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第9話:交易をしよう


「ねぇルーク。当面の食べ物や木材はどうにかなりそうだし、ルークが作ったもので交易してみない?」


「交易、か......」

ルークは呟いた。その表情はどこか浮かないものだった。


「うん。交易して種とか買って、それを元に畑とか作れたら安定した生活送れるかなーって。......あんまり乗り気じゃない?」


「いや、畑を作るのは大賛成だ。だが、怖いんだ。情けないことにな。街がじゃなくて......」


「自分の木工品が否定されることが?」

ズバッと言い放つセルド、だがそれは事実だった。


「そうだ、街に行けば良くも悪くも自分の価値が決められる。もし俺が作ったものが”また”否定されたらと考えると......」

ルークは声を震わせる。情けない。セルドは俺に失望するだろうか。そんなことを考えていると、セルドはルークの両手をギュッと握る。


「あたしにルークの気持ちがわかるなんて言えないけどさ。言ったでしょ?きみが自分を肯定できないならあたしが全部褒めてあげるって!きみはすごいんだから!」

ウーギーとピールナもルークに身体をすり寄せてくる。


「......そうだな、俺は一人じゃない。いいかげん受け入れなきゃいけないよな!」


「うんうん、もしダメでも違うの作ったらいいんだからさ!とりあえずやってみよ?」


「ああ、やってみよう!そうと決まれば作れるものを片っ端から作るかー!」

やる気を起こしているとゴーレムが近寄ってくる。どうやら組み上げが終わったようだ。


「お、終わったのか。よし、お前も万能お手伝いゴーレムだ!」

二体目のゴーレムもゆっくりと起動した。しかし明らかに最初のゴーレムより動きがぎこちない。


「うん?なんかちゃんと動かないな......。何か問題があるのか?」


「おかしいなー、もしかしたら加護を与えられる条件があったりして?とりあえずあたしの魔力でサポートできるかな」

セルドが魔力を送り込むような動作をすると、一体目のゴーレムと同じように動きだす。その目は緑色に光る。


「よかった、とりあえず動いたね!消費魔力は普通のゴーレムよりだいぶ少なそうだから問題なさそう!」

つくづく頼もしい存在だ。加護の能力もそうだがセルドもだいぶすごくないか?リーキアが運命の出会いと呼んだのも納得だ。


 二人と一羽と一匹と新たに増えた二体は小屋に戻ることにした。血抜きした獲物の洗浄はセルドに任せ、ゴーレムたちには丸太を保管する場所をこしらえてもらう。ルークは明日街で交易するために売れそうなものを時間が許す限り作る。

食器、椅子、包丁、保管用の箱に火を使わないランプ。いくらで売れるとかは全く考えていない。商売のことは何もわからない。これに価値をつけるのは俺じゃないから。そんなことを考えながら寝食も忘れ夜中まで木工作業を続けた。



ーー翌朝ーー



 気が付くと眠っていたルーク、その身体はベッドの上で毛布も掛けられていた。セルドがかけてくれたのだろうか。顔を洗うために外に出てみる。明らかに空気が違う。泉の方に向かうとセルドが丁寧に髪を洗っていた。そのどこか色っぽい仕草にルークはドキッとしてしまう。


「あ、ルークおはよう!よく眠れた?見てよこの泉!昨日と明らかに泉質変わっててさ!これならここで血抜きしたお肉洗っても泉が汚れなさそう!」


「マジか、そんなに変わるもんなのか?」

と泉をのぞき込む。よくわからないが確かに昨日よりキレイな気がする。


「やっぱりルークが昨日頑張って木工作業してたからだよねー!ゴーレム二体に大量の日用品!おかげで森が蘇ってくれてるよ!」

セルドの言葉は含みがないのでルークの心にスッと入り込む。


「さ、ルーク。ご飯食べたら街に行こ?ルークってば昨日の朝以降ご飯食べてないんだから」


 そういわれた瞬間お腹が大きく鳴る。確かに昨日はなんだかんだ作業が楽しくて没頭してしまっていた。セルドは笑みを浮かべてスープが入った器を渡す。


「いきなりガッツリ食べたらお腹壊すからね、エルフ特性の薬草スープでも飲んで?」

器を口元に運ぶ。胃の中がじんわりと暖かくなる。セルドはその横で昨日狩ったシカと思われる大ぶりの肉をおいしそうに食べている。

朝食を済ませると昨日作った木工品を背負い籠に詰め込んで街に向かう準備をする。


「ウーギーとピールナは留守番を頼むな。ゴーレム1号は木を伐って丸太に加工。2号はその丸太を使って新しい小屋を作ってくれ。俺が設計図を見て作り方を理解しているから大丈夫だろう」

それぞれが動きで返事を返す。


「じゃあ、行ってくるよ」

そういってルークとセルドは街へ向かう。2時間くらいの道を歩く。セルドが森の様子を詳細に教えてくれるので退屈はしなかった。それとともにセルドの圧倒的な知識量に驚かされる。エルフがみんなそうなのか、セルドが特別なのかは聞かなかった。


「お、着いたね。あたしがエルフだとバレるとめんどくさそうだから魔法でごまかしておこうかな」

特に変わったように見えないが変わったのだろう。記憶を頼りに交易がおこなわれている市場へ向かう。


 もう昼に近いが運よく空いている場所を見つける。隣の商人にあいさつしながら売り物を並べる。

最初の方は冷ややかな反応だった。セルドが一生懸命呼び込みや接客をしてくれたが、

「いやあ、食器は間に合ってるし」

「木の包丁?そんなの何の役に立つんだ?」

「椅子なんて買っても持ち帰るのが大変だからねぇ......」

といった調子で通り過ぎられるくらいだった。売れたのは保管用の箱が2個とインテリアとしてのランプが1個だった。


「はぁ、やっぱり売れないか......」

「うーん、物は間違いなく最高品質なんだけどなぁ」


ーー転機が訪れたのは辺りが薄暗くなりそろそろ店をたたむかという頃だった。


































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