第13話:新たな共同生活
「さて、順番的には肥料樽からかな。バケツやスコップは前につくったけど改めて作ってもいいな。収穫籠はいくつあっても困らないよな」
「そうだね。あたしは仕上げを手伝うよ。それまでは特化型ゴーレムの設計図でも描こうかな」
「お、それは助かる。やることがいっぱいだな!」
だがルークは嬉しそうだ。自分の才能に価値を見出された経験が自己肯定感を少し上げてくれている。
「種まきができるのは明日かしらね。私は料理することにするわ。セルドちゃん、いいかしら?」
「ぜひ!あたしたちじゃ簡単な料理しかできないから助かる!」
「俺も肥料桶ができるまで何をしようか。そういえばルーク、家の中のでかい桶みたいなのはなんなんだ?人がすっぽり入れるくらいだが」
「ああ、個人用風呂桶、というか浴槽って感じかな。どこの街にも公衆浴場があってみんな入りに行くだろ?それを個人向けにしてみたんだ。時間があるなら水を汲んでおいてくれるか?」
「天才か?任せてくれよ!」
そう言ってバケツ片手に泉との往復を始めるフィルド。何往復かしたとき、フィルドがつまずいて転んでしまう。
「うわ!」
「うお、大丈夫か?」
ルークが慌てて駆け寄る。フィルドはやや恥ずかしそうに体を起こす。
「いやあ、転んじまったよ。また水汲み直し......は?」
フィルドはバケツを見て目を疑う。横倒しになったバケツからは一滴も水がこぼれていないのだ。
「なるほど......バケツはそうなるのか」
ルークは小声でつぶやく。と同時に、ファムが家から飛び出してくる。
「ねぇ!火を使ってないのに具材に火が通るのなんで!?あと包丁の切れ味が良すぎるんだけど!かぼちゃが何の抵抗もなく両断されたんだけど!?」
「あー、ね。そういうこともありますよね」
街を出る前に”ビーショップ”の料理人に包丁をもっと欲しいと言われたことを思い出す。
「「あってたまるか!」」
夫婦が声をそろえてツッコミを入れる。そりゃそうだ。そばで見ていたセルドが大笑いしながら近づいてくる。
「ねぇルーク、隠す意味もないんだから打ち明けちゃいなよ!二人なら受け入れてくれるって」
そういわれた俺は加護について話すことにした。別に隠したかったつもりはないんだが、来て初日からでは情報が多すぎると思ったのだ。
「~~~~というわけで、俺はこの森に来てから精霊と出会って、加護をもらって、セルドと出会って今に至るんだよ」
「「へぇー!」」
フィルドとファムは感心したように声を出す。目がすっごくキラキラしている。
「じゃあランプとか箱とかもそういう仕組みだったのね!」
「俺がクワを振っても壊れないのもそういうことなんだな!」
すんなりと受け入れてくれたようだ。まあこれでズルだ卑怯だと言われても返す言葉はないんだが。
「たぶんルークがどれほど手を加えたかで加護の効果が変わってくるっぽいんだよね。ゴーレム2号の起動が微妙だったのは組み立てを1号に任せたからかも?」
セルドが解説する。そうなの?俺知らないんだけど。とルークは思う。
「全部手作りなら完全に効果を発揮してくれるってことかしら。包丁の切るという役割が完全に発揮されているからかぼちゃがすんなり両断されたのね。まな板が切れないのは包丁を受け止める役割があるから?面白いわね!」
ファムがわくわくした目でルークを見ている。
「バケツは水を溜めて運んだりする役割だからこぼれないのか!便利すぎる!」
「でしょでしょ!ルークはすごいんだから!」
3人で大いに盛り上がっている。なんでこんなに盛り上がっているんだ、と思いつつとりあえず作業を再開するルーク。3人もひとしきり盛り上がった後それぞれの作業に戻った。
ちょうど肥料樽が完成しフィルドが水を運び終わった頃、ファムがご飯だと言ってみんなを呼ぶ。
焼いた肉とスープだけではない、サラダや煮物、焼き立てパンが食卓に並ぶ。ちなみにこの辺の食材は商人ディルドレとの契約料から購入したものだ。
「「「「いただきまーす!」」」」
4人で食卓を囲む。テーブルも椅子も食器もすべてルークの手作りだ。フィルドとファムも椅子に座ったときにその感触にまた感動していた。
「ん、うまい!やっぱりファムの手料理は最高だな!」
「本当においしい!ハーフリングは農業が盛んだからその辺の料理も発展してるって本当なんだねー」
「あら、嬉しい!そうなの、お肉も好きだけど野菜の料理は特に得意だから喜んでもらえるとこっちも作りがいがあるわ!」
ルークもそのおいしさに無言で感動する。どこか実家の料理を思いだす味だった。急に飛び出して両親は心配しているだろうか。騎士になれない自分をどう思っていたのだろう。
「ルークさん?大丈夫?」
ファムが心配そうに尋ねる。
「ああ、いや。実家を思い出す味というかおいしさで感動してただけだ」
ルークはあわててごまかす。実家のことは言う必要はない。
「そう?ならよかった!じゃあ私がご飯担当になるわね!」
「えー、助かる―!もちろんお手伝いはするからね!」
あっという間に完食した4人はそれぞれの作業に戻る。
「なあルーク、この樽本当に手作りか?よくできてるな。普通乾燥させたり火で整えたりするんだろ?」
「普通はな。俺の才能の一つに木が持つ要素の強化ってのがあるから、硬度を強化することで水分を飛ばした。しかも重ね掛けできるっぽくてしなやかさを強化したら堅いまま曲げることもできたんだ」
「乾燥させることで木が堅くなるのを逆に使ったのか、頭いいな!これなら数年かけて乾燥させる必要がないってことか」
「そういうこと!ついでにこの樽に加護を与えるから待っててくれ」
ルークは樽に力を注ぎ込む。肥料樽として役割を与えられたコイツはどんな驚きをもたらしてくれるのか。二人はわくわくしながら樽を見つめるのだった。
31日に2本投稿予定です。
2月からは1日1本投稿にします。




