃんとか、汎用型1号2号は呼んだらこっちに来てくれる。今回の荷車型も呼んだら来てくれると思う!」
「なるほど。なんとなく理解した。じゃあ帰ってきたら作ってみるか」
「うん!さて、準備できたー?」
「おう、ばっちりだ!」
「さ、いきましょう!ウーギーちゃん、ピールナちゃんもね!」
「わんっ!」「ぴぃ!」
嬉しそうだ。今回連れて行くのは正直実験的ではある。このような存在が受け入れられるかどうか。まあ最悪セルドに魔法でごまかしてもらうということになっているから大丈夫だろう。
4人は街へ向かって移動する。道中は枯れ果てた森が続くが前に見た黒い樹からは離れているので魔物などはいない。そうでなければ初日に死んでいたかもしれない。
「ねぇルークさん、罠って作れるかしら?トラバサミとか箱罠みたいなの」
「作れると思うが......フィルドのスケッチには描いてあるのか?」
「ああ、あるぞ。でもルークって初見の物でも作り方はわかるんだろ?」
「設計図とかスケッチがあると効率が良くなるんだよ。一度作ればその後は最高効率で作れるんだけど。スケッチとかはない時とある時を比べると倍くらい速さが違うんだ。手の動きが変わるというか。だからスケッチが助かるんだよな」
「そうか、ならよかった!そう言ってもらえると嬉しいもんだな」
「いや、ほんと助かるよ。俺も自分の才能というものに理解が追い付いていないからな」
「そうさなぁ、教えてもらえるのは才能の方向と才能の名前だけだもんな」
「使ってみないとわからないというのは確かにあるわね。種類が多すぎて詳しく分類するのが面倒なだけって話も聞いたけど」
ファムが苦笑いしながら言う。
ピールナやウーギーもあの泉の周辺から遠くに移動することがなかったからか、心なしか楽しそうだ。
今回も問題なく森の入り口にたどり着いた一行。ピールナとウーギーから加護の力を一旦抜き取り、ただの置物として荷車に積みなおす。
以前商品を並べた市場を通りすぎ、ビーショップへ直接向かう。
「こんにちはー!誰かいますかー!」
セルドが大きな声で叫ぶ。商人ディルドレが奥から顔をのぞかせる。
「なんだ、お前らか。何か用かね?」
「どうもディルドレの旦那。今日は鶏を飼うために必要なものを買いに来たんですよ。ワラとか」
「ついでに何点か卸せるものがあればと思いまして。少し見てもらえますか?」
「ふむ、いいだろう。ワラは用意させておく。で、卸したいモノとは?」
「まずこちらは以前にも持ってきたランプです。あんまり大量に卸すのもよくないでしょうから3つだけにしました。こっちの包丁とまな板は料理人さん達に差し上げてください。」
「いいのか?たしかに以前来た時に置いてった包丁はうちの料理人たちに大好評ではあるが」
「はい、もっと需要があれば改めて卸しますから。で、ここから新商品なんですが......ちょっと人目が付きにくいところってありますか?」
「なるほど、いいだろう。こっちに空き倉庫がある。お前たちの商品専用の倉庫をな」
「えっ?俺たち専用倉庫?なんでそんなものを......」
「お前たちの商品は特殊だからな。普通のものと混ざるとよろしくない」
「それはなんというか、申し訳ないですね」
「気にするな、こちらでやりたくてやってるだけだ。それだけ期待しているということでもある」
「じゃあご期待に応えないとですね。と言ってもまずは普通の薪です。ただ俺の才能のおかげで時期を選ばずいつでも作り出せるんで持って来ました」
「薪は常に需要があるからあって困ることはないな。場合によっては大量発注もあるかもな」
「で、旦那。こっちは松明だ。お試しでルークに作ってもらったものだから効果のほどがわかっていないんだが、面白そうじゃないか?」
「松明か。こっちもいくらでも需要はあるが、不思議な効果があるのか?」
「うーん、考えられるとしたらものすごく燃費がいいとか?あるいは水につけても消えないとか」
セルドがつぶやくとディルドレの目の奥が光る。
「試してみよう!一つは火をつけたまま放置するだけだ。普通は20分程度、長くて1時間も保てばいい方だが」
と言って火をつけ、台に括り付けている。少なくとも問題なく火が付くようだ。
「で、もう一つは......。おい!桶に水を汲んで来い!」
店内の店員に指示をして桶に水を持ってこさせる。火をつけたもう一本の松明を水につける。水につければ当然火が消えるが、水から取り出した瞬間勝手に再点火される。
その場にいた全員が感嘆の声を上げる。たぶん一人だったらここまで感動していないかもしれないなとルークは思う。やはり仲間がいるというのは大きい。
「ふむ、これは素晴らしいな。冒険者や騎士団にいくらでも売りつけられる」
「騎士団......。騎士団もここに買いに来るんですか?」
ルークは騎士という言葉につい反応してしまう。
「ありがたいことにな。お前たちが持ってくる商品なら喜んで買っていくだろう」
「そうですか......」
ルークはどこか複雑な気持ちになった。騎士になりたかった自分と、騎士団に商品を買ってもらう自分。
嬉しいような、でも騎士になれなかった気持ちはまだまだぬぐい切れていない。
「それでディルドレさん、まだ見せたいものがあります。まずはこちらの樽です」
ルークの気持ちをなんとなく察してかファムが話を進めてくれる。先に空樽を見せる。
「樽か。作りはしっかりしているがこれはどんな機能が?」
「これは中身が入っているときは目的の場所まで自動で移動してくれるんですよ!」
外からセルドが樽と一緒に歩いてくる。樽はセルドの後ろをゴロゴロと転がってくる。もちろん誰も押していない。
「なんと!素晴らしいな!うまくやれれば荷車の積載量を増やせるではないか!ルークよ、これは街に来るたびに1個は必ず作ってきてほしい!」
今までで一番の熱量を見せるディルドレに驚く4人。運搬に苦労することが多かったのだろうかと思うなどする。
「それから、これは”信頼”の為にディルドレさんに見せたいものがあるんですが」
そう言って木彫りの小鳥と犬を持ってくる。




