第15話:実験をしてみよう
「さて、水やりも終わったし収穫までには時間がかかる。これから何をする?」
フィルドが尋ねる。
「そうだな、ちょっと実験してみたいことがあるんだ。みんな協力してくれるか?」
「実験?何々?何をするの?」
セルドが興味津々で尋ねる。フィルドとファムも身を乗り出してくる。
「この加護の力の限界を知りたいというか、現状どこまでやれるのかなって思ってさ」
「なるほどな。加護は無制限に使えるわけじゃないってことか?」
「少なくとも、俺自身の手で100パーセント加工していないものは不安定になるみたいだ。緑色の目のゴーレムは赤い目のゴーレムに組み立てを任せたから、最初の動きがぎこちなかった。俺はそう思ってる。この力をくれた精霊も”俺自身が加工したものに”って言ってたし」
「あたしもそう思う。まあ魔力で補助できる範囲でよかったけど」
「とりあえず話を続けるぞ。まず加護の能力自体は俺自身が加工したものに”役割”や”機能”を与えること。じゃあその役割ってどこまでいけるんだろうなってところを確かめたい。あと対象についても」
「ほう?それで、具体的には何をするつもりだ?」
「1つ、家畜を生み出せるのか?2つ、形状は影響するのか?3つ、役割が失われることはあるのか?この3つを主に確かめていきたいと思う」
「面白そうね!家畜というのは?どうするの?」
ファムが興味津々だ。
「今回はニワトリをオスとメスで一羽ずつ作り出してみる。本来のおんどりは朝に鳴くし、めんどりは無精卵を産むからな。あとはオスメスをそろえたら生殖して子供を産むのかというのも気になる」
「なーるほど、マジで面白いな。もし卵産まなくても別に問題はないしな」
「そうだね、少なくとも朝に鳴いてくれるとは思う!ルーク、形状っていうのは?」
「今まで作ったものは間違いなくそれがそれであるという形をしていた。つまり斧は斧だしバケツはバケツの形状だ。箱にしても収納箱としての形はしてる。でも焚き火は本来一本では成り立たないけど、加護の力は一本でも使えた。じゃあ斧としてはいまいちな形状ならどうなるのかとか、違う役割を持たせられるのかを試したい」
「違う役割?バケツにじょうろの役割を持たせるみたいな感じか?」
「そうそう、クワに斧の役割を持たせられるかとかだな。これもできなくても別に問題はないが、実験してみても損はないと思う」
「楽しそうね!それでルークさん、最後の”役割が失われる”って?」
「うん、フィルドのクワやバケツを見て思ったんだけどさ。バケツは中にものを入れて運ぶものだから、ひっくり返してもこぼれなかった。クワはフィルドの才能に耐えて壊れることなく耕すことができた。これは”役割”による補正的なものがあるのかなって。で、試したいことは液体が入っているバケツに穴をあけたらどうなるのかってこと」
「それも面白そう!普通に壊れるのか、壊れても維持されるのか......あるいは壊れないかも?」
「そう、壊れないというのもあり得そうなんだよ。リーキアに聞けば教えてくれるかもだけど、こういうのは自分で試してこそでしょ」
「ああ、そのとおりだな。それで俺らは何を手伝えばいいんだ?」
「フィルドはもう少しクワを振るってみてくれないか?体力が持つ限り全力でだと助かる」
「おう、任せとけ!」
「ファムはニワトリ小屋というか、ニワトリが住みやすい環境を作ってもらえると嬉しいな。必要あるかはわからんけど今後のために会っても困らないし」
「ええ、昔にやったことあるからいい感じに整えておくわね!」
「セルドはバケツの破壊を頼む。手段は問わないから。できれば中に水が入っている方がいいな」
「あは、あたしの筋肉にすべてをかけてやってみるよ!」
「よし、みんな頼んだ!俺はニワトリを作る......前に朝ごはんがまだだったな」
「そういえばそうね、すぐ準備するわ!」
ファムを中心にみんなで協力し、朝ごはんを済ませた4人。各々が与えられた作業に取り掛かる。
フィルドはクワをもって未整地の土地をガンガン耕していく。あえて農業には不向きな石だらけの土地を耕してもらう。
セルドは泉のそばでバケツを前に念入りに準備運動をしている。かけらも残らないのでは?という不安もあるがそれはそれで面白いだろう。
ファムにはゴーレム2体とともに、家のそばにニワトリ小屋を作ってもらう。正直一番やることが多いがゴーレムがいればたぶん大丈夫だろう。そもそも小屋がいるのかもわからないが、あって困ることもないし。
俺はニワトリのオスとメスの木彫りを作る、のだがオスとメスって何が違うんだ?とりあえずオスのほうをデカく作ろう。もうちょい実家の手伝いしとくんだったな。肉にするのばっかりやらせてもらってたしなぁ。と思いながらサクサクと木を削る。
鳥や犬やニワトリなんかの日常でよく見るものは頭の中に手順書のようなものが浮かんでその通りにやれば作れる。家具や武器も似たようなものだ。でもゴーレムとかの知らないものは作り方が浮かばない。だからセルドに設計図を作ってもらう。これは知識というより実際に見たものに依存するのかな。
太陽が真上を通り過ぎたころ、オスのほうが完成する。加護の力は後でいいや。
他のみんなはどうなったかな。様子を確認する。
「セルド、どんな感じだ?」
「あ、ルーク!お疲れさま!結果はこんなもんだよ!」
息を切らせながら汗にまみれながら、あとなんか普段以上にムキムキな気がするセルドに声をかかる。
セルドの指さす方に目をやると、粉々に破砕された空のバケツと無傷の水が入ったバケツがあった。
「空のバケツは簡単に壊れたよ!普通の木のバケツだった。でも水が入ったバケツは全く壊れなかったなー。魔法で空中に固定して木刀で叩いたり斧で切りつけたり、最後は得意の筋力強化魔法で思いっきり殴りつけたけど、全くへこみもしなかった。あたしの心のほうがへこんじゃうよ、なんてね」
セルドは大笑いする。たぶん全くへこんでなくて、面白いものを見つけた顔だ。
「よぉ......疲れたぜ......」
フィルドがフラフラでやってくる。今の今まで耕していたのか?手元には壊れたクワがある。
「本当にお疲れさまだな。壊れたのか?」
「いや、結局畑を耕している間は全く壊れなかった。で、試しに斧みたいに何度か樹にぶつけてみたら普通に壊れた」
「なるほど、2人ともありがとう。この二つだけで考えると、道具が”役割を果たしている間は”壊れないというのが考えられるな」
「あり得るね!空のバケツは”役割を果たしていない”から、クワは”役割外の使い方をした”から壊れた」
「ふーむ、納得できてしまうな。一度特注でクワを作ってもらったことあったが、1日でぶっ壊してしまったことあるしなぁ。そいつは鍛冶の才能持ちではなかったが、それでもいい腕だったんだがな」
「才能持ちには作ってもらえなかったの?」
「そうそうお目にかかれるもんじゃないし、いたとしても金額もかなり高いからな。そういうやつは大体城下町で王国お抱えの仕事してるもんさ」
「なるほどねー、じゃあルークの作る道具って意外と需要あったりして?」
「意外となんてもんじゃないぞ。精霊の加護で作り上げた道具なんていくらでも欲しがるやつがいる。あのディルドレっておっさんが欲をかかない人間だったからよかったものの」
「そうか......、まあ気を付けるよ。ディルドレとだけ取引すれば問題はないだろう?」
「そうだな、恐らくは。さて、ニワトリ小屋の方を手伝いに行こうかね」
「そうだねー、ルークはニワトリづくりの続き?」
「ああ、今日中には完成すると思う」
「楽しみー!もし卵産んだら面白いよねー!」
ルークは先ほどと同じようにメスのニワトリを作りあげる。完成した頃に3人がこちらにやってくる。
「ルーク、お疲れ様!ちょっといい?」
「ん?どうしたんだ?」
「ルークさん、明日街に行ってもいいかしら?大まかな形は完成したんだけど地面に敷く用のワラが欲しいなって思って」
「なるほど、いいんじゃないかな。在庫があるかはわからないけど」
「ルークたちが街に来た時はあったぞ。なくなっていなければいけるんじゃないか?」
「じゃあ、明日行ってみるか。包丁とか作ったし、ちょうどいいかも」
「決定!じゃあ明日は街に行こう!ニワトリちゃんは残念だけど小屋が完成してからかな」
「そうしよう。ウーギーとピールナも本当は連れていきたいんだが、騒ぎになると困るなぁ」
「ねえ、実験ついでにもう一個知りたいんだけどさ」
「ん?なんだ?」
「加護の力って取り除けるの?言い方はあれだけどピールナちゃんって元は木彫りの置物でしょ?その状態に戻せるのかなって」
「あー、なるほど......。ピールナ、試してもいいか?」
ピールナは肯定するようにぴぃ!と鳴く。新たな実験が始まる。
いつもお読みいただきありがとうございます。
2月からは水曜日と土曜日の投稿は1話ずつになります。




