第11話:新たな仲間
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「なるほど。お二人は結婚して農業をやろうと思ってこの街まできたけど土地が手に入らず困っていたと......」
商人ディルドレの好意で閉店後の”ビーショップ”に寄らせてもらい、ルークたちはテーブルを囲んで話を聞く。
「そうなんだよ。俺はフィルド・テラグレン。こっちは妻のファム。俺はもともと農家の生まれで知識と技術、才能まで農家向きなんだ。数年前に旅に出たらファムと出会った。ファムも農業が好きだってことで意気投合、結婚まであっという間だったんだが......」
「新規で農業を始めるにも家庭菜園程度の土地しか無く、これからどうするかを考えていたところお二人の話が出てきまして」
二人の話を聞きながらセルドと相談する。正直二人が来れば農業面は助かるだろう。しかし収穫量次第では今より苦しい生活になるかもしれない。
「なあセルド、どう思う?俺は受け入れるのもアリだと考えているんだが......」
「ルークがいいならいいんじゃない?あたしはあの二人なら諸々含めても採算採れると思うよ?」
「そうか。今建ててもらってる家も二人じゃもてあますくらいの大きさだし、とりあえず受け入れるか......」
結論は出た。あとはあの森が農業に向くかどうかだ。
「フィルドさん、ファムさん。我々としてはぜひあなたたちに力を貸してほしいと思います。ただ、あの森が本当に農業に向いているのか。そしてあなたたちがあの死んだ森で暮らしていけるのか。そこはお二人に実際に見てもらいたいと思います」
「本当ですか!?ぜひお手伝いさせてください!」
ファムが椅子から立ち上がる。それをフィルドがたしなめる。
「落ち着け、ファム。今日はもう遅い、森に行くなら明日だ。我々は先に帰って森に行く準備をしよう」
「そうね、そうしましょう。ではルークさん、セルドさん、また明日会いましょう!」
そういって二人は帰っていった。
「ははは、あわただしい二人だったな」
ディルドレが話しかけてくる。その手にはスープが入った皿を持っている。その皿をルークとセルドの前に置く。
「今日はここに泊まっていきなさい。食事も用意する」
「いいんですか?なんだか申し訳ないような......」
「遠慮はいらん、これは投資だ!君たちのような有望な人材に投資を惜しむほど私は愚かではないからな。それと、これは契約書だ。目を通して納得するならサインしてくれ」
そういって一枚の紙をルークたちに渡す。
その契約書は正直ルークたちに好条件だ。いや好条件すぎる内容だった。商売に疎いルークですら騙されているのではと感じてしまうほどに。
納期はない。金額もたぶん妥当だろう。お金じゃなく物資と交換してもくれるそうだ。種子や資材、情報なんかは優先的に提供してくれるそうだ。
「うーん、少なくとも魔法や透明なインクでごまかしている部分はないよ。そこに書いてある条件に偽りはないね」
セルドは横から伝えてくる。なんでわかるんだろう。今度詳しく聞いてみよう。
「当然だ。私には商売の才能がある。その才能が君たちの価値を輝きで見せてくれるんだが、こんなに輝いているのは生まれて初めてだ!どうかな?悪い話でないと思うが?」
少し考えてルークはサインをする。確かに条件がいいのもある。それ以上に自身の木工が認められている気がして、セルドとは違う形で自分を肯定してくれている気がしたから。だからサインした。
「ああ、ありがとう!決して悪いようにはしない。ああ、そうだ。もし今後君たちに依頼したいという声があったら街に来たタイミングで伝えさせてもらうがいいかね?もちろん納期は無いままだ。」
「はい、助かります。少なくとも週に一度は来るようにしますね。その時薪とか持ってきたら買い取ってもらえますか?」
「いいとも、薪は常に需要があるからな。むしろ助かるよ。冬はもちろん、夏の安い時期にまとめて買いたい層もいるからな。さあ、スープが冷める前に食べなさいこの後もまだまだ出すからな」
「わーい!いただきます!わ、おいしい!」
セルドがテンションをあげて来るもの来るものおいしそうに食べていく。そんな感じで夜を明かし、次の日の朝。
「おはようお二人さん!早速だが、案内してもらえるか?」
フィルドとファムは荷車に荷物を積んで持ってきたようだ。気が早くないだろうか?
「ごめんなさいね?フィルドったら気が早いところがあって」
ファムは苦笑いしている。
「さあ、ルークよ。昨日買い取った分の種子や肥料を用意しておいたぞ。この荷車もくれてやるから持っていきなさい。どのみちここに商品を卸すときに必要になるからな」
「何から何までありがとうございます!来週も同じものを持ってくれば大丈夫でしょうか?」
「そうだな、椅子や箱はいくらあっても売れるだろう。ランプは限定で売ったほうがいいかもしれんがな」
「昨日の木の包丁、もっと作ってくれんかね!?ありゃ素晴らしい!」
昨日の料理を作っていた料理人が横から声をかけてきた。
「わかりました!まとめて卸せるようにします!では、失礼します!」
4人は荷車を引いて死んだ森へ向かった。これからどのように生活が変わるのか期待を胸に歩みを進める。




